「トランプさえ退場すれば世界が正常に戻る」は幻想。国際社会に混乱を招いた犯人は誰なのか?

 

イスラエルとハマスの殺戮合戦を最悪の状態に発展させたバイデン

さらに、これはトランプ・ファクターかもしれませんが、エネルギー部門への投資やレアアースの共同開発という非軍事的な要素を強調しつつ、ロシアの関心を惹こうとするものの、ロシアが食いついてこないことと、なかなか“次の”米ロ首脳会談が成立しないこと、そして、トランプ的、またはアメリカ的な視点といえばそれまでですが、「せっかく解決策を見出してやろうと尽力しているのに、ウクライナは言うことを聞かないし、その背後でギャーギャー言っている欧州も、何もしないくせに邪魔ばかりする」という認識が広がり、トランプ大統領と政権のウクライナ離れが加速していることも事実です。

ウクライナを本当に見捨てるのか?それともエネルギーやレアアースの権益と言う米国民受けしやすそうなネタをウクライナに認めさせることで“成果”と捉え、何らかの形で“停戦”に持ち込むべく、ロシアに働きかけを行うのか?そのタイムリミットは、トランプ政権の終わりまでというように、刻一刻と近づいています。

ではイスラエルとハマスの殺戮合戦はどうでしょうか?

これもまた、バイデン政権時に起きた事件ですが、バイデン大統領のネタニエフ嫌いと相まって、従来通りの親イスラエルなのか、それとも徹底的に法の支配に基づいてイスラエルとハマスを罰するような動きにでるのかを決めきれない間に、事態が最悪の状態に発展してしまいました。

イスラエル軍による“自衛権の行使”という名の苛烈な対ハマス報復攻撃は、今ではジェノサイドと非難されるほどの悲劇をガザ市民とガザ市に与えてしまいました。

そしてバイデン政権時の中途半端な対応により、イスラエル国内の政治事情も相まって、イスラエル軍の行動がエスカレーション傾向を極め、“ハマスの壊滅”という実現不可能なゴールを抱えてガザへの徹底攻撃を行った以外に、(それまで凍結してきた)ヨルダン川西岸でのユダヤ人入植地の拡大を強行し、それがまた当該地域における対パレスチナ人への暴力の拡大を生み出し、今ではパレスチナの存続そのものを脅かす事態になっています。

そしてイスラエル軍は「この際、自国の安全保障を脅かす勢力を駆逐すべき」と考えたのか、レバノンのヒズボラへの攻撃を行い、その“ついでに”レバノンへの攻撃、混乱極まるシリアへの攻撃とゴラン高原の占拠(イスラエルのゴラン高原法に基づく“自治”)に踏み切っています。

さらには宿敵イランへの革命防衛隊の幹部の暗殺を行い、イランとの緊張を深め、高めました。まさに縦横無尽の行動と言えますが、その際、特別な同盟国アメリカの政権はバイデン政権で、口先の非難はするものの、結局はイスラエルを止めるための措置は何ら取らず、より事態を悪化させ、アラブ諸国との溝も深めたのではないかと見ています。

そこにトランプ大統領が登場し、半ば強引に和平プロセスを主導して停戦を実現させるべく、動いていますが、イスラエルの攻撃を完全に止めて、ガザ地区の復興プロセスに着手したり、中東全域で高まる緊張を緩和するまでには至っていません。

その背景には、とことん悪化している情勢もありますが、火に油を注ぐかのように、アメリカ軍の爆撃機(B2)と地中貫通弾(バンカーバスター)を用いて、宿敵イランの核濃縮施設を爆撃するという行動は、中東地域を反米・反イスラエルでまとめることになってしまい、昨年10月10日のイスラエルとハマスの停戦合意後の様々なステップにおいても、中東アラブ諸国の全面的な協力を引き出せてはいません。

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