欲しいのは「戦争を終結に導いた大統領」という肩書。トランプが世界中の紛争に“中立的な第三者”ではない立場で首を突っ込む理由

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世界各地の紛争に介入しその解決に尽力する姿勢をアピールする一方で、ベネズエラへの軍事侵攻やグリーンランド領有の意欲を見せるなど、国際社会に混乱をもたらしてもいるトランプ大統領。そこには一体どのような「行動原理」があるのでしょうか。今回のメルマガ『最後の調停官 島田久仁彦の「無敵の交渉・コミュニケーション術」』では元国連紛争調停官の島田久仁彦さんが、トランプ外交の思考と言動の背景を詳細に分析。併せてアメリカの軍事力行使が国際秩序に与える影響について考察しています。
※本記事のタイトル・見出しはMAG2NEWS編集部によるものです/メルマガ原題:国際情勢を支配する大国の地政学的思考と翻弄される世界

「トランプ外交」でタガが外れる中ロの動き。大国の地政学的思考と翻弄される世界

「トランプ大統領は一体何をしたいの?」

これは私の11歳と7歳の息子たちが、アメリカによるベネズエラへの攻撃とMaduro大統領夫妻拘束の一報が入ってきた際に叫んだ内容です。1月3日以降、トランプ大統領がニュースに映し出される度に彼らは同じ質問を投げかけています。

国際情勢に携わり、特に紛争絡みの案件に多く関連する私としては、息子たちの問いに答えを提供したいところなのですが、私自身も理解に苦しむ状況です。

アメリカのトランプ政権が現在、関与している紛争案件としては(仲介)、

  • ロシア・ウクライナ戦争
  • イスラエルとハマス
  • タイとカンボジア国境紛争
  • ルワンダとコンゴ民主共和国の国境紛争
  • スーダン内戦

が挙げられますが、昨年クリスマスに行ったナイジェリアのISに対する攻撃や、今年1月3日に強行したベネズエラへの攻撃については、自らが紛争当事者となる事態に陥っています。

ベネズエラへの攻撃については、電子攻撃機グラウラー(EA-18G)を投入したサイバー攻撃によってほぼ全土を停電させ、防空システムを無力化した上での特殊部隊の投入という、軍事的にはパーフェクトな作戦と評価されていますが、国際秩序および法による支配、そして国際法の遵守と言う諸々の国際政治の要素に沿って考えると、大きな危機を世界に対して提示したショッキングな事態を生み出していると言えます。

「一体何をしたいのか?何を目指しているのか?」

100%クリアな答えは用意できませんが、主だった要素があるとすれば次の3つに集約できるのではないかと考えます。

  • 中ロとの勢力圏争いの激化
  • エネルギー・レアアースといった資源を力の源泉とする戦略

そして

  • 国際協調に基づく戦後国際秩序の否定と力による外交・安全保障に根差した新国際秩序の構築

がその3つに当たりますが、これらに共通しているのが【地政学的思考の強調】です。

仲介している案件については、トランプ大統領の場合は、自身のレガシーを追求するような思考が強いように思われますが、かといって仲介・調停に必要とされる【Neutral Third Party(中立な第三者)】という特徴は見られず、ガザ紛争への関与・仲介については、明らかにイスラエル寄りで、かつ当事者たるハマスを激しく非難し、話も聞かないという徹底的なPro-Israelの立場を取っていますし、ロシア・ウクライナ戦争への介入についても、揺れ動くものの、明らかにロシア寄りの立場を取っています。

これは「いかにすれば戦争の終結または停戦を容易に達成できるか?」という思考と目的に即した動きと考えていますが、トランプ大統領の思考の中には、中長期的な安定や戦後復興のプランなどには実際にはあまり関心がなく、“戦争を終結に導いた大統領”という肩書を重んじているように思います。

ただ、戦後復興のプランに関すると、アメリカ企業の利益追求と拡大という側面は明確に示されており、議論を呼んだ“アメリカがガザを所有し、スーパーリゾートとして開発する”という案や、ロシア・ウクライナにおける地下資源(原油、天然ガス、レアアース)の“共同”開発や保有といったプランはお持ちの様子です。

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