「平和評議会」への参加を見送った中ロ印や欧州の思惑
そのような中、評議会が取り扱う案件がガザ以外に広がる場合、この平和評議会が関与する正当性について重大な懸念が生まれる可能性が出てきます。
ダボスでの設立会合の場でトランプ大統領は「この評議会は国際機関として、国連とも協力し…」と発言していますが、国連側はそれを歓迎しておらず、またロシアや中国、欧州各国そしてアジアの多くの国々が、この平和評議会が世界中の紛争の帰結についての議論および決定を行うことに拒絶反応を示していることは、重大な懸念事項だと考えます。
ロシアのプーチン大統領も中国の習近平国家主席も、そしてインドのモディ首相も招待は受けていますが、どの国が参加し、何を議論の対象とするのか、そしてマネージメントはどうなるのか、という点を吟味して、自国の利益に沿うか否かを見極めるつもりかと考えます。
現時点でいろいろと聞くところによると、今回参加を見送った中ロ印については、これはトランプ劇場であり、かつアメリカとの良好な関係に関心があるか、またはアメリカの“次のターゲット”にされないための保険という認識が広がっているようです。
また参加を同じく見送った欧州は(とはいえ欧州委員会がどうするかは未定ですが)「グリーンランド問題やウクライナの命運が、ここで話し合われること」には難色を示し(というより反対)、その正当性を疑問視しているという意見がたくさん入ってきました。
中には「ここで何か決めても、実質的にウクライナの今後にコミットできる国は、アメリカくらいしかいないし、恐らくその負担が一方的に欧州(と日本、カナダなど)に押し付けられることになる」と非難する欧州の声がありますが、正直なところ、この見解に対しては、ちょっと個人的には引っかかります。
もし自分たちが決定および議論に加わっていない内容を一方的に押し付けられるのが嫌ならば、いろいろと思惑・思うところはあるでしょうが、評議会に原メンバーとして加わり、議論に参加した上で、コミットできるかどうかを表明すべきかと私は考えますが、皆さんはどうでしょうか?
この点については、今週、東京でお目にかかった欧州各国政府の大使館の皆さん曰く、「欧州各国は、欧州委員会も含め、国連こそがこのような多国間主義に基づく協議の場であり、総会や安全保障理事会が議論の場であるべき。それを蔑ろにするような組織や取り組みは支持できない。評議会がガザ問題に特化した組織であれば、もちろん、そこに国連のコミットメントは必要だと考えるが、欧州は支持し、積極的に参加する。しかし、そうはなっていないと感じているから、今は様子を見るべきだと考えている」ということでした。
そして表立っては認めないのですが、欧州各国が抱く共通の懸念が「アメリカと世界の関心がウクライナから離れるのではないか。そうなれば欧州にとって直接的な安全保障上の脅威であるロシアのプレッシャーが増大することになる」というものと、「グリーンランド問題は基本的には欧米間の問題であるはずのものを、多国間の枠組みで議論させてしまうと、意図しない方向に流れていくのではないか」という内容です。
実際にウクライナ問題については、トランプ大統領とゼレンスキー大統領がダボスで会談していますので、アメリカの関心がなくなったということではないでしょうが、一つ明らかなのは、トランプ大統領は「ロシアとウクライナの停戦がなかなか進捗しないのは、ウクライナが自国の置かれている不利な状況を理解せず、あれこれアメリカに要求を突き付けるからであり、それはまた背後にいる欧州が口だけ出してゼレンスキー大統領を混乱させるからだ」という考えを強めているとされ、「もしそうなら、もうアメリカは手を退くので、自分で解決するとよい」というように、ウクライナと距離を取る姿勢を見せていることです。
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