「AIの補助診療で、遠隔医療の未来を変える」──外科医・藤本拓也が挑む“ふたつの空白”と、オンライン保険診療「コトブキ」

2026.08.07
by まぐまぐニュース スタッフ
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クリエイターの発信を支える「まぐまぐ」の提供でお送りするラジオ番組『Why So Good?』。毎週二組のプロフェッショナルや経営者をゲストに迎え、「何をやっているか」ではなく「なぜそれに至ったのか」──成功の裏側にある思考を紐解く30分番組だ。MC・コメンテーターを務めるのは、元日本マイクロソフト業務執行役員で、これまで800社超の働き方改革を支援してきた株式会社クロスリバー代表・越川慎司氏。アシスタントMCは上條美沙子。

今回のゲストは、一般社団法人ネクタークリニック代表理事の藤本拓也氏。日本外科学会専門医、日本消化器外科学会専門医・指導医、消化器がん外科治療認定医、検診マンモグラフィー読影認定医。大学病院とへき地の総合病院という異なる環境での勤務を経て、手術や集中治療といった“治す”医療の最前線から、高齢者救急・総合診療・訪問診療といった“治し支える”医療の現場まで、幅広く経験を重ねてきた外科医だ。

その藤本氏がいま向き合っているのは、「病気になる前」と「医療にたどり着けない人」という、ふたつの空白。そして、その空白を埋めるために動き出しているのが、オンライン保険診療サービス「コトブキ」だ。医師の偏在、地域医療構想、改正医療法、そしてAI──30分の対話は、日本の医療がいま立っている場所を、そのまま切り取ったものになった。

山口県下関市・北部。「最後まで残り、質も高める」という離れ業

上條:それでは、本日一組目のゲストをお呼びしましょう。一般社団法人ネクタークリニック代表理事の藤本拓也先生です。よろしくお願いいたします。

越川:すごく興味津々なので、まず最初に聞いていいですか。へき地医療のところにとても興味があるんですけど、現在もへき地医療に携わられているんですか。

藤本:はい。ちょっと欲張りな話なんですけど、今も山口県の下関市、その中でも過疎化・高齢化の進んでいる北部地区で診療に励んでおります。

越川:下関って、南部のほうは新幹線も通っていて栄えていますけど、北に行けば行くほど自然が多いところですよね。ご出身もその近くなんですか。

藤本:はい。まさに今言われた地域で私は生まれまして、幼少時代から過ごしてきた、思い入れのある故郷になります。

越川:藤本さんが素敵だなと思うのは、医療も事業としてやらなければいけないじゃないですか。維持・継続していくためには、しっかり稼ぐという要素も見捨てることはできないと思うんです。でも一方で、全国各地に質の高い医療サービスを提供するユニバーサルサービスという考え方もある。この二つは結構相反すると思うんですけど、その中でへき地医療に注目されているのはなぜですか。

藤本:本当におっしゃるとおりで。いま厚労省が進めている「地域医療構想」というのは、日本の人口減少と高齢化が進んでいく中で、病院のほうもそれに合わせて統廃合を進め、ベッドも減らしていきましょう、と。診る患者さんも少なくなるんだから病院も減らしていきましょう、という話なんです。すごく理にかなっているとは思うんですけど、さっきご紹介した僕の地元のへき地では、潰れちゃいけない、最後まで残らないといけない。しかも、ただ残るだけじゃなくて、質も守り、維持しながら残していかないといけない。

藤本:少ない医療資源で質を保って、むしろ質を高めようなんて、本当に離れ業じゃないと叶えられない。そんな課題に、日々工夫をして向き合っているところです。

「少ない医療資源で、質を守るどころか高める。本当に離れ業じゃないと叶えられない」

「病気になる前」と「医療にたどり着けない人」──ふたつの空白

越川:そんな大変な課題に向き合っているにもかかわらず、素敵な笑顔で喋っていただけるので、今後の未来は明るいなという感じなんですけど。プロフィールを拝見すると、予防医療にも力を入れていらっしゃるのが素敵だなと思って。

越川:実は個人的な話なんですけど、近しい家族が最近がんになったんです。そのときにそれほど進行していなかったのは、マンモグラフィーの検査を受けたからこそで。もし受けていなかったら、もっと大変だった。予防医療に救われた一人なんですけど、この辺りは全国に広げていきたいという思いがあるということですか。

藤本:そうなんです。今はどうしても「治す」側の治療がメインになってきているんですけど、これは田舎であろうと都会であろうと一緒で、進んでしまってから病院に行っても、救える命も救えなくなってしまっている。だから検診のほうにも、かなり力を入れてやっていかないといけない課題だと思っています。

藤本:特にへき地は、医療機関に行くのがもう遠くて、交通機関もない。足が遠のいてしまう中で、どうしても進行してから来てしまう人が多いんです。だからこそ検診も大事だと、そんなふうに考えているところですね。

検診が命を救う。そして、痩身美容医療が“入口”になる

藤本:実は我々がやっている痩身美容医療のほうも、予防的健康、生活習慣病の予防に結果的につながると信じているんです。美容外科医だけでなく、僕らのような外科医だけでもなく、糖尿病の専門医や循環器内科の先生たちともタッグを組んで、質の高い痩身美容医療を構成しようと頑張っているところですね。

越川:美容をきっかけに検診のきっかけになるというのは、新しいなと思いました。

藤本:実際の現場で私も携わることがあるんですけど、問診のときに身体的な異常が見つかって、引っかかるようなところが出てくる。そこから健康に向けて本格的に進むという患者さんが、少なくないんです。そういったところも重要なポイントかなと思います。

「痩身美容医療の問診で異常が見つかり、そこから本格的な健康管理が始まる患者さんは少なくない」

「直美」問題は、医師個人ではなく制度と構造の話

越川:ちょっと台本にないことを伺っていいですか。以前の放送でも話題になった「直美(ちょくび)」──研修を終えてすぐ美容の領域に行くという問題があるじゃないですか。医師として携わる中で、直美というものに関してはどういう感想をお持ちですか。

藤本:なるほどですね。ニュースなどを見ていると、直美と聞いたら批判的、否定的なニュアンスで語られますよね。ただ、美容医療というのは、もう立派に確立された分野なんです。他方で、僕らのような一般的な外科とか内科の医師も、世の中を支えるうえでは大事なんですけど、その人らしい人生を支えていくという意味では、これはまったく同じことだと考えています。

藤本:だから直美が批判されているのは、結局そこに行く先生というよりは、制度だとか構造だとか、そういったところの問題が今はちょっと大きいように思います。かといって、それが整うまで放っておいていいのかというと、そうはならない。だからいま、美容を専門にされている先生方と、僕らのような医師が手を取り合って、美容医療も安全に、皆さんに安心して来てもらえるように整えているところですね。ちなみに僕自身も研修後そのまま外科に進んだので、いわば“直外(ちょくげ)”なんですけど(笑)。

越川:そういう意味では全部「直」ですよね(笑)。でも、安全・安心という意味では確かに共通しています。

藤本:それが一番大事だとは思っていますので。

顕微鏡をインターネットでつなぐ──すでに動き出している遠隔病理診断

越川:そうやって診療の「質」を高めていくことと、一方で「量」を増やすこと。へき地というのは、大都市に比べて医療サービスが十分でないエリアで、おそらく下関以外にも全国各地にありますよね。

藤本:いっぱいあると思います、本当に。その原点としては、医師の偏在化というのがすごく言われている。それに対して国もたくさん提案をしてくれて、対策をしてくれているんですけど、今の現状では、実際の医師がその地域に行ってそれを満たすというのは、まだまだ難しいと思っています。

越川:下関のへき地医療だけでも大変なんじゃないかなと思うんですが、それを全国に広げようと思ったのはなぜですか。

藤本:似たようなところがいっぱいあるのは、もうわかっているんです。すでに私の地域で実現していることなんですけど、顕微鏡の診断をする病理の先生って、実は外科医や内科医よりも人数が少ないんですよね。都会や大きな病院にはそれぞれいらっしゃるんですけど、病理医が常駐している施設というのは本当に少ない。

藤本:そんな中で我々が取り組んだのが、遠隔での病理診断です。大学病院の先生とインターネットでつないで、わざわざそこまで行かなくても、たとえば手術中に、がん細胞がここまでちゃんと取り切れているかどうかを判定する術中迅速検査ができるようにした。それができないせいで、「本当はそれ以外はできるのに、うちの病院ではこの患者さんは診ることができません」ということをしていたら、結局その地域で完結しようという医療が成り立たなくなる。インターネットで診てもらうようになってから、この地域でできることが幅広くなったんです。

越川:素晴らしすぎる。

藤本:これは国と県に補助金を申請して、助けてもらいながら整備したところなんですけど、調べていく中で、福島県や滋賀県でも早々に同じような取り組みをされていた。みんな同じような課題で頑張っているというのを、肌で感じましたね。

「インターネットでつないだ瞬間、“この地域でできること”が一気に広がった」

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2026年4月、改正医療法が「受診施設」を生んだ

越川:ふたつの空白を埋めるという思いはすごくよくわかったので、二つ目の空白──へき地医療、ユニバーサルサービスのところで、もしご計画があるのであれば、わかっている限りでぜひ。

藤本:ずばり、オンライン診療、しかもオンラインの保険診療サービスというのを「コトブキ」という名をつけて、今プロジェクトを進めているところであります。

越川:名前がわかりやすくていいですね、コトブキ。

藤本:いろんな意味合いと思いがあってつけているんですけど、2026年4月から改正医療法で、オンライン診療の「受診施設」というものが法的に位置づけられました。駅や郵便局、公民館、介護施設など、実際に医師が常駐していない場所でも受診ができる環境が整った、と認識しています。

藤本:この制度改革を前提に、私がいままさに診療に携わっているような、医療機関へのアクセスがすごく細いへき地と、比較的診療時間に余裕のある地域の、各種専門の先生方。そこをなんとかつないで、医師の偏在化を改善する大きな一手になるんじゃないかと考えているところですね。

越川:素敵すぎますね。僕も事前に調べてきたんですけど、遠隔医療って昔から法律の壁があったじゃないですか。うちも親が何十年も介護が必要な状態なので、遠隔医療を待ちに待っていたんです。コロナで多少緩まったところがあって、今回また法律が改正されて、保険診療でそういったサービスを受けられるようになったということですか。

藤本:そういうことですね。おっしゃる通り、コロナで世の中は明らかに変わったと思いますし、遠隔医療のスピードが上がった一つの要因にはなったと思います。加えて、国の進める地域医療構想においても、明らかに人口減少が進んでいて、過疎化が進んでいて、かといってそこで取り残されない地域がある。国としても待ったなしでどんどん進めないといけない。そこで後押ししてくれているのかと、我々としては理解しています。

技術はもう追いついた。残る課題は“落としどころ”の設計

藤本:技術面では、もういろんなことが実現できるようになっています。ただ、各地域で問題点は違ってくる。その地域ごとに、医療のこれまで構築されてきた文化とか、それぞれの立場や価値観というものがあるんです。だから、患者さん・利用者さんのことばかりを考えていても、これはなかなか進まない。行政や各地域の医療機関と手を取り合って、何が一番いいかという落としどころを見つけていく。そこが今からは一番の課題になってくるのかなと思っています。

越川:それを実現させようというのは、すごくいろんな課題があるんじゃないかなと思うんですけど。

「患者さんのことだけを考えていても進まない。行政と医療機関と、落としどころを見つけていく」

グッドをベターに、そしてベストに──AI補助診療という一押し

越川:この番組は『Why So Good?』というタイトルどおり、グッドな点を最初に聞くんですけど、今日は素晴らしいお話だったので、最後に一つだけ。これから「コトブキ」というサービスを、どういうふうにグッドにしていきたいですかね。

藤本:遠隔診療は、さっきの病理もそうでしたし、手術などもそうですけど、完全に取って代わることはないと思うんです。絶対に対面でやらないといけない手術も、診察もある。僕らはそれを全部置き換えようと思っているわけではなくて、オンラインでもできるところはオンラインに寄せて、対面で必要なところの精度と質を上げる。そうやって日本の医療の質を保っていきたいというところがあります。

藤本:そこに、このオンライン診療サービス「コトブキ」の強みとして、AIの補助診療。これを抱き合わせるというところを、僕らはちょっと考えているので、これを一押しでアピールできたらなと思っています。

越川:いや、面白すぎる。これはもう間違いなく、グッドじゃなくてベターになって、ベストになるパターンですね。

藤本:それを目指して頑張ろうと思います。

上條:本当にこれからも楽しみですし、最新情報はぜひ皆さん、ホームページをご覧になっていただきたいですね。

越川:もっと3時間くらい聞きたいですけど(笑)。藤本先生、ありがとうございました。

「オンラインでできることはオンラインへ。対面が必要なところの質を、もっと上げる」

番組概要

※本記事は、トーク番組「Why So Good?」の放送内容をもとに再構成したものです

 

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