「トランプさえ退場すれば世界が正常に戻る」は幻想。国際社会に混乱を招いた犯人は誰なのか?

 

トランプの「アメリカの主軸を他に移そう」という本筋

表向きにはこれがストーリーの筋なのですが、実際には「ウクライナ問題に時間とエネルギーを割くよりは、もっと直接的な脅威となっている中国のプレゼンスの高まりに対応すべき」という意図が働き、ウクライナ問題ではロシアに大幅に譲歩し、終わらせる気がないなら戦争は続けさせ、後始末は欧州に押し付けて、アメリカの主軸を他に移そうというのが本筋かなと見ています。

その本筋とは、中国封じ込めのための【イラン、ベネズエラ、グリーンランド】です。

まず、イランについては、大使館占拠事件以降、アメリカ国内に渦巻くイランへの警戒心と、根強いイスラエル支援の立場があり、イスラエルをコマに使ってイランの現体制を弱体化させ、親米・親イスラエルの体制を構築することで、中東からアメリカを再度脱出させることを目論んでいるのではないかと見ています。

現体制が気にしているのはこの点で、実際にイラン国内で発生している反体制派デモの背後にアメリカのCIAとイスラエルのモサドの工作があるものと確信して、デモに対応しつつ、工作の証拠を掴もうと必死になっています。

何とか今、イランの現体制は持ちこたえていますが、そこに加担しているのが中国とロシアです。ハメネイ師が失脚せざるを得ない場合には、ロシアが身柄を保証することで話が通っているようですが、アメリカとイスラエルがそれを認めるかは今後の展開次第とのことです。

ただ、以前との大きな違いは、中国政府の仲介にとってイランとサウジアラビア王国をはじめとするアラブ諸国が和解しており(UAEとは別件でもめていますが)、イランへの攻撃を地域全体にとっての危機および地域全体に対しての挑戦と受け取る風潮があり、サウジアラビア王国もカタールも、ヨルダンも、アメリカがもしイランを攻撃するのであれば、基地の使用も領空の通過も認めない旨、明確にして、これ以上のエスカレーションに加担しないことを明言しています。

もちろん、その背後にはイスラエルの蛮行に対する抗議と、それを咎めないアメリカへの不満もありますが、トランプ政権としては、“イランを何とかしたい”という意図はあるものの、現時点でアラブを失うことは、イスラエルを危機に晒すことと、アメリカが展開する防衛網の破綻を意味することから、非常に慎重になっているものと考えます。

さらには、イランで高まる中国の影響力にも、アメリカは神経を尖らせています。すでに25年間にわたる経済面での戦略的パートナシップを締結しており、中国はイラン産原油を安価に手に入れることに成功しています。それは同時にホルムズ海峡のコントロールに影で中国が絡んでいることも想像できるため、地域におけるパワーバランスを崩される恐れがあります。

トランプ政権によるイランに対する圧力の増大は、軍事的にサポートするロシアと経済面で支えつつ、地政学上のcritical pointを押さえようとしている中国の思惑を阻止しようとする狙いがあるものと考えます。

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