日本も戦争に巻き込まれること必至。トランプに見捨てられたネタニヤフの暴走がアジアを“火の海”にする最悪のシナリオ

 

思いがけず表出しかねない「制御不能」な国際情勢

もしウクライナが自滅して戦争がロシア勝利で終わるようなことになれば、現在、存在している負のバランスが崩れ、予期せぬ事態が表出する可能性があります。

現在、ロシア・ウクライナ戦争の戦況が停滞し、前線では一進一退の攻防が続く中、ロシアは中東の不安定な情勢にも介入して影響力を誇示し、インドと結ぶことで中国とのバランスを図ろうとし、シリアのシャラア政権と和解して関係を修復して、ロシアのアフリカへの進出拠点を復活させ、アメリカがベネズエラに難癖をつけ、武力行使も辞さない姿勢を示したら、かつてのキューバ危機のように、ベネズエラを防衛する意図を示して、アメリカの裏庭にさらなる緊張を作り出すことで、ロシアの影響圏へのアメリカのコミットメントを弱めようとする動きを取ることで、それぞれの間での微妙なバランスが保たれているように見えます。

もしどこかの戦い・要素が終焉するようなことがあれば、このデリケートなバランスが崩れ、それが戦争の拡大と飛び火に繋がり、思いがけず制御不能な国際情勢が表出することも考えられます。

例えば、すでに緊張が極限まで高まり、イスラエルとアラブ諸国の対立のみならず、ついにはトランプ大統領も自らの和平合意の履行をイスラエルが邪魔するのであれば、イスラエルを切り離すとの強い警告をネタニエフ首相に投げつけたことでイスラエルの孤立が鮮明になり、それがイスラエルをextremeな方向に押し、武力をもって周辺国を抑えつけるという行動に押しやるかもしれません。

それは中東アラブ諸国の対イスラエル宣戦布告に繋がり、核保有国パキスタンを巻き込んだ核の対峙が起こるだけでなく、中国やロシアの中東へのさらなる介入を招き、そこにワイルドカードとしてのトルコが参入することで、中東・西アジアは火の海になります。

それが中央アジアに飛び火すれば、止まったはずのロシア・ウクライナ戦争が再燃しかねませんし、回廊を伝って南アジアに飛び火すれば印パ間の対峙が再燃し、それが東南アジアに飛び火してすでに過熱しているタイとカンボジアの戦いの火に油を注ぐことになってしまいます。

そしてアジアの不安定化は中国を刺激し、中印間の緊張が極限まで高まるだけでなく、南シナ海の制海権を巡る争いが制御不能に陥ることも考えられます。

そして南シナ海が火の海になれば、広くアジア太平洋またはインド太平洋地域の緊張が高まり、中国・アメリカの出方次第では、日本も確実に争いに巻き込まれることになります。

またアフリカ方面に広がる戦いの火は、すでに不安定化している東アフリカに飛び火し、スーダンの内戦を激化させ、それがすでに勃発している西アフリカから中央アフリカに至るクーデターベルトを通じてアフリカ全土を巻き込んだ戦いが起こることになるかもしれません。

これらはあくまでも最悪のシナリオを想定したお話しなのですが、全くの妄想で馬鹿げていると片づけてしまうにはあまりにも危険極まりない状況が存在することもまた事実と言えます。

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