トランプ政権が「ベネズエラの石油増産」を急ぐ背景
話しは少しずれますが、ベネズエラの反政府野党指導者のMachado女史がノーベル平和賞を授与されるようになった際、彼女のことを称賛したにもかかわらず、今回のオペレーション後のベネズエラの統治者としては認めない決定をし、代わりにMaduro政権ナンバー2のデルシー・ロドリゲス副大統領を暫定大統領に推し、ベネズエラの舵取りを担わせたのは、彼女が副大統領職のほかに、石油大臣を兼任していることが大きな理由で、このベネズエラの原油に対するディールを纏めるには、それを一手にまとめているロドリゲス暫定大統領を交渉の相手にしたほうが、国内的な権力基盤がないMachado氏よりも、手っ取り早いと踏んだからだと考えられます。
そして議論を呼ぶ内容なのですが、ロドリゲス暫定大統領はMaduro氏の右腕として、麻薬カルテルとの強いつながりとコントロールがあり、国内におけるあらゆる権力基盤を握っていることも、あまり語られませんが、ロドリゲス副大統領兼石油大臣が、目下のところ、ベネズエラを率いることを米国が認め、求めた理由です。
ロドリゲス暫定大統領は、トランプ大統領が公言し、メディアが報じているほど、アメリカに対して譲歩をしていませんが、ベネズエラの政権の維持を確保する代わりに、アメリカの資本を招き入れ、老朽化し、設備が使い物にならなくなっている石油関連施設を再生させるというアイデアは、いろいろ聞く内容を元にすると、どうもロドリゲス政権のベネズエラにとってはまさに“渡りに船”だそうで、必ずしも悪いことばかりではないというのが大方の見方です。
今後、アメリカの助けにより施設の近代化が急ピッチで進められ、ベネズエラの油田の産出能力が高まることで、実はベネズエラ国営石油会社(PDVSA)が保有する2,000億バレル超の埋蔵量に係る能力も高められるというシナジー効果が期待されるため、交渉の結果によっては、ベネズエラにとっても決して悪い話ではないという見立てが存在しています。
ゆえに、Maduro大統領夫妻の今後の扱いや、アメリカの関与度合い、そして周辺国に安全保障上の脅威が波及するか否かという懸念材料は残るものの、ベネズエラに対するある程度の安定は保証され、事態は沈静化するのではないかと考えられます。
ただし、そのためには【アメリカの石油関連企業がベネズエラの産油量の回復に早急にコミットすること】が大前提になりますが、すでに9億バレル相当の権益を有するシェブロン社以外は、エクソン・モービル社やコノコフィリップス社などは参画に慎重と言われており(20年ほど前に国有化された際にベネズエラから撤退しているので)、まだ事態の行方(好転するか暗転するか)には100%の確信が持てない状況と言えます。
トランプ大統領と政権がベネズエラの石油増産を急ぐ背景には、ベネズエラの石油を国際原油市場に再度流通させることで、OPECプラスに握られている原油価格の引き下げを行うと同時に、原油価格に対する支配力を手にしたいという狙いが透けて見えてきます。
インフレ対策としてのエネルギー価格の引き下げは、トランプ大統領の公約の一つであるため、ベネズエラの石油はそれを可能にする鍵として認識されていて、OPECプラスによる減産により価格が高止まりする現状を打破し、国際的なエネルギー市場に対するコントロールを高める権限を握る狙いがあります。
すでにシェール革命によってエネルギー輸出国となっているアメリカには、原油の輸入に対する高いニーズはありませんが、国内のシェールセクターを活性化させつつ、エネルギー価格を“適度に”抑える権力を一手に握りたいという力の構図がここでも見て取れます。
それこそが、トランプ大統領にとっては、今年秋に行われる連邦議会中間選挙までに支持拡大・回復を図るための大きな材料と考えられているようです。
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