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ブックオフ、深刻な赤字転落。日本の「古本屋」はもうダメなのか?

電子書籍の普及やオークションサイトの利用者が増加したことにともない、中古本の買い取り業者などは逆風にさらされています。そんななか、上場以来初の赤字を計上した「ブックオフ」が立て直しを図るために動き出しました。今回の無料メルマガ『MBAが教える企業分析』で、詳しく紹介されています。

生産性と回転力

2016年3月期に04年の上場以来、初めての赤字を計上し、立て直しを図っている企業を分析します。(最後にまとめ解説もあります)

ブックオフ(リユースショップ)

◆戦略分析

 

■戦場・競合

・戦場(顧客視点での自社の事業領域):古本屋からリユースショップへ転換中

・競合(お客様の選択肢):Amazon、ヤフオク、ハードオフなど

・状況:中古本市場は縮小傾向にあるようです。

■強み(古本事業)

1.気軽に入れる

・立ち読みOK
・コンビニのような存在
・店内は明るく清潔感がある

2.行くたびに新しい発見がある

・本を選ぶ楽しさがある
・買取した商品はその日に陳列

3.中古だけどキレイ

・書籍研磨機で削り、特殊洗浄液でキレイに拭いてから陳列

⇒上記の強みを支えるコア・コンピタンス

★独自のオペレーションシステムと人材育成の仕組み

・買取時のシンプルな査定や販売時の値付けの負荷軽減などにより、オペレーションの単純化を実現

・独自のキャリアパスプランにより、各スタッフがそれぞれの能力に応じた目標に対して、何をがんばればいいかが明確

→上記のようにオペレーションの単純化とスタッフの強化による高い労働生産性があるからこそ強みを実現できているといえます。

■顧客ターゲット

・新書にこだわらない本好きな方、中古品への抵抗感が低い方
・ものを捨てたくない人、捨てるのはもったいないと思う人

◆戦術分析

■売り物

・古本が中心
→本に限らず、家電や洋服ブランド用品スポーツ用品などへも幅を広げています

■売り値

・商品別の需給バランスを反映した値付けを行っています。

■売り方

・「本を売るならBOOKOFF」というキャッチコピー

■売り場

・BOOKOFF店舗の中古本をインターネットオークションサービス「ヤフオク!」上で販売
→商圏、販売機会の拡大を図っています。

・BOOKOFFにとっては、売り場=仕入れ場でもあり、出張買取や宅配買取も含めて、年間買い取り点数は約5億点を誇ります。

※売り値や売り物などは調査時の情報です。最新の情報を知りたい場合は、企業HPなどをご確認ください。

まとめ(戦略ショートストーリー)

中古品への抵抗感が低い方をターゲットに「独自のオペレーションシステム」に支えられた『気軽に入れる』『行くたびに新しい発見がある』という強みで差別化しています。耳に残るキャッチコピーで、本を売るならブックオフというイメージを浸透させるとともに、出張買取など顧客の売りやすさを追求することで顧客の支持を得ています。

≪分析のポイント≫

“生産性と回転力”

ブックオフにとって、買取(仕入れ)は生命線です。なぜかというとどんどん仕入れて、店内の新陳代謝を活性化させることが顧客を飽きさせないことにつながりますし、売りに来た顧客が、査定時間を利用して本を購入してくれるという好循環も生まれるからです。ちなみに、仕入れた商品を即売り場に置くということは仕入れ在庫を抱えないため、会計的にも非常に効率的であるといえます。

話を戻しまして生産性と回転力を最優先し、シンプルなオペレーションを磨いてきた理由のひとつは商品の高回転が棚の変化を演出するためといえます。だからこそ、事業方針に「最大の買取」を掲げているわけで、戦術面では、店舗の看板には大きく「お売りください」と掲げられていますし、お店で買い取ることはもちろん、積極的に出張買取や宅配買取も行っているのです。これらの戦術によって、顧客にとって、本を処分する際の選択肢にまずブックオフが浮かぶという状況を構築出来たことがブックオフの成功要因の一つになっているわけです。

ところが、ブックオフの成長を支えてきた本の買取が減少傾向にあるようです。本の買取(売ってくれる方)が減る要因としては、まず電子書籍の普及があげられます。これは、今後も拡がっていくでしょうからリアルのモノを扱っているブックオフにとっては逆風といえるでしょう。そして、ヤフオクなどのオークションサイトを利用する方が増え、ブックオフなどの店でなく、直接個人が出品するといった形の個人での売買が容易になったことも、買取減少要因のひとつと言えるでしょう。ちなみにブックオフよりもヤフオクなどのほうが高く売れることもあるようですので、どうせ売るなら高く売りたいという心理が働くのもわかりますね。

これに対して、ブックオフは本を売ってくれる方が減っていることに対応するために「本のBOOKOFF」から「何でもリユースのBOOKOFF」へを掲げ、書籍以外の家電などの買取りに力を入れています。古本に関しては、生産性と回転力を最優先し、シンプルなオペレーションで常に新しい売り場を作ってきたわけですが、家電製品などでも同じようにできるのかは課題となります。そして、もうひとつの課題として家電を売るならブックオフというイメージを作ることができるのかということです。家電の場合は家電量販店が下取りをしていたり、ハードオフなどの先行企業がありますので簡単ではありません。

何が言いたいかといいますと、取り扱う商品を広げるということは戦場が変わるということを意味しますし、戦場が変わるということは競合も変わりますし、強みも変わります。いままでの強みが強みでなくなることもあるでしょう。要するに戦略を見直す必要があるということです。

今後、「ブックオフ」が本以外の買取を増やすためにどのような打ち手をうってくるのか注目していきたいです。

 

 

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