馬渕治好
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馬渕治好の週刊「世界経済・市場花だより」

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馬渕治好の週刊「世界経済・市場花だより」

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最新の世界経済・市場動向をさぐる「ブーケ・ド・フルーレット」(略称:Bdフルーレット)。この代表である馬渕治好が、めまぐるしく変化する世界の経済や市場の動きなどについて、高水準の分析を、わかりやすく解説します。馬渕が登場するTVや新聞・雑誌コラムなどと合わせて、当メールマガジンも是非ご覧ください。

著者プロフィール

馬渕治好

1977年 東京教育大学(現:筑波大学)附属高等学校卒業
1981年 東京大学理学部数学科卒業
1988年 米国マサチューセッツ工科大学経営科学大学院(MIT Sloan School of Management)修士課程終了

1981年に(旧)日興証券入社。1986~88年は2年間休職し、米国留学。他の期間は、ほとんど調査関連諸部門を歴任。2004年8月~2008年12月は、日興コーディアル証券国際市場分析部長を務めた。2009年1月より、独立した形で経済・市場分析業務を行なっている。

日本経済新聞夕刊のコラム「十字路」の執筆陣のひとり。
テレビ・ラジオ出演も数多い。

CFA協会認定証券アナリスト(CFA、Chartered Financial Analyst)

先進国・新興国の双方を含む世界の国々の、経済・政治情勢、株式・債券・外国為替・国際商品市場等、横串を通して、いろいろなものを見つめています。

サンプル号
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馬渕治好の週刊「世界経済・市場花だより」 
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サンプル号(2013/6/9) 「言い訳相場」が終わっても良い理由/新興国市場の売られ過ぎの解消は緩やかに

この週刊「世界経済・市場花だより」は、めまぐるしく変化する世界の経済や市場の動きなどについて、ブーケ・ド・フルーレット馬渕治好が、わかりやすく解説します。

※友人、知人の方や、同じ職場の方などで、当メールマガジンの購読にご関心がありそうな方がおられましたら、是非当メールマガジンの購読をお薦めください(無料試読期間中の「お試し」だけでもうれしいです)。


※馬渕が講師を務めるセミナーにつきましては、
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☆過ぎし花~先週(6/3~6/7)の世界経済・市場を振り返って

<市場の振れの本質は材料より心理、「言い訳相場」はそろそろ終わってもいい>

(まとめ)

前号のメールマガジンでは、「世界的に、短期的には落ち着きのない、心配性気味の相場付きになりそうです」と書きましたが、実際に波乱展開が続いてしまいました。先週の波乱は、円相場が先導したような感があります。
日々の内外株価や為替相場の波乱については、専門家による市場解説では、それぞれの材料が説明されていますが、腑に落ちないものが多く、後付けの言い訳のように見えます。実際には、そうした材料による市場変動というより、投資家が水準観を失い、心理によって価格が振れた、ということだと考えています。
また、国内株式市場や為替市場においては、日銀の金融緩和効果への行き過ぎた期待などは既に十分剥げ落ちた、と推察していますので、株価や外貨の下落材料が後付けで言い訳されるといった「言い訳相場」は、もう終わってもいいわけだろう、と考えます。

(詳細)

前号のメールマガジンでは、「そろそろ下げ止まりとみてもよいと考えますが、短期的には、まだ投資家心理が落ち着いていないことや、傷んだポジションの整理もあって、落ち着かない相場付きになる可能性があります」と書きました。実際に前週の内外株価や為替相場も、波乱含みの展開が継続してしまいました。

先週の波乱は、特に日本時間6/6(木)夜から始まった、急速な円高がリードしたように思われます。先週1週間の通貨騰落率ランキングを見ると、対円で上昇した通貨は一つもありませんでした(全面的な円高)。そのなかで下落率が限定的な通貨をみると、ポーランドズロチ、英ポンド、チェココルナ、クロアチアクーナ、スイスフランなど、欧州諸通貨が(対円で下落しながらも)相対的には堅調でした。ユーロの対円での下落率も限定的(1.24%)でした。
一方で、下落率ランキング上位(下落率が大きかったもの)には、インドルピー、タイバーツ、ロシアルーブル、豪ドルなど、新興国通貨のなかで主要なものが、いくつか含まれています(新興国市場については、後の「盛りの花」で全体観を述べます)。

こうした通貨の動き(6/6(木)からの急速な円高と、欧州諸国通貨の堅調地合い)の背景理由としては、6/6(木)のECB(欧州中央銀行)の理事会を挙げる声が多かったです。つまり、理事会では政策金利の変更を行なわないと決定され、それ自体は事前の予想通りだったのですが、理事会後の記者会見で、ドラギ総裁が追加緩和に前向きな物言いをしなかった、と解釈され、それがユーロ圏の金利低下観測を打ち消して、ユーロを下支えした、との説明です。
この説明は、ユーロが対米ドルで上昇したことや、他の欧州諸通貨がそれに連れ高(やはり対米ドルで)したことの理由としてはうなずけるのですが、全面的な円高になった説明としては、全く理解できません。
真相は、ここ数週間生じている、日銀の量的緩和による行き過ぎたカネ余り期待(円余剰思惑)の剥落といった流れが、ECBの理事会を単なるきっかけ(たとえば米ドルを対ユーロで大きく売った投資家がおり、そのため米ドルが対円でも若干下落した)として加速し、それによって円売りポジションの投げが一気に出た、ということに過ぎない、と考えています。したがって、ECB理事会は、円高の真の理由ではなく、相場付きを解説する際の「言い訳」でしょう。

国内株価についても、6/5(水)の後場から下げが進行しましたが、これは安倍首相が講演で明らかにした成長戦略の第三弾が期待外れだったから、という「言い訳」が多いです。もしそうだとすれば、首相が講演を始めた直後に日経平均が上ブレしたのは何なのだろう、と思えますし、そもそも第三弾はこういうようなものだろう、といった観測記事は事前に多く出ていましたので、これも腑に落ちない解説です。

その後日経平均株価は、前述の円高もあってさらに下押ししました。
週末金曜日(6/7)は、午後から、ヘッジファンドで著名なジョージ・ソロス氏が、(日本株の買い場は「そろそろっす」とは言っていませんが)日本株投資を再開したとのウォール・ストリート・ジャーナルの記事が流れたことや、GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)が日本株への資産割当比率を増やす意向だと引け後に発表する、との報道がなされたことから、日経平均は持ち直し、この日はザラ場で前日比プラスになる局面もありました(引けはマイナス)。
これも実際には、心理的に株価の安値感が広がり、買おうと考えながらも躊躇する投資家が多かったところ、これらの報道が投資家の背中を押した、ということであって、真に相場を動かした材料ではないだろう、と推察しています。

このように金曜日後場は日本株は持ち直しましたが、週を通じての下落率は大きいものとなりました(TOPIXが6.94%、日経平均が6.51%)。先週の世界の株価指数騰落率(現地通貨ベース)のワーストランキングは、トルコ(イスタンブール100)が、同国内の反政府デモの影響からワースト1位でしたが、TOPIXは3位、日経平均は4位でした。

以上のように、日本株や円相場の動きは、それぞれの「言い訳」材料より、心理要因が大きい(また、波乱によるポジションの投げもあった)と解釈しています。また他国株についても、たとえば米国では、連銀が量的緩和を早期に縮小するかどうかの観測で揺れ動きましたが、これも連銀の行動が経済や市場に本当に深刻に影響する、というより、株価の高値警戒感が広がり、投資家がちょっとしたことで右往左往しているだけだろう、と思えます。

日本株や円相場については、何度か当メールマガジンで繰り返していますように、日銀によるカネ余り期待が行き過ぎ、それが剥落しているのが最近の市場波乱の理由だと考えています。
そう解釈すれば、日経平均は4/4(木)の「異次元の緩和」(少しも異次元ではありませんが)発表直後の水準である13000~13500円(4/5(金)のザラ場に13000円乗せ、4/12(金)のザラ場高値は13568.25円)まで戻っています(一時、下割れが行き過ぎましたが)。米ドル円相場も、追加緩和発表後しばらくは、概ね95.80~100円の間の往来相場で、今の円相場もそこまで戻っています(これも、先週は瞬間下ブレが行き過ぎました)。
ということは、国内株価も円相場も、行き過ぎたカネ余り期待はほぼ完全に剥げ落ちた、とも言えるので、値幅調整は十分だと見込みます。短期的な心理面の動揺はまだ残るとしても、国内株価や外貨相場(対円)のさらなる下ブレの余地は、かなり限られていると予想されます。したがって、下値の堅さが確認できてくれば、心理的動揺による「言い訳相場」は終わってもいいわけだと考えています。

なお、国内新興市場の株価下落が大きく報じられています。たとえばマザーズ指数は、先週1週間だけでも24.4%も下落しました。ここだけが取り上げられ報じられると、東証一部上場銘柄等に比べ、国内新興市場では深刻に悪いことが起こっている、といった印象が広がりかねません。
ところが、マザーズ指数の現水準(6/7終値が670.15)は、4/17(水)の水準にほぼ相当します。つまり、日経平均株価が4/5(金)~4/12(金)辺りの水準まで下げてしまったのに対し、大きな流れで言えば、マザーズの方がまだ調整が若干ながら浅いと言えます。つまり、マザーズ指数などは、5月途中にかけての上げが大きかったので、その後の下げも大きかった、つまりいわゆる「行って来い」の幅が大きかっただけだ、とみる方が正しいでしょう。

さて、先週の米国では、注目されるマクロ経済統計の発表が多かったですが、内容はまちまちでした。たとえば予想より強かったものとしては、6/5(水)発表の5月のISM非製造業指数(事前予想の53.5に対し、53.7)などがあり、弱かったものとしては6/3(月)発表の5月のISM製造業指数(事前予想の51.0に対し、49.0)などがありました。

最も注目された5月の雇用統計が、6/7(金)に発表されましたが、強いとも弱いとも言い難い内容でした。5月分の非農業部門雇用者数前月比は17.5万人増と、事前予想の16.3万人増を上回りましたが、4月分が16.5万人増から14.9万人増に下方修正されたうえ、失業率は4月の7.5%から5月は7.6%に上昇しました。
このため、発表直後の米ドル相場は、どちらに動いて良いのかわからない、といった気迷いの上下動を見せました。ただしその後は、為替市場では円安が進みました。米国の統計発表を受けてのことですから、米ドルが全面高、あるいは米ドルが全面安、ということであればわかります。しかし米ドルは諸通貨に対してまちまちの動きで、円が全般的に安くなった、という動きでした。
この円の全面安の「言い訳」としては、後述のように米国株が上がったので、いわゆる「リスク回避のための円高」が後退した、という説明があるのかもしれません。しかし筆者はそれよりも、日本のカネ余り期待の剥落が十分進み終わったので、何かがあれば円安に跳ね戻ってもよい水準であり、たまたま雇用統計の発表がそのきっかけになったのだろう、と考えています。

米国株は、雇用統計を受けて、上げ足を強めました。このため1週間の騰落率としては、ニューヨークダウ工業株指数もS&P500指数も、上昇して週を終えています。最近の米国株式市況は、弱い経済統計が発表されると連銀の緩和が継続するとみて好感し、強い経済指標だと緩和が早期に打ち切られるとみて失望する、といった、おかしな展開を見せていました。
今回の雇用統計は、前述のように強いとも弱いとも言い難い内容だったので、連銀の緩和が早期に打ち切られるほど強くはないが、景気を心配するほど弱くもない、と市場が都合よく解釈し好感したのでは、と「言い訳」できます。実際には、米国株式市場における高値警戒感も一巡したので、自律反発した、というところでしょう。

なお、前号の当メールマガジンでは、雇用統計の内容が強ければ、連銀が6/18(火)~6/19(水)のFOMC(連邦公開市場委員会)で、債券買い入れ額の一部縮小など、市場に対するジャブを打ってくるのではないか、と述べました。しかし、今回の雇用統計の内容は余り強くなかったので、ジャブは打たれず、9月のFOMC辺りが、買い入れ額縮小の検討の始まりになるのでは、と予想しています。


☆来たる花~今週(6/10~6/14)の世界経済・市場の動きについて

<底値固めから上値をうかがう展開か、ただし本格上昇まで間があろう>

(まとめ)

先週末の雇用統計を受けた市場の動きが、米国株高、円安となったため、週明け月曜日(6/10)の日本の株価は、上昇して始まりそうです。これが調整一巡感をもたらせば、国内株価は底値固めから上値をうかがう展開が期待されます。また為替市場においても、円安に向けての動きが続く可能性があります。
しかし完全に心理的な動揺や投資家のポジションの傷みが解消されたわけでもないでしょうから、一気に明るさを増す展開がやってくるには、もう少し時間がかかりそうです。

(詳細)

前述のように、先週末(6/7、金)の米国市場では、米国株高、円安が進みました。同日、シカゴの日経平均先物(円建て)は13220円で引けており、週明け月曜日(6/10)の国内株価は大きく上昇して始まりそうです。また、米国市場で円安に戻した地合いが、週明けも持続する可能性があります。

こうした週初の動きから、国内株安と円高は一巡したのではないか、との見解が広がれば、最近まで主として心理要因から動いていた相場は、同じく心理的に株高・円安へと反転する展開が期待されます。
また、単に心理が振れ戻る、というだけではなく、「過ぎし花」で述べたように、国内株安と円高の幅は十分だと考えるので、株高・円安の動きが再開されても、おかしくはありません。
加えて実体との比較でも、東証一部全体の予想PER(株価収益率、株価÷一株当たり利益)は、6/7(金)で13.4倍と14倍を割り込んできており、株価下落前の5/17(金)の16.4倍から低下して、割高感は薄れてきています(PERは週末値、予想一株当たり利益は、各アナリストの予想値をブルームバーグが集計したもので、新聞等に掲載されているものとは異なる)。

したがって今週が、明るい流れが再開される第一歩になりうる、と見込んでいますが、市場心理がまだ完全に落ち着いたわけではないでしょう。また、少数派であったとしても、株価や外貨の高値で思い切り買ってしまい、そうしたポジションを投げなければいけない投資家もいるものと推察されます。
材料面でも、大きく株高や円安に貢献しそうなものがすぐにはないため、国内株安や円高が止まったとしても、力強く株高や円安が再度進展し始めるには、まだ少し時間がかかるものと考えています。

こうしたなか、日本国内のイベントとしては、まず6/10(月)~6/11(火)に、日銀の金融政策決定会合が開催されます。
一部では、銀行に対する資金供給オペレーションの期限を延ばし、3年物などの資金を供給する、という観測が浮上しているようです。しかし特に現在、銀行が長めの資金調達に苦労しているような情勢でもありませんし、日銀内部の議論も煮詰まっていないでしょうから、今回の金融政策決定会合では、金融政策の変更は何もないものと予想します。

6/14(金)には、成長戦略と、財政等の基本方針(いわゆる「骨太の方針」)が閣議決定される予定です。一部新規の項目が追加される可能性は否定できませんが、大枠は既に報じられているような内容であると見込まれ、市場に大きな影響を与えることはないでしょう。

海外では、余り大きな材料はありません(新興国絡みのところは。後で述べます)。


☆盛りの花~世界経済・市場の注目点

<新興国市場全般に売られ過ぎの部分があろうが、その解消には少し時間がかかりそう>

このところ、新興国の株価や通貨相場に、不振さが目立ちます。その背景として、それぞれの国の個別の要因はあります。

たとえば、豪ドルが先週は下げ足を強めました。まず6/4(火)の豪州準備銀行の理事会では、金融政策の変更はありませんでしたが、声明で先行き利下げを行なう可能性が示唆されました。加えて、6/5(水)発表の1~3月期の実質経済成長率は、前期比ベースで0.6%増と、市場予想の0.7%増を下回りました(とは言っても、予想とのずれはわずかで、成長率はプラスなのですが…)。
豪ドルが調整している背景としては、輸出のお得意様(仕向け先国別で第一位)の中国経済の減速懸念と、それに伴う国際商品市況安なのですが、金先物や銅先物は、低位ながら安定して推移しているため、豪ドルの下落は急過ぎるように思われます。
前号の当メールマガジンでは、シカゴの豪ドル先物のポジションについて触れましたが、豪ドル先物(対米ドル)残高の売り越し幅はさらに拡大し、6/4(火)時点で58550枚(1枚は10万豪ドル)の売り越しとなっています。これは2006年初から見る限り、最高記録の売り越し幅です。今後は、売りの買い戻しがむしろ入るのではないか、と考えられます。

ブラジル株も不振で、米国の雇用統計を受けて米国株が上昇した6/7(金)でさえも、ブラジルボベスパ指数は前日比で2.39%も下落しました。これは格付け会社のS&Pが、ブラジル国債と、ブラジル石油公社(ペトロブラス)、ブラジル中央電力の格付け見通し(格付けそのものではない)を引き下げたためです。
その前から、ブラジル経済は、成長鈍化とインフレ高進の板挟みにあっている、との観測が広がり、ブラジル株やレアル相場は冴えない展開を続けてきました。
ただしインフレの背景には、農作物の不作による食料価格の上昇といった要因が大きく、農作物の生産が回復すれば、ある程度のインフレの緩和が期待されます。またこれまで不振であった輸出にも、回復の兆しが表れています。このため、現在のブラジル株やレアル相場は、下げ過ぎの部分があると考えます。

トルコの最近の反政権デモは、もともとはイスタンブールの再開発に反対する小規模なデモであったものが、警察の対応が強硬であったことから国民の反発を招き、各地に拡散して大規模な反政権デモに拡大してしまったものです。当初は動きの鎮静化が伝えられた時もありましたが、長期化しています。
6/14(金)~6/16(日)は、スイスでオリンピック委員会連合総会が開催され、そこでイスタンブールを含む各都市が、招致のためのプレゼンテーションを行なう予定です。おそらく今回のデモを受けての感触が伝わるでしょうから、イスタンブール招致の可能性が低下したとの観測が広がれば、トルコの株価やリラ相場に悪影響が生じる可能性はあります。
また今週は、6/11(火)に、トルコの1~3月期のGDPが発表されます。前年比の実質経済成長率は、昨年10~12月は1.4%増でしたが、1~3月は2.3%増と伸びを高めると見込まれています。この通りであれば、相場の波乱は避けられるでしょうが、予想を下回らないかどうか、市場は不安を持って注目すると考えられます。

このように、他新興国も含め、それぞれの国の個別の事情はありますが、新興国全般について考えてみると、米国など先進国に投資資金が向かっても、新興国に余り向かわない、といった傾向が、今年は続いています。これは、世界の投資資金が、株式投資などのリスクを取ろうとしてはいるが、まず安心感の強い先進国から、といった状況に止まり、新興国の株式や通貨への投資まではリスクを取り切っていない、ということだと推察されます。
徐々に世界の経済と市場が落ち着きを強めてくると、新興国の株価や通貨相場が追いついてくる、という展開が期待できます。ただし一気に投資行動を積極化する材料にも乏しいので、そうした明るい展開は、急速ではなく、徐々に明らかになってくるものと見込んでいます。


☆理解の種~世界経済・市場の用語などの解説

<実質金利を巡る議論>

お客様から、「名目金利が上昇しても、実質金利が上昇しなければ、景気への悪影響が少ない」といったような議論があるが、何故か、というご質問をいただきました。下記は、その回答です。

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教科書的になりますが、金利の上下が経済に影響を与える、あるいは金融政策上、金利を意図的に上下させて経済に影響を及ぼす、といったメカニズムは、
金利が下がる→貸出が伸びる→その資金を使って景気が活発化する
金利が上がる→貸出が減る→景気が鎮静化する
といった形になります。
そこで、金利水準が上がると貸出が減るかどうかは、それぞれの資金の借り手が、金利コストを払ってまでお金を借りるかどうか、すなわち、借り入れ資金を使って金利コストを上回る利益が引き続き得られるかどうか、によります。

企業の設備投資が一番直接的な例ですが、2%の金利コストを支払って、設備投資により、投資資金に対して4%の利益が上がり続けるのであれば、資金を借ります。この金利が3%に上がっても借りるでしょう。しかし金利が5%になったら、借りないでしょう。

個人の借り入れ判断の場合は、これほど直接的ではありません。個人は、耐久消費財(自動車など)や住宅購入の場合に資金を借りたりしますが、自動車や住宅からは、通常金銭的なリターンは生じません(家を買って他の人に貸す場合は別ですが)。
この時はどう考えればよいかというと、現在や将来の所得と比べて、金利コストが負担にならない程度だと思えば借りるでしょうし、金利が上がって、自分の所得と比べて利払い負担が厳しいと考えればやめるでしょう。

さて、企業や個人が借り入れるかどうか判断するのは、実際にはそれぞれの企業の投資案件や、個人の所得環境によるので、個別事情が大きいです。ただし経済全般を考えれば、物価が上昇すると、名目ベースの投資収益や個人の所得が水膨れします。このため、名目金利の上昇分が、全て物価上昇によるものであれば、企業や個人の借り入れ判断には影響しません。
というのは、設備投資について、
金利コスト:1%
新設設備の収益率:3%
で借り入れを行なおうと考えていた案件が、物価上昇率が2%高まることで、
金利コスト:1+2=3%
新設設備の収益率:3+2=5%
となっても、借り入れするかどうかの判断は不変だからです。

このため、名目金利の動きのうちで、インフレ率の変動による部分は景気に対する影響はない、として、実質金利=名目金利-インフレ率、に着目すればよい、という考え方があるわけです。したがって、名目金利が上がっていても実質金利が上がっていなければ、景気を心配することはない、という話になりますし、ましてや実質金利がマイナスだとすれば、かなり景気刺激的だということになります。

ここで議論があるのが、インフレ率は何を使うのか、ということです。細かい部分はさておくと、次の2つがあります。

1)実際の物価統計
通常は消費者物価(生鮮食品を除くかどうかは別として)を使うことが多いです。GDPデフレータの方がよい、という議論もあります。
実際の物価統計を使うメリットは、実績値なので、異論をさしはさむ余地が少ない、という点があります(それでも、物価指数の品目のウエイトがおかしいとか、統計の不備があるとか、文句を言う人はいくらでも言いますが)。

2)期待インフレ率
企業も家計も、借り入れの判断を行なう場合は、理論上は、これまでのインフレがどうであったかではなく、これからどうなるか、を考えて判断するはずです(あくまでも、理論上は)。とすると、インフレの実績値ではなく、インフレの予想値を、実質金利の計算上使うべきです。
そうした予想値は各人の頭の中にあるのでわかりませんが、期待インフレ率の代理として良く使われるのが、債券市場における普通国債と物価連動国債の利回り格差(国債利回り-物価連動国債利回り)です。
物価連動債は、物価上昇時に償還元本が並行的に上昇するなどして、物価上昇による目減りから守られていますので、両者の利回りの差は、市場におけるインフレ期待を示している、と考えられます。
ただし市場価格は、特に短期的には、思惑や需給といった要因でぶれたりしますので、
これを期待インフレ率である、と確信することにはためらいも感じます。


☆脇道の花~道草の話題

<空梅雨?>

関東地方は、既に梅雨入り宣言がなされていますが、雨の降る日は少ないです。北陸の友人から聞いたところでは、梅雨入り宣言自体されていない、とのことです(確認していないので、事実かどうかは知りません)。

仕事などで外出する際は、雨だと面倒くさいので、雨が降らないのはうれしいのですが、農作物への影響は大丈夫か、夏場の水源は大丈夫か、と、いろいろ気になります。消費の面でも、ビールは売れるが傘は売れない、など、様々な報道が増えているようです。
6月のカレンダーの題材と言えば、カタツムリとアジサイなので、雨がないのは季節感に反するような気もします。

科学技術が進んでも、天候はどうしようもないですね。逆に天候が思いのままになるのもつまらないですが。


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2017/10/29 「世界経済・市場花だより」第331号 日本株の上昇が世界でも目立った/年内警戒シナリオを堅持
2017/10/22 「世界経済・市場花だより」第330号 日本株は上昇持続した/目先はともかく、引き続き警戒すべきと考える
2017/10/15 「世界経済・市場花だより」第329号 日本株は大きく上伸/まだ日本株が上伸する展開はありうるが、年内に世界市場は波乱へ
2017/10/08 「世界経済・市場花だより」第328号 米経済指標と減税案進展期待が米株を押し上げたが/国内株は内需を見極めつつ一休みか
2017/10/01 「世界経済・市場花だより」第327号 意外と円安ではなく、内外株式相場の頭が重い面も/今後の市況は膠着ないし軟化か
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