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安倍総理「保育士の給料を上げる」宣言は、なぜ賞賛されるのか?

「保育園落ちた日本死ね!!!」で再燃した待機児童問題。その原因の1つに深刻な「保育士不足」があります。無料メルマガ『ロシア政治経済ジャーナル』の著者・北野幸伯さんは、安倍総理の「保育士の待遇改善を急ぐ」との宣言を評価するとともに、実際にロシアで体験した恐ろしい実体験を交えながら「日本の未来を守る保育士を守り、育てよう!」と呼びかけています。

安倍総理、「保育士の給料を上げる!」宣言

安倍総理が、「保育士の給料を上げる」ことを約束されました。

保育士の待遇「今春にも具体的な改善策」 安倍首相

朝日新聞デジタル 3月11日(金)12時20分配信

 

安倍晋三首相は11日の参院本会議で、待機児童解消に向けた保育士不足への対策として、保育士の待遇改善の具体策を今春に示す方針を明らかにした。

 

「保育園落ちた日本死ね!!!」と題した匿名ブログに端を発した一連の問題を受け、首相が給与面での保育士の待遇改善に踏み込んだのは初めて。

これは、メチャクチャ「良いこと」だと思います。なぜでしょうか?

「ソ連崩壊後」のロシアで見た惨状

私が「賛成」したり「反対」したりするのは、「論理」もそうですが、「実際に見たこと」がベースになっていることが多いです。例えば、私は「3K移民の大量受け入れ」に昔から反対しています。これは、ロシアが「3K移民大量受け入れ」で大変なことになったのを、この目で見ているからです。

今回は、「保育士の給料を上げる」という話ですが、これに関連して。

1991年12月、ソ連が崩壊しました。翌92年は、2,600%のインフレでした。これは、物価が1年間で「26倍になった」という意味。別の言葉で、「貯金の価値が1年間で26分の1になった」。たとえば、1億円貯金があった。その価値は1年後380万円相当になってしまった。国民怒りますね。

その後、ロシア国内は大変なことになっていきます。もっとも「弱者の立場」におかれたのは、

・警察官
・軍人
・教師
・医者
・保育士

などでした。ロシアは、ソ連時代「共産国家」。全国民が公務員」でした。92年から急激な民営化」が行われていきます。しかし、上に挙げた7つの職種の方々などは、かわらず国の管轄下にある(今では、民間の学校、病院、幼稚園、保育園もあります)。ところが、ソ連崩壊で国に金がない。金がないから、予算を大幅に減らす。結果、彼らはとても「貧しく」なってしまったのです。

きれいごとは抜きにして、貧しさは、一部の人を悪に駆り立てます。警察官は90年代、外国人を見つけると、片っ端から「職質」していました。法的にちゃんとした身分の人でも、イチャモンをつけ、「拘留するぞ!と脅し事実上カツアゲ」をしていたのです。私も、何度か止められ、金を巻き上げられました。知り合いのベトナム人は、1日に3回も止められ、家に帰るまでに、「財布が空になった」と嘆いていました。今はずいぶんマシになりましたが、90年代、外国人はロシアの警察官をとても恐れていたのです。

軍人の汚職も、話題になりました。記憶に残っているのは、「将軍が、兵士たちに家を建てさせていた」という話。もちろん、「タダ働き」です。病院に行くと、「賄賂を渡さなければ見てもらえない」ような状況になりました。学校や幼稚園保育園は、金がないので、さまざまな口実を見つけ、親にお金を請求せざるを得ない状態になりました。

ロシアは90年代こんな状況でしたので、ソ連時代「自由」「民主主義」にあこがれていた人たちも、一瞬で幻滅したのです。そして、国民は「秩序」と「安定」を求め、KGB出身のプーチンを心から歓迎しました。

私は90年代のロシアを見て、心から思いました。

・警察官
・軍人
・教師
・医者
・保育士

などなどが貧しくなると、「国家はボロボロになる」と。

「保育士」は「聖業」

ちょっと極端な話でしたが、国は「保育士」の皆さんを全力で大切にすべきです。まず、お母さんは、お子さんを保育園に預けることで、安心して仕事をすることができます

2番目に、保育所があると、お母さんは幸せでいられます。私も2人子供がいるのでよくわかります。子育ては、「喜びいらだちが共存しています。子育てにかかわる人が多いほど、喜びは増え、いらだちは減っていきます。一番大変なのは、お母さんが事実上1人で子育てしている場合。これは、大変なストレスです。お父さんが子育てに参加し、おじいちゃん、おばあちゃんが子育てを手伝い、保育所にも手伝ってもらう。こういう状態なら、お母さんは、喜びに満ちて子育てをすることができるでしょう。お母さんが幸せであれば子供もきっと幸せであるに違いありません。

第3に、保育士の皆さんは、「日本の未来を育てている」ということです。大げさではありません。保育士さんが預かっている子供たちはやがて成長し、大人になり、仕事をするようになるでしょう。

その保育士さんが、長時間労働で、安月給で、「あ~、しんどい! なんで俺は、こんな安月給で、うるさいガキの相手しなきゃあならねえんだよ~」なんて心の中で思っていれば? そんな人に、大切な日本の未来を預けたくないですね。そうではなく、「私は、日本の将来を担う子供たちを育てている。責任重大だ。大切にこの子たちを守っていこう!」という志ある人に見てもらいたい。

というわけで、保育士はまさに聖業」。国は、「十分な給料」で、保育士さんを守るべきでしょう。ちなみに保育士さんの平均年収は、310万円ほどだそうです。月額26万円弱ですね。正社員の平均年収は、2015年時点で415万円だそうです。ですから、保育士さんの給料も、正社員の平均年収並に、徐々に引き上げていく必要があるでしょう。

ちなみに、日本の就労人口の約4割を占める非正規社員。平均年収は、約170万円だそうです。安倍総理のイニシアチブで、保育士さんたちの待遇を改善する。その後、非正規社員の人たちに、「勉強して保育士になりませんか?」と呼びかければ、「私もやってみようかな」という人もかなりいるのではないでしょうか?

というわけで、「保育士日本の未来を育てる聖業」。政府は、是非待遇改善に、取り込んでいただきたいと思います。

image by: cowardlion / Shutterstock.com

 

ロシア政治経済ジャーナル
著者/北野幸伯
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