ココロにしみる読書ノート

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つらいことが多い世の中ですから、ホッと一息ついたり、元気が出たりするような、ジーンと心に沁みる本にめぐり合いたいもの。そんなあなたにお勧めの本の書評をおとどけします。 このメルマガがきっかけになり、書評集『泣いて 笑って ホッとして…』を2007年に発刊し、それがきっかけになり月刊「宝島」誌に書評を隔々月連載し、それがきっかけになり日経ビジネス本誌&オンライン版「超ビジネス書評」に書評連載し……。 セミプロ書評ライターのお勧めを参考に、ココロにしみる本をお選びください。

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メルマガ名
ココロにしみる読書ノート
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不定期
最終発行日
2017年08月31日
 
発行部数
1,843部
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カテゴリ
アート・文芸 > 文芸 > 批評・論評

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【読書ノート】No.613 坂上遼著『無念は力』

┏━┳━┳━┳━┳━┳━┳━┳━┳━┳━┳━┳━┓第613号
┃コ┃コ┃ロ┃に┃し┃み┃る┃読┃書┃ノ┃ー┃ト┃
┗━┻━┻━┻━┻━┻━┻━┻━┻━┻━┻━┻━┛2017/08/31(Thu)

◇ 今日の一冊
  書名:無念は力
  副題:伝説のルポライター児玉隆也の38年
  著者:坂上 遼
  出版社:情報センター出版局  2003年11月刊  \1,836(税込)  415P
  ISBN:479584092X

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     庶民の哀感を描いたルポライターの「無念」を追う
    ────────────────────────

児玉隆也という伝説のルポライターの生涯を辿った評伝である。

「児玉隆也」という名前を知っている人は少ないと思うので、本書の
内容に入る前に、今日は長い前置きを書かせてもらう。


児玉隆也著『この三十年の日本人』(1975年7月新潮社刊)を手にした
のは、発刊から約2年後、僕が大学2年生の時だった。

この本を読むきっかけになったのは、学生時代の友人が勧めてくれた
ことだ。

大学に行かずに酒と本に浸かっていた彼は、この本の前にも
『龍馬がゆく』を熱く勧めてくれた。
彼の熱弁がなければ、僕は文庫で8巻もあるこの大著に手をつける
ことはなかっただろう。

その彼が、「小説もいいけど、ノンフィクションもおもしろいぞ」と
教えてくれたのが『この三十年の日本人』だ。

太平洋戦争の終結から30年の節目にあたって発刊された本書には、
学徒出陣の関係者に取材したルポ、
食糧難の時代を生きぬいた人びとのルポ、
皇室の行く末を考察したルポ等、さまざまな角度から日本人の生き方を
考えさせるルポルタージュが収録されていた。

その中で、最も有名になったのが「寂しき越山会の女王」という作品である。

「越山会」というのは、当時の田中角栄首相の政治団体の名前だ。

児玉氏は、1970年にこの越山会の金庫番である佐藤昭女史を記事にしよう
としたことがあったが、当時自民党の幹事長だった田中角栄との直接会談
を機に、取材続行を断念することになった。

その後田中角栄は首相になり、今太閤ともてはやされた時期を経て、
その金権体質が批判されるようになる。

未曾有の金権選挙といわれた1974年夏の参議院選挙後に、雑誌「文藝
春秋」は田中の金権体質の特集を企画し、1974年11月号に2人のライター
の書いた記事を掲載した。

ひとつが、立花隆氏の書いた「田中角栄研究-その金脈と人脈」、
もう一つが児玉隆也氏のルポ「淋しき越山会の女王」――児玉氏の
4年越しのリベンジ作品である。

2つの記事をきっかけに、金権政治への批判が高まり、わずか2ヵ月後の
12月9日、田中角栄は内閣を総辞職し、退陣することになる。

立花隆氏の「田中角栄研究」が田中角栄と小佐野賢治の錬金術を分析したの
に対し、児玉氏の「淋しき越山会の女王」は、越山会の金庫番といわれなが
ら、表に出ずに年間約20億円の政治資金を采配していた佐藤昭女史を話題の
中心にすえたものだった。

彼女の幼少時代の不幸な生い立ちや、結婚に失敗して新橋のガード下の
キャバレーのホステスをしていた経歴をあばき、一方で田中角栄の秘書
になることによって急速に財産を増やし、権勢をふるう現在の姿を対比
させる。

どうしてそこまで田中角栄に信頼されることになったのか、という疑問を
提示したうえで、児玉氏は、次のように答えを暗示する。

  実は私自身の記憶の中で、田中角栄の忘れられないことばがある。
  (中略)
  「財布は、身内の人間に握らせるに限る」
   二十億の政治献金の財布を握る佐藤昭は、彼にとってまさしく
  “身内”そのものなのだろう。身内は、血縁であったり、地縁で
  あったり、もっと異なる次元を意味する場合もあるだろう。

不幸な生い立ちをもちながら、何億という財産と阿諛追従(あゆつい
しょう)に囲まれた現在の彼女の姿を描いたあとで、児玉氏は、
それでも旧友たちが、

  「昭ちゃんはかわいそうに」

と言っていることを示す。

田中角栄の秘書となったことにより人生を変えた佐藤昭の半生は、
一見するとサクセスストーリーに見えないこともないが、それでも
「彼女は不幸である」と児玉氏は裁断し、「彼女の不幸は田中角栄
にも通じる」と続けた。

読者の情感に訴えたルポは、立花隆氏の理詰めのレポートと対比を
なし、大きく世論を動かすことになる。


長い前書きになってしまった。

今日の一冊『無念は力』は、この児玉隆也氏の評伝である。

第一章「雪辱」は、彼の知名度を一気に押し上げた「淋しき越山会の
女王」の取材過程を丹念に追っている。

雑誌「文藝春秋」の編集長の正式依頼を受けてから、締め切りまで
約1ヵ月しか残されていなかったこと、
取材チームを組んで手分けして取材を進めたこと、
佐藤昭の最初の夫と2番目の夫の取材に成功したこと、
田中角栄の側近が協力者としてゲラのチェックをしてくれ、「ここ
まで詳細な取材を行っていれば、つけこまれる隙はどこにもないです」
と保証してくれたこと。

極めつけは、佐藤昭と田中角栄は男女の仲であり、子供もいる、という
証言を得たことまで明かしている。

取材を終えた児玉氏は、掲載原稿を書く際に、あえて田中と佐藤の
プライベート部分(男女の仲であり、子供もいること)は書かないと
決めた。

先輩から「知っていることをすべて書き出してしまうのは愚の骨頂だ」
と学んだことを自分に言い聞かせながら、児玉氏は最終原稿を仕上げて
いく。

文藝春秋に掲載した原稿が、どれほど影響の大きいものだったかを示し
たあと、本書は第二章「貧困」で児玉氏の生い立ちに立ち戻ったあと、
新米編集者の時代、女性誌編集者時代、フリーランスになってからので
きごと、ガンが見つかってからの闘病生活、その後の早すぎる死、を時
系列に追っていく。

児玉氏の作品は、インテリが国の行く末を論じる抽象的な内容とは程遠く、
日々の暮らしに追われる庶民の哀感に訴えるものが多かった。

その作風の元をたどれば、児玉氏自身が貧乏な庶民の出だったことに
行きつく。
早稲田の第二部(夜学)に入学した彼は、大学の学費も生活費も、
自分で稼ぐしかなかった。

編集者になって、著名な作家たちと交流する機会を得た児玉氏は、
自分が社会の底辺から抜け出したことを密かに安堵していたに違い
ない。

しかし、1970年11月25日、児玉氏は二つの大きな挫折に直面する。
一つは、田中角栄との会談によって、佐藤昭の記事を断念させられたこと。
もう一つは、三島由紀夫の突然の死だった。

編集者として、三島由紀夫と信頼関係を築いていたはずの児玉氏だったが、
三島が自衛隊市ヶ谷駐屯地に乱入したことは、ニュースで知った。

三島由紀夫は、『サンデー毎日』次長とNHK社会部記者の2人だけに
事前連絡していたが、児玉氏には知らせなかった。
当時「女性週刊誌」記者だった彼は、「ジャーナリスト」よりも一段低く
扱われたのだ。

二つの大きな挫折に直面した児玉氏だったが、この「無念」をバネに
して記事を書き続けた。

フリーになったあと、「淋しき越山会の女王」を書くことで、田中角栄
へのリベンジを果たすことができた、そのわずか2ヶ月後、彼の体がガン
に冒されていることが発覚する。

半年に満たない闘病生活のあと、1975年5月22日に急逝した。

まだ38歳の早すぎる死だった。

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◇ 参考書籍

児玉隆也著『この三十年の日本人』(新潮文庫版)
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◇ 今日のひとこと

本書『無念は力』を教えてくれたのは、本を通じて知り合った友人です。

お勧めの本の話題になったとき、「田中角栄の金権追求記事を書いたあと、
早くに亡くなったライターを取材したルポが面白かった」と勧められました。

「それって、児玉隆也のことですか?」と質問したところ、
「児玉隆也を知っているんですか!」と驚かれました。

亡くなって40年以上たち、児玉氏は「知る人ぞ知る」存在になって
しまったのです。

僕が児玉氏を知っていたことがよほど嬉しかったようで、その友人は
2003年に出版された本書をプレゼントしてくれました。

『この三十年の日本人』も学生時代の友人に勧められたことを思うと、
不思議な縁を感じます。

余談になりますが、児玉隆也についての本を紹介してくれた新・旧の
2人の友人には、ひとつだけ大きな違いがあります。

学生時代の友人が大学に顔を出さずに酒と本に明け暮れていたのと
対照的に、新しい友人は毎日大学に通っています。

――大学の教員として。

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書評集『泣いて 笑って ホッとして…』発売中。
 ・本の内容紹介は http://d.hatena.ne.jp/pyon3/20070730 を参照ください。
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◆発行者:浅沼ヒロシ(1957年生まれ、東京都在住のITエンジニアです)
 ・ブログ http://d.hatena.ne.jp/pyon3/ もご覧ください。
  (身辺雑記・読書ノート等を載せています)
 ・日経ビジネス コラム「1分間で読める超ビジネス書レビュー」
  2010年11月~2011年9月 不定期連載
 ・月刊「宝島」コラム「書評アルファブロガー厳選2冊」
  2008年12月~2009年9月 隔々月連載
 ・日経ビジネスオンライン「超ビジネス書レビュー」に寄稿(2009年6月~2011年9月)
  http://qq3q.biz/osbd
 ・技術者を応援する日経BP社「Tech-On!」の書籍レビューに寄稿(2011年7月~2014年3月)
  http://nkbp.jp/pXNkEJ
 ・IT系情報サイトTechWave「BookReviews」に寄稿(2010年3月~2011年6月)
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