あのトランプまでもがエルドアン大統領を大絶賛。「橋渡し役」を超え「地域秩序の設計者」となったトルコの存在感

 

【存在感を増すトルコ ─ NATOアンカラ首脳会議が示したもの】─ 「橋渡し役」を超えて、地域秩序の設計者へ ─

7月7日から8日にかけて、トルコの首都アンカラでNATO首脳会議が開催されました。私は、この会議そのものよりも、「なぜアンカラで、なぜこのタイミングだったのか」という点に強い関心を持っています。

かねてNATOからの脱退にも言及していたトランプ大統領は、一転、今回の首脳会議への出席を決めました。その理由について、トランプ大統領自身が「エルドアン大統領が主催する会議でなければ、出席していなかっただろう」という趣旨の発言をしていることは象徴的です。

会議を終えたトランプ大統領は「非常に成功した首脳会議だった」と述べ、エルドアン大統領のホスト役としての手腕を称賛しましたが、トランプ大統領のトルコへの急接近の背後にはどのような要因があるのでしょうか。

トルコは、欧州・中東・アジアを結ぶ要衝に位置し、シリア暫定政権を支えてアサド政権崩壊後の内戦収束に貢献し、ガザ停戦交渉ではハマスの説得にも関与し、アメリカとイランの仲介にも動いてきました。

今回の首脳会議でも、トランプ大統領はエルドアン大統領との関係を、自らが描く中東安定化構想の実現に活用したい考えをにじませています。米トルコ首脳会談では、第1次トランプ政権時に発動したトルコ国防産業庁への制裁解除が提案され、エルドアン大統領自身も「防衛面での制裁の大部分が解除された」と明らかにしました。

F35戦闘機のトルコへの売却についても、トランプ大統領は「まだ決めていないが、前向きに検討している」との姿勢を示しています(ちなみにエルドアン大統領は「5機のF35の購入で合意した」と発言しています)。

また、トランプ大統領はシリアの「テロ支援国家」指定解除を議会に通告し、シリアのシャラア大統領とも会談するなど、シリアの国際社会への復帰を後押しする動きも見せ、中東地域における対米感情の改善にも努力している様を見せています。

会議の結果として、NATO加盟国は2026年のウクライナ支援として700億ユーロ(約13兆円)規模の軍事装備・訓練支援を約束し、2027年以降も同水準を維持する方針を確認したことも、大きな注目ポイントです。

ゼレンスキー大統領はアンカラで加盟国首脳らとの精力的な会談を重ね、防空システムの強化やパトリオットミサイルのウクライナ国内生産を認める方針が示されました。しかし、その一方で、チェコのようにこの支援枠組みへの不参加を表明する国もあり、ウクライナ支援に対するNATOの結束は一枚岩ではありません。

私がここで指摘したいのは、アメリカの欧州への軍事的関与が相対的に薄れつつある中で、NATO加盟国にとってトルコと協力する以外の現実的な選択肢がほとんど残されていないという構造です。トルコは無人ドローンをはじめとする防衛産業を急速に育成し、世界各地で高い評価を得ています(私も毎年2月にイスタンブールで開催される武器商人の博覧会・展示会に招待いただいていますが、なかなかの盛況ぶりです)。

「安全保障ではアメリカ」、「経済では中国」というように、複数の大国との関係を同時に維持する「多層外交」は、もはやトルコに限った戦略ではなく、地域大国が生き残るための共通言語になりつつあります。

エルドアン大統領にとって、今回の首脳会議は国内的にも大きな意味を持ちました。会議直前には、集会やデモを禁止する厳しい統制が敷かれ、多数の活動家や記者が拘束されたと人権団体が指摘していますが、トランプ大統領がエルドアン大統領を公の場で称賛し続けたことは、エルドアン大統領にとって「外交的な成果である以上に、国内での権威主義的な統治を国際的に正当化する効果を持った」という厳しい見方も存在します。私はこの点についても、公平性の観点から、明確に申し添えておきたいと思います。

いずれにせよ、トルコがいまや単なる「橋渡し役」ではなく、地域秩序そのものを設計する側に回りつつあることは間違いありません。

それが地域の安定に資するのか、あるいは特定の指導者の権力基盤強化に資するだけなのか。今後の動きを注視する必要があります。

その地域秩序の変化は中東だけに留まりません。アジアでも同様のシグナルが発せられています。

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