中国の王毅外相は8日の記者会見で、今年が「盧溝橋事件」から80年にあたると前置きした上で、日本に向けて「まず、自らの『心の病』を治さなければならない」という意味深な発言をしました。無料メルマガ『ロシア政治経済ジャーナル』の著者・北野幸伯さんは、この言が日本国内における「中国脅威論」を牽制したものとの見方を示すとともに、今後中国が目指す穏やかではない外交策、そしてそれに対して日本が取るべき政策について記しています。
中国外相「日本は、心の病を治せ!」
中国の王毅外相は8日、記者会見で、いろいろ興味深い発言をしました。西日本新聞3月9日を見てみましょう。
「日本は心の病治せ」王外相 中国脅威論をけん制か
西日本新聞 3/9(木)10:13配信
中国の王毅外相は8日、開会中の全国人民代表大会(全人代)に合わせて記者会見した。今年、国交正常化45周年である日中関係について「(日中戦争の発端となった)盧溝橋事件から80年にも当たる」として歴史問題を重視する考えを強調。「日本はまず、自らの『心の病』を治さなければならない」と語り、中国の台頭を念頭に日米同盟強化に動く日本政府をけん制した。
「盧溝橋事件から80年」。今年もまた、「歴史問題」重視。「日本はまず、自らの『心の病』を治さなければならない」そうです。
王氏は「われわれは当然、日本と関係を改善し、両国人民に幸せをもたらしたい」とする一方、「日本国内には依然として歴史を逆戻りさせようとする人がいる」と指摘。「中国が絶えず発展し続けている事実を理性的に受け入れる必要がある」と述べた。「心の病」とは、中国脅威論を指すとみられる。
(同上)
う~む。中国は、「日本には尖閣だけでなく、沖縄の領有権もない!!」と宣言している。どう考えても「日本の脅威」です。ただ、だからといって、「心の病を治すべきは中国の方だ!」と言い返す必要はありません。ここでは、中国が今の日中関係について、「どういう方針でいるのか?」を知っておくことが大事です。つまり
- 中国は、日本との関係を改善させたい?
- しかし、日本側は「歴史について反省が足りない」。
- そして、「中国脅威論」をひろめている。
- だから、なかなか日中関係が改善しない。
王外相のロジックは、こうなります。私たちから言わせてもらうと、
- 中国は、「日本には尖閣だけでなく沖縄の領有権もない!」という間違った情報を拡散している。
- 大変しばしば、領海侵犯、領空侵犯を繰り返している。
- 世界中で「反日プロパガンダ」を展開している。
「だから反中になるのだ!」ということなのですが。
中国と韓国関係の現状は?
さて、王外相は、「中韓関係」についても語りました。
開催が先送りになっている日中韓首脳会談については「中日韓協力の健全な発展を妨げるさまざまな問題を処理しなければならない」と語り、早期開催は困難との見通しを示した。米軍の最新鋭迎撃システム「高高度防衛ミサイル(THAAD)」の韓国配備に改めて反対を明言した。
(同上)
THAAD問題で、中韓関係が相当悪化しているようです。
3月10日、朴大統領の罷免が決定しました。
韓国憲法裁 朴大統領の罷免決定=60日以内に大統領選
聯合ニュース 3/10(金)11:23配信
【ソウル聯合ニュース】韓国憲法裁判所は10日午前、朴槿恵(パク・クネ)大統領の罷免を認める決定を言い渡した。決定に伴い、朴氏は韓国憲政史上初めて弾劾により失職した大統領になった。
「反日大統領」の哀れな末路です。とはいえ、私たちは、ここでも安心することができません。現在支持率トップの文在寅さん(共に民主党前代表)は、「親中国、親北朝鮮、反日本」なのです。
中国は、誰が勝っても「THAAD配備撤回」を目指して、強力な工作をすることでしょう。そして、韓国が「反日であり続けるよう」圧力をかけ続けます。アメリカと中国の間で揺れ動く韓国。欧州でいえば、ロシアと米独の間で揺れ動くウクライナに似ています。
いずれにしても、日本は、韓国に「なるべく関わらない」のがいいようです。日本はかつて、韓半島がらみで中国(清)、ロシアと戦争しました。当時の日本は、「ロシアの南下政策を止めなければ!」と決意していたのですが。今回、韓半島のことは、アメリカ、中国にやらせておきましょう。
アメリカは、「完全なパートナーになれる」?
次に米中関係は、どうでしょうか?
一方、米中関係については「両国は完全に良好な協力パートナーになれる」と表明。習近平国家主席とトランプ米大統領の電話会談で「『一つの中国』原則堅持の重要性を確認した」と評価し、米中首脳会談の早期実現に向けて調整中であることを明らかにした。
(同上)
「両国は完全に良好な協力パートナーになれる」そうです。中国は、「共産党の一党独裁国家」でありながら、過去40年以上アメリカと「良好な関係」を続けてきました。両国関係が「深刻な危機」に陥ったのは、1989年の天安門事件から1992年までだけ。そういう「実績」の上にある自信ですね。
王外相発言からわかる、中国の外交方針は?
まとめてみましょう。
まず、日本については、「謝罪を続け、中国脅威論を引っ込めないかぎり、関係は良好にならない」。韓国については、「親中政権を樹立し、THAAD配備を撤回させる」。アメリカについては、「トランプを懐柔し、親中にする」。ロシアについては触れていません。ロシアについては、「事実上の同盟関係で揺るぎない」といったところでしょう。
というわけで、中国は、2012年11月に発表された、「反日統一共同戦線」戦略をそのまま続けているようです。この戦略の骨子は、
- 中国、ロシア、韓国で「反日統一共同戦線」をつくる。
- 中ロ韓は、一体化して「日本の領土要求」を退ける。
日本に断念させる領土とは、「北方4島」「竹島」そして、「尖閣」「沖縄」である。日本に「沖縄」の領有権はない!! - 反日統一共同戦線には、「アメリカ」も引き入れなければならない。
※ 必読絶対証拠は→反日統一共同戦線を呼びかける中国
この「型」をつくるために、中国は、アメリカ・トランプ政権を懐柔し、韓国に親中新政権をたてようとしている。
日本はどうする?
これ、毎回同じ結論で申し訳ないですが。
中国の戦略は、アメリカ、ロシア、韓国と連携して、日本を破滅させる。だから、日本は、「正反対」のことをすればいい。つまり、
- アメリカとの同盟関係をますます強固にし、
- ロシアと和解し、ますます関係を改善する。
韓国については、米中に取り合いをさせておけばいいと思います。米ロとの連携強化も大事ですが、もっと広く考えれば、
- 将来中国に並ぶ大国になることが確実な親日国家インドとの連携を深化させる。
- 台湾、ベトナム、フィリピン、オーストラリアなどとの関係を強化する。
ことも大事ですね。
王外相は、「盧溝橋事件から80年」と言いました。そう、80年前、日本は世界で孤立していました。結果、1937年に日中戦争が始まったとき、中国の後ろには、アメリカ、イギリス、ソ連がいた。これは、負けて当然の戦争でした。
今回は、80年前の過ちを繰り返すべきではありません。日本は、「孤立を防ぎ、仲間増やすこと」で中国との戦争を回避すべきなのです。中国の「工作力」は、とんでもなく強力ですので、ひと時も油断できません。
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