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成功する者はみんな「ハッタリ」を言う。有名起業家に学ぶ知恵と戦略

 経営者なら誰もが頭を抱える「マンネリ化」。でもいざ新しいことをやろうとしても何をどうしたらいいのかわからない…。メルマガ『戦略経営の「よもやま話」』では、誰もが知るカリスマ起業家たちの言葉を例に挙げ、経営者の持つべき「知恵」をわかりやすく解説しています。

「知恵」のあり方 

すべては流転するということを、ホンダの名参謀であった藤沢武夫氏は「万物流転の法則があり、本田技研が生まれてくる余地があった。この掟がある限り、大きくなったものはいずれ衰えていく」と言っています。

奇しくも同じことを松下幸之助さんは「古きものが滅び、新しきものが生まれるということであります。これは自然の理法 」と言っています。

企業の安泰は今までと同じことをなぞるだけでは適わないことは当然です。とは言うもののどのように変化したらよいかは、思案の外です。

このことに解答を与えるのは「知識」だけでは不足です。このことに解答を与えるのは「知恵」であり「戦略」です。

ところが、この「知恵」や「戦略」は一筋縄では行きません。少し大げさに言うと、「知恵」はその人に大きな視野を開かせます。「ビジョン」という「知恵の啓示」は、知性のレベルを超えて行きます。

松下幸之助さんは電車が傍を通る一瞬に、電気の時代を覚醒させました。本田さんは、自動車が吐出す排気ガスの匂いに魅せられています。孫さんは、プリント基板のなかに未来のビジョンを予感したようです。

到達のビジョンの予感を見ることができれば、現実のあらゆる困難を一つの試練としてチャレンジできるのでしょう。成功に至る道は現実であるだけに、よくこんな険しい体験を耐えられるのだろうと驚嘆しかありません。けれど成功者は、悲惨であっても、いつもここ一番の楽観があるようです。

大きな夢」と「揺るがない信念」には、すべての人が魅力を感じるオーラがあります。自分ができなくとも、一緒にいて参加したい願望が生まれます。現代の経営者には「カリスマ」性は必要ないとドラッカーは言っていますが、「カリスマ」には人生を預けたいとも思わせるものがあります。

「カリスマ」は思い切った「ハッタリ」を言います。孫さんは、事業始めの時にアルバイト社員を前に「1兆2兆の事業をする」と言って、そこにいた社員がすぐに辞めていったそうです。しかし、その事業が始まった時から孫さんの中では到達の覚悟がビジョンとしてありその過程を歩むことになりました。

大成者の作法では、最初から大きな成果を目指します。ここにすべての思考実行集約します。大きく大成が約束された事業を直観しているので、賭けることに悔いはないということでしょう。安藤百福さんは、寒空の闇市で並ぶ人を見て「即席麺」に賭けました。

作法の2は、考えて考えて考え抜くということです。安藤さんは「考えて、考えて、考え抜け。私が考え抜いた時には血尿が出る」と言っています。同じことを、松下幸之助さんは「小便に血が混じって赤くなる。そこまで苦しんではじめてどうすべきかという道が開けてくる」と言っています。

それを受けて、「強い熱意情熱があれば、願望は潜在意識浸透して行き、実現する方向へと身体が動いていって成功へと導かれる。」と京セラの稲盛さんは述べられています。これは、稲盛さんの心の師匠であった松下さんの「まず願うことですな。願わないとできませんな」の言葉がはじまりです。

次ページ>>理想のマネージャー像は「能力」があり「野心」がないこと

「起業」の知恵 

作家の林真理子さんには「野心のすすめ」という本があります。野心とは「分を越える(ように見える)大きな望み・たくらみ」とあり、林真理子さんは最初コピーライターとして名を成しましたが、さらに野心を持ったがため夢である「直木賞」を受賞するに至りました。屈辱感をバネにした野心でチャレンジしたから受賞できたと述べています。

林真理子さんは「この今の舞台」から「今でない、悲願の舞台」にジャンプを決行したのです。ここで大切なのは、「屈辱感」と「野心」を相乗効果作用としての大きなエネルギーとしたことで、このことなくして「成功のゴール」に向けての弛まぬ「地獄の特訓」を自分に課すことは不可能です。

私見ですが、裕福な家庭が崩壊して貧乏のどん底に落ち込んでしまったとか、失恋の大痛手を味わったとか、林さんのように屈辱を味わったとかが心に「野心」に火をつけることもあります。その一方で、子供の時からの夢とか尊敬する人から聞いた一言とか「感動」が創造的な野心に火を灯すこともあります。

少し脱線して軍隊の参謀本部について話題を移します。もともとドイツの参謀本部が始まりですが、ここでは理想の参謀像が定義されています。それは「野心」と「能力」を基軸とした評価分類で、もっとも理想とされる参謀が意外なモデル像「能力があり」『野心がない』者としています。

このことは『野心』とは何かを、なんとなく明らかにします。「参謀」に求められるのは「機能」ですが、「機能」が「思惑」を持つと誤ります。逆説になりますが、経営者にもっとも必要なのは「能力」つまり「機能」では事足りなくなく「野心」という「炎」がなければ始まりません。

少し付け加えますが、経営者に求められる野心と参謀である管理者や専門家に求められる貢献は真逆です。管理者や専門家に求められる貢献は「匠」や「コーチング」への向上心で、一番困る組織を機能不全に導き害をなす「権力欲・物欲」への野心です。ドラッカーは、マネジャーに必須の資質は「真摯さ」だと言っています。

そうしたら「野心」は社会に役立たないのかということになります。稲盛さんは「小善は、大悪に似たり、大善は、非情に似たり」という言葉をよく使われるそうです。鍵は「大善」をなす「野心」であり、さらに「大善」をなすには「小善」ではなく「非情に似たり」の人を育てる厳しさが求められます。

林真理子さんの「作家の地位」に登りつめる話に戻します。ここには、「今でない、悲願の舞台」に至るための方程式があります。そのキーワードは「野心を持つこと」「舞台転換をはかること」「光る知識のために集中投資をすること」「一番にふれること」です。ここにこそ「今」と「未来」を断絶させる成功の知恵があります。

「一番にふれる」ことについて、ソフトバンクの孫さんの言を聞きます。「組む以上はナンバーワンのところと最初からがっちり組む。そのために全ての精力をつぎ込む。組むことに成功すれば、あとは黙ってもすべてがうまくいく」この知恵でもって、成功の方程式をすべて満たされることになります。

次ページ>>知恵の巨人から学ぶ、知恵を発揮する方法

「知恵」の巨人たち

基本戦略は経営者の持つ知恵に導かれます。経営者に知恵の力量がなければ、企業が正しい方向に向かえません。知恵には機軸が必要で、マーケティング「私の顧客のより以上の願望に奉仕する」、イノベーション「知恵によりその方法を発明・発見する」です。知恵の巨人たちからその知恵の発揮の仕方を見ていきます。

カッコーよく言ったあとに付け加えなければならないことがあります。経営は現実の環境の中にあり、生き残らなければなりません。生き残るためには、最善の知恵を絞り多くのリスクを賭け更なるチャレンジをしなければなりません。そのためには利益を得なければならず、ここも「」になります。

 

<鈴木敏文さん>

セブン&アイ・ホールディングスの鈴木敏文さんの他に類を見ない知恵の出し方と、その実行に際しての実利的な冷徹さは特異です。コンビニへの進出や、POSの導入、業務改革での在庫削減、ロス対策で、その格闘の仕方は、制約条件を一切無視して正しいと論理展開すると核心に切り込んでいって「あるべきよう」に現実的に処理していくようです。

 小売業の範疇を超えてコンビニエンス(利便性)に焦点を絞り消費者のニーズに応えて、POSは売れている商品を単品で明らかにするだけでなく商品企画の仮説検証のツールとし、業務改革では売れ筋商品の集約化で在庫を減らしかつ商品回転率を高めて無駄な商品投資を削減をはかっており、すべては顧客視点の正統の論理発想を行っています。

 

<孫正義さん>

孫さんは自分の会社のことをベンチャー企業だと言っています。ベンチャー企業だといえば、思い切りのリスクを恐れないイメージです。孫さんは確かに思い切りのリスクにチャレンジに賭けてジャンプします。しかし、決して能天気なマネジメント思考を取っていません。自身が論理構成した「孫の二乗の法則」でそのことを示しています。チャンスを生むためには、一番最初にグローバルスタンダードになれかつ一番になる機会にチャレンジしなければなりません。しかし、本体が破たんしないようにもしなければなりません。合理的なリスク・ヘッジとして、買収したボーダーフォンは別会社です。人材育成・獲得機関として、「ソフトバンクアカデミア」を開校しました。

 

<藤澤武夫さん>

ホンダの藤澤武夫と言う名前は決してメジャーではないのですが、そのロマンチシズムの「非情似たり」の知恵にはアートがあります。現実の企業経営の中で「ええカッコーでやろう」するなら、余計な知恵の負担を背負ことになりますが、けれど「独自の強み」も生まれます。藤沢さんの幸運は、最高のアートの素材となる本田さんを得たことです。

 技術知識)こそホンダの命です。自動車が好きで好きで仕方なかった本田さんのスピリッツを引き継がなければ企業は存続しません。それを実現させたのが、「専門家」が主人公の本田技術研究所の設立です。また、経営のスピリッツを継承させたのが「役員の大部屋制」です。

 

<ジャック・ウェルチ>

GEというアメリカの超一流の企業名ましてやジャック・ウェルチの名前は日本での認識があまりないのですが、その知恵は突出しています。ジャック・ウェルチは「価値観」を最も重視し、共有できない者は能力があっても最上の評価をしません。その価値観とは何か「一番かもしくは2番」です。「一番かもしくは2番」になるために余計なものは要らず、そのためにあらゆる方策を、ただそれのみに焦点を絞って実行します。一番不要なものは、官僚と多すぎるスタッフと働く気のない人たちです。要るのは一番になる事業と、すべての従業員の知恵とやる気とその協調です。ただ知恵不足なのか、ファイナンス事業ではヘマをしたようです。

image by: Shutterstock

 

戦略経営の「よもやま話」
著者/浅井良一
戦略経営のためには、各業務部門のシステム化が必要です。またその各部門のシステムを、ミッションの実現のために有機的に結合させていかなければなりません。それと同時に正しい戦略経営の知識と知恵を身につけなければなりません。ここでは、よもやま話として基本的なマネジメントの話も併せて紹介します。
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