ダボス会議で設立が合意された「平和評議会」をめぐる大きな懸念
イエメン情勢を巡るサウジアラビア王国とUAEの対峙という不確定要素がもたらす緊張と分裂を除けば、中東アラブ諸国はアメリカの対応に不満を抱き、かつイスラエルに対しては「これ以上の蛮行を行ない、かつアラブ諸国に直接的な被害をもたらすような事態があれば、イスラエルへの武力行使も辞さない」という態度で一致し、それがまた地域全体における恐ろしい緊張の高まりを生んでいます。
これは即時対応を取らなかったバイデン政権、ウクライナ問題に釘付けで初動が著しく遅れたか、実質的に皆無だった欧州各国、自国への飛び火を恐れたアラブ諸国などにも責めを負っていただかなくてはなりませんが、そこに激しく親イスラエルのトランプ政権が生まれ、“仲介”とは名ばかりのイスラエル寄りの姿勢は、ネタニエフ首相の行いを制御せずに野放しにしてしまう現状を生み出し、事態の収束を非常に難しくしています。
とはいえ、一応、停戦を成立させ、人質の解放と遺体の収容が完了して第1段階を終えるところまでこぎつけたことは高く評価されるべきだと考えますが、これからスタートする第2段階は、恐らく前に進めることは不可能ではないかと感じます。
その理由として挙げたいのが、ガザ地区の復興と地域の安定を担うはずの平和評議会(Board of Peace)の趣旨替えです。
当初はガザが対象地域でしたが、停戦合意の第2段階に進捗が見られないことと、今年に入ってアメリカがベネズエラへの奇襲攻撃を行ったり、グリーンランド問題をクローズアップしたりするようになって、この平和評議会がカバーする対象が一気に広がることになったことで、ガザ和平そのものへのフォーカスが一気に薄れるのではないかという恐れです。
一応、ダボス会議において設立が合意された際には同「評議会はパレスチナ自治区ガザ地区が機会、希望、そして活力に満ちた地域へ移行する局面において国際資源の動員と説明責任の確保を担い、非武装化、統治改革、大規模復興の次の重要段階の実施を導く枠組み」という説明がなされていますが、その議長を務めるトランプ大統領の権限が異常に強いことと(終身議長を務めることと、すべての決定に対しての拒否権を有することなど)、この設立メンバーに当事者たるイスラエルが含まれていることは大きな懸念を引き起こしています。
一応、“パレスチナ”も原加盟国に含まれていることから、ガザ問題を話し合うにはバランスが取れているという見方もできますが、対イスラエル戦争を行っているのは、“パレスチナ”ではなく、ハマスであることから、果たしてどこまで実効性ある決定と実施が確保できるかは疑問です。
そして、同評議会の設立に際し、トランプ大統領自身が「この枠組みをガザ和平以外の紛争の解決にも拡大する」と何度も言及していることが、多くの憶測を生んでいます。
またこの評議会の原加盟国のバランスも気になるところです。サウジアラビア王国やインドネシア、カタール、ヨルダン、トルコ、エジプト、UAE、アゼルバイジャン、モロッコ、パキスタン、パレスチナなどをはじめとするイスラム教国8カ国に加え、アルメニア、コソボ、アルゼンチンなど計25か国が参加していますが、ここにフランスや英国、ドイツなどのEU諸国は含まれず、ロシア、ウクライナ、中国、インドなども参加していません。
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