ステーショナリーディレクターとして知られる土橋正さんが、最近気に入っている文具とは? 土橋さんの無料メルマガ『文具で楽しいひととき』では、国内の革製品ブランド「ANDADURA(アンダデューラ)」が作った、ふっくらとしたフォルムが独特なペンケースが紹介されています。
「ふっくらとしたペンケース」 ANDADURA ペンケース
紙は簡単に折ったり、切ったりができ、逆に、鉄はおいそれとは曲げられない強さがあったりと、それぞれの材質には、それならではの素材の力というものがある。
このペンケースを見たとき、革という素材の力をとても感じた。
ANDADURA(アンダデューラ)のペンケース。
ANDADURAは以前、独特なフォルムのコインケースを紹介したことがある。
そう言えば、あのコインケースも、革でこんなフォルムも作れるんだと素材の力を感じた。
今回のペンケースでは、革が持つ柔軟性に加え、復元力という点も認識させられた。
外観としてはジッパーで開閉する、それ自体はよく見かけるタイプだ。
ただ、このペンケースの中には一本もペンが入っていない。
それなのに、まるでたくさんのペンを詰め込んだかようにパンパンに膨れあがっている。
膨れあがりすぎて、ペンケースが少々反り返っているくらいだ。
ジッパーをスライドさせて開けてみる。
すると、抑えつけられていたものが自由を手に入れたかのように、ペンケースの口がじわりじわりと広がっていくのだ。
ペンは一本もなく、言わば空気しか入っていないのにパンパンにふくれていた理由は、ペンケースの口がもともと広がるように縫製されているからだ。
そのため、ジッパーを閉めると口が広がろうとする力が働いて、あの絶妙なハリを生み出していたという訳なのだ。
考えてみれば、ペンケースはジッパーを開いたら、次にすることは、中のペンを取り出すことである。
これまではジッパーを開いて、その口をグワッと手で広げて、ペンを取り出すことが多かったように思う。
この「グワッ」がなければ、ペンへのアクセスもコンマ数秒速くなる。
ANDADURAのペンケースはジッパーを開けると、さぁ、どうぞペンをお取り下さい、とペンケースが語りかけてくれるようでもある。
ANDADURAでは、このペンケースの他に、財布やカードケースなど色々なレザープロダクトを展開している。
改めてそれらを見てみると、そのほとんどが同じようなふっくらとしたハリがある。
閉じている時はふっくらと美しく膨れあがっていて、開けると中のものが取り出しやすくなる。
ANDADURAのデザイナー山本祐介さんは、革の持っている素材の力をうまく引き出す人だと感じた。
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『文具で楽しいひととき』
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