中国「人型ロボット大国」という幻想。心臓部は「日本製部品」頼みという不都合な真実

 

人型ロボットに格段の困難

中国は、新規事業において半導体産業で何とか成功させた。この調子で資金さえつぎ込めば、人型ロボットも成功すると思い込んでいる。両者は、全く別の技術体系である。人型ロボット製造は、高度の部品企業群の存在が不可欠である。中国には、精密な部品企業が存在しないのだ。中国政府は、全くこれに気付かずにいる。

半導体は、極端に言えば資本・設備・人材を大量投入すれば、一定レベルまで到達できる産業である。設備投資の巨大化(数兆円)が前提である。工程は、標準化されている。設計は、米国依存でも製品化できる。こうした背景によって、政府が巨額補助金を出せばキャッチアップは可能である。中国は、こういう半導体の「資本集約型モデル」の強みを生かして成功の域へこぎつけた。

ロボットは、半導体と違って資本を大量投入すれば、成功できる産業でない点が大いに異なる。ロボットは、「現場・精密機械・制御・社会実装」の統合が必要である。さらに、必要な技術分野の特許は、すでに日米欧が先行取得している。後発の中国が、先発国の特許網を潜り抜けることはかなり困難である。こういう技術面での制約が大きいのだ。

例えば、精密機械加工では、日本・ドイツが圧倒的地位にある。サーボ・減速機は、日本が世界シェアの60%を占めている。制御工学は、日本・米国が支配している。データによる現場改善は、日本の独壇場である。安全規格・社会実装は、欧米・日本が強みを発揮している。さらに加えれば、中国企業は長期的な製品への信頼性で苦闘している。「メード・イン・チャイナ」の人型ロボットは、信頼性の面で海外販路が絶望的である。

こうしてロボットは「文化・現場・制度・技術」が全部揃わないと成立しない産業である。半導体のように「資金を大量に投入すれば追いつく」構造でないのだ。半導体は、設備を購入すれば製造できるが、ロボットは減速機・精密加工・制御が基盤になる。この分野は、日本が世界トップであり、中国も日本へ依存しているのだ。

中国の人型ロボット企業は、ほとんど新興企業で補助金依存である。これでは、長期の信頼性試験や社会実装ができず、これが根本的な弱点になる。こうして、「飛んだり跳ねたりする」こと以外に、社会的訴求できない悩みを抱えている。メディアは、この限界を無視して、話題性だけを追って持ち上げているのだ。

日本の人型ロボットは、既存の産業ロボット企業が蓄積した技術を基盤にして開発している。中国は、既存企業が参入しないという全く「アベコベ」現象である。

中国の産業ロボット企業は、人型ロボットが「儲からない」ことを知っている。産業用ロボットが、すでに激しい価格競争で利益率の低下に見舞われているからだ。また、人型ロボットの技術的難易度が高いことや、耐久性の低いことも熟知している。加えて、生産コストが高いこと、実用化時期の遠いことも知っている。こうして、既存企業は総合的にみて人型ロボットの「採算が困難」と判断しているのだ。

中国の製造業は、すでに「固定式ロボット」で自動化済みである。中国の工場は200万台超の産業用ロボットを保有している。人型ロボットを採用する余地が少ないのだ。こうして、既存企業は「人型ロボットは不要」と見ている。S&Pグローバルが、25年発表したリポートによると、中国の企業設備投資全体は、2025~27年に年0.6%減少する見通しである。2022~24年の3年間は、年率平均6.2%増であった。企業設備投資は今後、急減予想である以上、人型ロボット採用は絶望的である。

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