トランプ・バイデンどちらが勝っても米国終了。ヨボヨボになった“元覇権国”と心中する気マンマンの情けない日本

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11月の大統領選に向け、6月27日に行われたバイデン大統領とトランプ前大統領のテレビ討論会。結果はバイデン氏の「惨敗」と報じられていますが、そもそもこの討論会では米国にとって「一番大事な問題」が語られていないとジャーナリストの高野孟さんは指摘します。その問題とは一体何を指すのでしょうか。高野さんが自身のメルマガ『高野孟のTHE JOURNAL』で詳しく解説しています。
※本記事のタイトル・見出しはMAG2NEWS編集部によるものです/メルマガ原題:バイデン・トランプ討論で語られることがない一番大事な問題/米国主導の世界秩序の終焉後に米国はどう生きるのか?

プロフィール高野孟たかのはじめ
1944年東京生まれ。1968年早稲田大学文学部西洋哲学科卒。通信社、広告会社勤務の後、1975年からフリー・ジャーナリストに。同時に内外政経ニュースレター『インサイダー』の創刊に参加。80年に(株)インサイダーを設立し、代表取締役兼編集長に就任。2002年に早稲田大学客員教授に就任。08年に《THE JOURNAL》に改名し、論説主幹に就任。現在は千葉県鴨川市に在住しながら、半農半ジャーナリストとしてとして活動中。

終焉迎えたアメリカ主導の世界秩序。7年を無駄にした米国に残された唯一の“軟着陸”の手段

バイデン・トランプ討論で語られることがない一番大事な問題/米国主導の世界秩序の終焉後に米国はどう生きるのか?

アミタフ・アチャリアはインド出身の国際政治学者で、現在は米アメリカン大学教授。権威ある世界国際関係学会の会長に非西洋人として初めて選出されたことで10年ほど前に話題になったこともある。その彼が書いたのが『アメリカ世界秩序の終焉/マルチプレックス社会のはじまり』(ミネルヴァ書房、2022年刊)で、この主題を扱った本の中で(もちろん私の目の届いた範囲内ではあるが)最も論理的に整理されていて分かり易い上、導かれる結論も無理なく受け入れることのできる優れ物である。

本書の主張は、訳者あとがきの要約によれば、次の2点である。

  1. 第2次世界大戦後に構築された米国主導のリベラル国際秩序(アメリカ世界秩序)は、既にその終焉を迎えている。
  2. この大きな転換期を経て形成されつつある世界とは、新冷戦でも多極構造でもなく、人類がこれまで経験したことのない世界――「マルチプレックス(複合型)世界」である。

ここでいう「リベラル」とは、自由な選挙制度をはじめとした政治的民主主義、国家が個人の自由を妨げないどころかそれを積極的に配慮する人権尊重、自由貿易・自由市場経済など、いかにも米国人好みの価値観をひとまとめにして言う表現である〔日本の政治用語で「保守vsリベラル」などという場合と全然違うので注意〕。しかしそれは米国人が思ってきたほど普遍的で、世界中の人々から受け入れられてきたものだったのかどうかというのが、本書の問いかけの1つである。

「マルチプレックス」とは聞き慣れない言葉だが、日本では「シネマコンプレックス」と呼ばれる、大型ビルの中に10や20もの大中小の映写室があって別々の映画を同時多発的に上映している施設は、本家の米国では「シネプレックス」とか「マルチプレックス」と呼ばれている。そのイメージを借りて本書の著者が創り出したポスト覇権時代の世界を表す概念がこれで、米ソニ極の後の米国一極でも多極化でもなく、また新たな米中二極でもない、「中心軸になるものが存在せず、様々な部分が互いに複雑に依存しあう、全く新しい形の世界秩序」を意味する。

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