クリエイターの発信を支える「まぐまぐ」の提供でお送りするラジオ番組『Why So Good?』。MC・越川慎司氏(株式会社クロスリバー代表取締役)とアシスタントMC・上條美沙子氏が、ゲストの「何をやっているか」ではなく「なぜそれに至ったのか」を掘り下げていく30分番組だ。
今回のゲストは、番組を提供する当のまぐまぐから、株式会社まぐまぐ クリエイタープロデュースディビジョン長・小島丈典氏。まぐまぐの新卒一期生としてキャリアをスタートし、企画編集として公式メルマガの制作やメディア運営に携わったのち一度会社を離れ、およそ10年前に再入社。現在はプラットフォーム事業、メディア事業、そしてそれらを支えるシステム部門の現場責任者を務めている。
1997年にサービスを開始したまぐまぐは、「伝えたいことを、知りたい人に。」という理念のもと、誰もがメールマガジンを発行できる場を提供してきたプラットフォームだ。SNSが情報発信の主戦場になった時代を経てもなお、信頼できる書き手の情報を確実に届けるメディアとして、あらためて価値が見直されている。その現場の最前線に立ち、クリエイターの発信を事業として支えているのが小島氏だ。
越川氏自身、まぐまぐでメルマガを発行するクリエイターの一人でもある。「他のクリエイターがどんなことをやっているのか興味津々」と、いつもとは一味違う“身内トーク”のような空気の中で、今回の対話は幕を開けた。
普段のゲストは、経営者や医師、専門家など、番組の外からやってくる「取材対象」であることが多い。だが今回は、その番組を裏で支えるプラットフォームの中の人が、初めて表に出てマイクの前に座る回でもある。放送を届ける側と受け取る側、両方の視点を知る小島氏に、越川氏がどんな角度から切り込んでいくのか。台本のない、いつも以上に率直なやりとりになった。
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「ゲスト感がない」――同じ現場に立つ二人だから聞けること
越川:いや、もう小島さんに来ていただきましたけど、なんかゲスト感がないですね。ある意味仲間っていうイメージがあって。この番組自体を提供していただいてますし、僕もまぐまぐのメルマガクリエイターとして発信してますので、他のクリエイターがどんなことをやっているのか興味津々なんです。今回は台本にないことも根掘り葉掘り聞きたいなと思ってるんですが――この番組は「Why So Good?」、まずはグッドなポイントをリスナーに伝えたいので、今回一番届けたいグッドなポイントは何でしょうか。
小島:あなたの経験を資産に変える、クリエイターのための発信マネタイズ支援です。
「あなたの経験を資産に変える、クリエイターのための発信マネタイズ支援です」
越川氏は「これはクリエイターのためというより、僕自身のためという感じがする」と笑いながら受け止めた。AIが作った情報や他人の情報ではなく、自身が経験した一次情報を発信することの価値が高まっている――番組がこれまでも繰り返し伝えてきたテーマと、小島氏の言葉は重なる。
誰もが手軽に文章を生成できる時代だからこそ、「その人が実際に経験した話かどうか」は、これまで以上に読み手にとって判断材料になっている。小島氏が掲げる「資産化」という言葉には、単に発信を続けるという意味だけでなく、その経験が時間をかけて積み上がり、後から読んでも価値を持ち続けるものへと変わっていく、というニュアンスが込められている。その発信手段の一つとしてメルマガを提供し、資産化からマネタイズへとつなげていく。まずは、その具体的な中身から話は始まった。
メルマガという「資産」――流れていくSNSとの違い
小島:SNSをはじめ情報発信ツールはたくさんありますが、その多くは数日で流れてしまうフロー型が多いと思っています。そこで、クリエイターさんたちが積み重ねてきた経験や一次情報を、メールマガジンという形で読者さんの受信箱にしっかり蓄積していく。一過性の情報ではなく、長くその情報で価値を生む――そういう資産化をイメージしていて、テキスト配信のお手伝いだけでなく、イベントやサロン、出版なども一緒に伴走するというのが、私たちの部署でやっていることです。
「一過性の情報ではなく、長くその情報で価値を生む、そういう資産化をイメージしている」
SNSの投稿は、タイムラインを流れて数日で埋もれていく。対して、受信箱に届いたメールマガジンは、読者が能動的に登録し、フォルダの中に残り続ける。この「流れない」構造こそが、経験や知見を積み重ねていくメディアとしてのメルマガの強みだと小島氏は捉えている。
配信して終わりではなく、そこから先まで併走する。越川氏は「ただ単純に過去のナレッジを共有するんじゃなくて、それを活かす。貯めることがゴールじゃなくて、活用すること、増やすことがゴールだとすると、その後押しをされているということですね」と要約し、小島氏も「うまくまとめていただきありがとうございます」と応じた。上條氏もまた「メルマガだけでは終わらないということなんですね」と、その広がりに関心を寄せた。
テキストの配信そのものは、まぐまぐが1997年のサービス開始以来続けてきた事業の中核だ。しかし小島氏が率いるクリエイタープロデュースディビジョンが手がけているのは、そこからもう一歩踏み込んだ支援である。配信という「入口」の先に、イベントやサロン、出版という「出口」を用意することで、クリエイターの経験がより多くの形でマネタイズされていく。次に話題は、その具体的なイベント設計へと移っていった。
投資情報も趣味の発信も――クリエイターに伴走するイベント設計
越川:そのまぐまぐのメルマガを出しているクリエイターの方々のイベントの取り仕切りもされているということですか。例えばどんなイベントをされているんですか?
小島:テキストで投資情報を配信されている方に、もう少しコンパクトな人数を集めて、具体的なチャートの見方など、投資助言にならない範囲での指南レクチャーのお手伝いをしたり。あとは普段の趣味の発信をされている方に、もっと内輪で具体的にQ&Aをやりながら一緒にやりませんかというアプローチをして、実現させていくということをやっています。
普段はメールなどでテキスト情報を受け取り、その発信者にもっと興味が出たときには対面イベントで直接質問ができる――越川氏がそう整理すると、小島氏は「その通りです」と頷いた。テキストという「流れない」情報を軸にしながら、必要なタイミングで濃度の高い接点をつくる。それが、まぐまぐが考える発信のマネタイズ設計だ。
投資情報のように専門性が高く誤解を招きやすいジャンルでは、「投資助言にならない範囲で」という線引きが欠かせない。あくまでチャートの見方や考え方を伝える場として設計することで、クリエイターにとってもリスクの少ない形でファンとの接点を広げられる。趣味の発信であれば、もっとカジュアルに、読者が直接質問できる場をつくる。ジャンルによって熱量の伝え方を変えながら、「発信を続けたくなる仕組み」を一緒に作っていくのが、この部署の役割だという。
こうしたイベントは、クリエイター側から見れば読者との距離を縮める場であると同時に、読者側から見れば、普段テキストで読んでいる相手の「人となり」に触れられる貴重な機会でもある。文字だけのやりとりでは伝わりきらない熱量や人柄が、対面やオンラインでの双方向のやりとりを通じて補われていく。テキストとイベント、この二つを組み合わせることで、発信はより深く、長く続くものになっていく。
一方で、発信の手段はメルマガだけでなくSNSや有料noteなど多様化している。その中でどうクリエイターを盛り上げていくのか、小島氏自身の考えにも話は及んだ。
小島:勝ちパターンというのはやっぱりあると思っています。ただ、それを単純にクリエイターさんに当てはめるわけではなくて、そのクリエイターさんがどういうタイミングで誰に届けたいかというのはそれぞれ違うので、やっぱりちゃんと話を聞いて、なぜ発信したいかというところにも寄り添うことで、お手伝いができるかなと思っています。
「なぜ発信したいか」を掘り下げる――この言葉に、越川氏は思わず「その今のコメント、僕が言わなきゃいけないですね。だって『Why So Good』っていう番組なので」と反応し、上條氏も「なぜ、って出てきましたね」と笑った。番組名そのものを体現するような発言をきっかけに、話はその原点へと移っていく。
なぜ「なぜ」を追うのか――新卒一期生、2006年からの原点
越川:その、どうやって発信するかじゃなくて、なぜ発信するかということを掘り下げる理由。そこに興味関心を持ったのは、何かターニングポイントがあったんですかね。
小島:私、新卒1期生でまぐまぐに入っているんですけど、ちょうど2006年ぐらい、インターネットの創成期でもあって。テキスト化が実際の書籍ではなく、電子でいっぺんに届くというところに魅力を感じましたし、そうなってくると個人の力では限界があるので、そのお手伝いをしたいというのが、一番の思いですかね。
2006年といえば、SNSといってもせいぜいミクシィ程度で、X(旧Twitter)やFacebookもまだそれほど広がっていなかった時代だ。越川氏は「そんな中で、こんな時代の変化にどう対応してきたのか」と重ねて尋ねた。
新卒でまぐまぐに入った小島氏は、一度会社を離れる時期を経て、およそ10年前に再びまぐまぐに戻ってきている。インターネットの黎明期からSNSの台頭、そしてAIの登場まで、情報発信の手段そのものが目まぐるしく変わり続けてきた約20年間を、当事者として見てきたことになる。その間、テキストで書き手の想いを届けるという仕組みの本質は変わらないまま、届け方だけが時代に合わせて磨かれてきた。
AIの時代だからこそ「誰が発信しているか」が問われる
小島:AI化が進んだことで、誰でも言語化や体系化、テキスト化が簡単になったからこそ、誰が発信しているか、どんな経験を持って喋っているかということが重要になってくる。そういう意味で、本当の意味でファンとつながれるメールマガジンという媒体はすごくいいなと思っています。
情報を作ること自体のハードルが下がったからこそ、発信者の背景や経験そのものに価値が生まれる――番組がこれまでのゲスト回でも繰り返し語ってきたテーマが、まぐまぐの現場を預かる小島氏の口からも語られた。
生成AIを使えば、誰でもそれらしい文章を短時間で書けてしまう。だからこそ、その文章の背後に「実際に経験した人」がいるかどうかが、読者にとっての信頼の分かれ目になる。メールマガジンという媒体は、発行者の名前と顔が見える形で、継続的に読者と関係を積み重ねていく仕組みだ。AIが情報の「量」を増やす時代において、メルマガが担うのは情報の「質」と「出どころ」を保証する役割だと言えるかもしれない。
続けて話題は「ユーザーファースト」という、小島氏が掲げるもう一つの軸に移った。
ユーザーファーストの原点――発信者にも、受け手にも
越川:ファンとつながれるという意味で、まさに先ほどの自己紹介にあった通り、ユーザーファーストを掲げているじゃないですか。そのきっかけになったことってあるんですかね。
小島:それはやっぱり自分自身も情報発信をしていた側だったので。ちゃんと曲がった方向じゃなくて伝わっているかとか、発信したことで安心して発信できる、叩かれない、誤解なく伝わっているかなというのがすごく心配になる側だったので、本当に届けたい人にちゃんと受け取れるような発信ツールを作りたいなとは思っています。
炎上という言葉は発信者側が傷つくものと捉えられがちだが、その炎上的なコメントを見る読者側もまた傷ついているのではないか――越川氏はそう自身の気づきを重ね、「寝室にスマホを持ち込まない世界の一流が多いのも、そういう炎上リスクを捉えてのこと」というエピソードを添えながら、小島氏に問いを重ねた。
小島:それもありますし、長い間まぐまぐで働いている中で、私たちの利益ということを考えると、クリエイターさんが頑張ってくれているからこそ続けられるというのもあるので、発信者側と受け手側の双方に寄り添うことが仕事だな、というのはあります。
「発信者側だけでなく受け手側にも、双方に寄り添うことが仕事」
越川氏はこれを「ユーザーファーストは、裏を返せばクリエイターファーストでもある。しっかりと畑を耕して肥料をまいてくれるから、クリエイターは種をまいて水をあげることに集中できる」と例え、小島氏も深く頷いた。
プラットフォーム側の利益は、クリエイターが発信を続けてくれることの上に成り立っている。だからこそ、発信者が安心して書き続けられる環境を整えることと、読者が気持ちよく読み続けられる環境を整えることは、まぐまぐにとって別々の課題ではなく、同じ一つの課題の両面なのだという。「発信者を守ること」と「受け手を守ること」を切り離さずに考える姿勢が、小島氏の言うユーザーファーストの土台になっている。
資産になる発信の実例――中島聡氏とMB氏
越川:ぜひ、他のクリエイターの方がどんな発信をして、どんな活動をしているか、具体例として教えていただければと思うんですが。
小島:象徴的なのがお二人いらっしゃって、まずは中島聡さん。マイクロソフトでWindows 95などの企画設計に携わったエンジニアなんですけど、テスラがまだ懐疑的に見られていた時期から注目して発信し、NVIDIAもまだ知られていなかった頃から取り上げていた。今振り返ると、当時から発信していたことがすごいという評価につながっています。
越川:何十倍とも言われていますよね。テンバガーとかね。
小島:もうお一人がMBさん。アパレル出身のクリエイターさんで、センスで語られがちなファッションの理論を言語化されて、こうするとおしゃれだよというのを伝えている。ファッションの流行は変わっても、本質は変わらないんだねというのがわかる。この二人の事例は一過性の話題ではなく、時間が経っても色あせない知見を発信し続けられている、というのがメルマガの強みかなとは思っています。
「時間が経っても色あせない知見を発信し続けられるのが、メルマガの強み」
越川氏はMB氏について「黄色が流行る、青が流行るという話は一切せず、そもそもの型としてのファッションの見え方を言語化して発信している」と評し、そうした発信者に共通する魅力が、コンテンツそのものにあるのか、それとも人柄によるものなのかと重ねて尋ねた。
小島:それも両方ですね。やっぱり文章で人柄も結構見えてくるので。
上から目線で「すごいことをやっているんだから従え」というタイプの発信者はなかなか難しい、という越川氏の指摘に、小島氏も「それはそれでまた需要があるかもしれない」と、発信のあり方に唯一の正解はないことをうかがわせた。
中島聡氏とMB氏、二人に共通するのは、流行や話題性を追いかけるのではなく、自分自身の経験や視点から「本質」を語り続けてきたという点だ。テスラやNVIDIAが今ほど注目されていなかった時期からの発信も、色にとらわれないファッションの型の言語化も、どちらも一過性のトレンド解説ではない。だからこそ、時間が経ってから読み返しても色あせず、むしろ当時の慧眼として評価される。小島氏が語る「資産になる発信」の具体像が、この二人の事例によってくっきりと浮かび上がってくる。
これからのまぐまぐが呼びかけたいクリエイター像
越川:今後クリエイターを増やしていく活動をされていると思うんですが、台本にないので聞いちゃいたいんですけど、どんなクリエイターに参画してほしいですか?
小島:今まで発信されてこなかった、例えばミュージシャンとか絵を描く人とか、そういう方のテキストをちょっと見てみたいなと思って、声掛けしたいなと思ったり。あとは若い子たちが今考えていること、本当にプライベートなことでも、そういう発信がやっぱり誰かのためになるんじゃないかなとは思っています。
曲を書く人はもともと文章力やワードセンスに長けているはず、と越川氏はミュージシャンへの声掛けに賛同した。上條氏も「クリエイターになるというのはちょっとハードルがある、と思っていたんですけど、日常の些細なことを発信することが誰かの役に立つ、という考え方もあるんですね」と、新しい発見として受け止めた。
越川:一次情報は全員持っていますからね。すでに発信している人に向けておすすめなのが、マルチアウトプットという考え方。他で発信しているんだったら、それをまとめて文章構造を自分で作って、メールマガとして流すというのは、0から作るよりも圧倒的に楽なんじゃないかなと思いますし、目で訴えるのとテキストで訴えるのとでは反応も変わってきます。
なお、他媒体での発信を文章として再構成しメルマガでも発信するというこの活用法は、あくまで越川氏からの提案であり、まぐまぐとしての方針として決まっているものではない。
これまでメルマガというと、ビジネスパーソンや専門家による情報発信のイメージが強かったかもしれない。しかし小島氏が思い描く未来像は、もう少し裾野が広い。音楽や絵といった非言語の表現をしてきた人たちの言葉や、まだ肩書きを持たない若い世代の日常の記録も、誰かにとっての一次情報になり得る。「クリエイターになる」というハードルを下げ、発信の裾野そのものを広げていくことも、まぐまぐが担おうとしている役割の一つだ。

誠実さと連続性――発信を一生の資産に
小島:AIの発展で誰もがテキストしやすくなったからこそ、自分の経験というのを安心して配信できるツールを提供したいと思っています。発信が一過性で終わる、SNSでバズって終わるということではなくて、ちゃんと自分の一生の資産になるようなことを私たちはしているので、ぜひ発信してくださいということを伝えたいです。
「AIの発展で誰もがテキスト化しやすくなったからこそ、自分の経験を安心して配信できるツールを提供したい」
台本のないざっくばらんな対話を通して見えてきたまぐまぐの魅力を、越川氏は「誠実さと連続性」という言葉でまとめた。「誠実さというのは、炎上リスクが少ないということ。発信者にとっては心地よい羽毛布団みたいなもので、安心できる。そしてコンテンツはコンテクストが重要なので、連続性の中で何を伝えたいかというのがポイントになる。100何文字のSNSよりも圧倒的に伝わる深さがあると思いました」
まずは購読して、どんなコンテンツが流れているかを読んでみてほしい――そんな越川氏の言葉で、対話は締めくくられた。
普段は番組を裏で支える立場の小島氏が、この日はマイクの前で自らの言葉で語った30分。そこから見えてきたのは、テキストという一見地味な手段が、経験を積み重ね、誰かに届け、そして資産として残していくための確かな仕組みになり得るということだった。SNSで話題になって終わるのではなく、一生の資産としての発信を――その呼びかけは、番組を聴いているすべての発信者、そしてこれから発信を始めようとしている人たちに向けられている。
番組概要
- 番組名:Why So Good?
- 放送局:interfm
- 放送日時:毎週木曜25:00~25:30
- 出演:越川慎司氏(株式会社クロスリバー 代表取締役)
上條美沙子氏 - ゲスト出演:小島丈典氏(株式会社まぐまぐ Creator Produce Division長)
- プロデューサー:エダコDX
- ラジオ本編はこちらから https://www.interfm.co.jp/whysogood
- interfm(東京:89.7MHz 横浜:76.5 MHz) https://www.interfm.co.jp/
- 番組TikTok(https://www.tiktok.com/@whysogood_radio)
※本記事は、トーク番組「Why So Good?」の放送内容をもとに再構成したものです









