飲食店で「私はコーヒーで」と注文するのは普通のことですよね? でも、英語で言うとき「I am coffee!」(私はコーヒー)と言うのは正しいのでしょうか? 実はこれ、通称「うなぎ文」と呼ばれる、語学の世界では1冊の本が出ているほど奥深いテーマなんだそうです。無料メルマガ『1日1粒!「幸せのタネ」』では、この「うなぎ文」を英語に直訳することはできるのかどうかを分かりやすく解説しています。
僕はうなぎだ
Agent Smith: You’re empty.
Neo: So you are.エージェント・スミス:弾切れだ。
ネオ:貴様も。
(映画『マトリックス』より)
おそらく20年以上は前のテレビCMだと思うのですが、飛行機の中で乗務員から「チキンですか、ビーフですか?」と英語で聞かれて
「I am chicken!」
と答えて。とたんにその女性がポンっとニワトリの被り物をかぶった姿になるというのがありました。同じパターンで「コーヒーですか、紅茶ですか?」と聞かれて
「I am coffee!」
と答えて、こちらもポンっとコーヒーカップの被り物をかぶった姿になるのもありました。
これは日本語だったら「私はチキン」「僕はコーヒーだ」と言えるけど、「私は日本人です」と同じように「I am~」では言えませんよ…恥かしい思いをしたくなければ英会話学校へ、というCMでした。
この「私は○○だ」というのは、なかなか興味深くて、日本語学の世界では「うなぎ文」と呼ばれています。
昼ごはんを同僚と食べに出かけて、丼屋で「僕はうなぎだ」と言うのを代表例として取り上げているからなのですが、この文だけで本が一冊でているぐらいに奥深いテーマです。
「僕はうなぎだ」で、なぜ「僕はうな重を食べる」という意味になるんでしょう? 考えてみたら面白い話ですよね。
さて、英会話学校のCMでは「それは英語には直訳できませんよ」という話だったのですが、本当にそうなんでしょうか?
冒頭に挙げたのは、映画『マトリックス』のワンシーンです。地下鉄の駅で、主人公ネオとコンピューター世界のエージェントが戦うシーン。お互いに至近距離で銃を撃ち合い,互いの頭に銃口を突きつけたところで「カチッ、カチッ」と弾切れになります。そこでエージェントが言うセリフが「You’re empty.」です。
まさに「お前は空だ」が直訳された言い方です。「弾が切れた」ではなく「お前が空だ」ですから、まさに「うなぎ文」の例です。これを見つけたときはちょっと興奮してしまいました。おーー、実例を見つけたーという感じです。日常の雑談ではなく、複数の人が関わる映画という媒体の中で出てきたセリフなので、サンプル、実例としてはなかなかいいものだと思います。
山梨正明先生が認知言語学の本の中で、英語にもうなぎ文があることは指摘されているので、私が最初の発見者でもなんでもないのですが、自分でサンプルを発見できるとかなり嬉しいものです。
ということで、もしみなさんが海外旅行に行く機内で、「Coffee or tea?」と聞かれて「I am coffee.」と答えても大丈夫。安心して旅を楽しんでください。
※Coffee, please. Thanks.ぐらいの方が丁寧だと思いますが。
image by: Shutterstock
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