衆院解散をあきらめた岸田首相が自民党総裁選への出馬に意欲を燃やす中、ポスト岸田をめぐる党内の動きが活発化している。「自民党の刷新」を有権者にアピールでき、選挙に勝てるリーダーならこのさい誰だって構わない。そこで急浮上してきたのが、菅義偉前首相が推す石破茂氏。自民党の面々はいまだに「トップのすげ替え」で国民を騙しおおせると勘違いしているのだ。元全国紙社会部記者の新 恭氏が解説する。(メルマガ『国家権力&メディア一刀両断』より)
※本記事のタイトル・見出しはMAG2NEWS編集部によるものです/原題:政治改革よりトップのすげ替え。総裁選頼みの自民党に復活の見込みなし
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自民党内からも退陣要求、岸田首相の「異常な感覚」
これといった波乱もなく閉幕した通常国会。「政治とカネ」問題の再発を防ぐためというふれこみの改正政治資金規正法も、日本維新の会との間でひと悶着あったとはいえ、岸田首相の望み通りに成立した。
しかし、その中身といえばお寒い限り。企業・団体献金、政治資金パーティーの開催、使途を公開しない政策活動費、そのいずれもが温存された。
政治資金パーティーの購入者の公開基準額を20万円超から5万円超に引き下げたところで、回数の制限はないなど抜け穴はいくつもある。政治屋たちの手にかかれば、それを利用して稼ぐ方法を編み出すくらい簡単なことだろう。
にもかかわらず、岸田首相は「実効性のある具体的な制度ができた」と大真面目な顔をして言う。冗談じゃない。なにが「実効性」だ。実効性のある法改正ができなかったことを恥じて退陣するくらいの矜持があれば、まだしも救いはあろう。
それどころか、岸田首相は、自民党総裁選への出馬に意欲を燃やしていると各メディアは報じている。5月に終了した電気・ガス料金の補助金を8月から3か月間限定で復活させるなど、見え見えの人気取り政策を打ち出したことからも、総裁選に向けての思惑がうかがえる。
なぜ、岸田首相は能天気でいられるのか。退陣要求の声が党内から湧き上がるなか、再び自分がトップに選ばれると思えるのは、常人の感覚ではない。選ばれるかどうかの冷静な判断より、なぜ自分が退かねばならないのかという気分がまさっているからではないか。
防衛も原発も安倍政権の路線を踏襲してきた。裏金問題は安倍派や二階派のせいだ。派閥解消を先導し、政治資金規正法を改正した。功績こそあれ、失政らしいことはしていないではないか、と。
麻生副総裁と会食、総裁選出馬への協力を要請か
岸田首相は6月18日夜、麻生副総裁と東京都内のホテルで会食した。おそらくこの席で、総裁選出馬への協力を要請したはずだ。しかし、麻生氏の機嫌はよろしくない。
そもそも岸田首相が派閥解消を進めたおかげで、派閥を存続させている自分が悪いように言われている。そのうえ岸田首相は、麻生氏の反対を振り切り、政治資金パーティーの公開基準額引き下げで公明党に妥協した。そんな不満が麻生氏とその周辺に渦巻いている。
麻生氏は「自分で潔く引き際を決めれば、後継者を選ぶことだってできる」と岸田首相に“院政”を勧めたこともあった。麻生氏としては、総理続投を諦めさせるつもりで言ったのだろうし、多分、その考えはいまも変わっていないにちがいない。