「日中両国はすでに戦争下にある」などと聞くと、「また右派の妄想か」と軽く受け流してしまいがちですが、無料メルマガ『ロシア政治経済ジャーナル』の著者・北野幸伯さんがたびたび記されているように、中国がロシアと韓国に「反日統一共同戦線」を作ろうと呼びかけているのは事実であり、さらに米国をも引き入れようという動きがあるのもまた事実です。にも関わらず、平和ボケと言われるほど危機感の薄い日本人。北野さんは「日本人の戦争観」にこの原因があるとし、現在も中国が展開する「情報戦」の巧妙さ、そしてそれに日本はいかに対応すべきかについて論じています。
日本の「戦争観」と中国の「戦争観」の違い
ときどき書いていますが、私はここ5年ほど、「戦争中」という意識で暮らしています。
「……ていうか戦争中じゃないでしょ?」
「……北野さんて、やっぱネトウヨ?」
そう思いたくなる気持ち、わかります。
なぜ私が「戦争中」と考え始めたのか? 理由は、いつも書いている「あれ」です。「あれ」とは、そう、中国の代表団が2012年11月、モスクワで、ロシアと韓国に、「『反日統一共同戦線』をつくろうぜ!」と提案した。もう読まれたかたも多いと思いますが、まだの方は、必ずご一読ください。
中国の対日戦略の骨子は、三つ。
- 中国、ロシア、韓国で、「反日統一共同戦線」をつくる。
- 中国、ロシア、韓国で、日本の「領土要求」を断念させる。「断念させる領土」とは、「北方4島」「竹島」「尖閣」「沖縄」である(中国曰く、日本に「沖縄」の領有権はない!!!!)
- 「アメリカ」を「反日統一共同戦線」に引き入れる。
私は、この情報を知り、「嗚呼、日中戦争が始まった…」と嘆きました。
「……ていうか、日中戦争始まってないし」。普通の日本人なら、依然としてそう考えることでしょう。
戦争と「戦闘」は同じではない
日本人は、「戦争」というと、「武器を使って敵国と戦うこと」と考えます。「戦争」という言葉から連想されるのは、
- 空爆する
- ミサイルをぶっ放す
- 戦車で進軍する
- 兵士が撃ち合いをする
などなどでしょう。「実際の戦闘行為」=「戦争」だと思いがちです。しかし、中国は、そう考えていない。「戦争」について、もっと広範にとらえているのです。これ、『クレムリン・メソッド』で解説していますが、今日はトランプさんのブレーン、ナヴァロ・カリフォルニア大学教授に解説していただきましょう。
「戦わずして人の兵を屈するは善の善なるものなり」
総合国力というコンセプトは、「戦わずして人の兵を屈するは善の善なるものなり」という孫子の格言に深く根ざしている。中国人民解放軍軍事科学院の著名な戦略家・呉春秋の言葉に、孫子の時代から連綿と受け継がれた精神を見ることができる。呉は次のように言う。
「戦わずして勝つとは、まったく戦わないことを意味するものではない。政治戦、経済戦、科学・技術戦、外交戦等々、戦わなければならない戦争は数々ある。これを一言でまとめれば、総合国力戦である」。
(『米中もし戦わば』)
おわかりですね。中国にとって、「戦争」は、「総合国力戦」なのです。政治戦、経済戦、科学・技術戦、外交戦などがあって、実際の戦闘は、「その小さな一部」でしかない。
私が、「戦争は始まっている」という意味、ご理解いただけたでしょうか?
中国の対日戦略の本質
もう一度、「反日統一共同戦線」について考えてみましょう。
まず、中国は、ロシア、韓国に、「反日統一共同戦線をつくろぜ!」と提案した。どういう理由で?
中国、ロシア、韓国の共通点は、「日本と領土問題を抱えていること」。だから、「協力して、日本の領土要求を断念させよう」、「3国は同じ問題があるから、共同で日本と戦おう!」と。
次に「アメリカを引き入れる」としています。しかし、日本とアメリカの間に、「領土問題」はない。どうやってアメリカを「反日統一共同戦線」に引き入れるのか?
中国、ロシア、アメリカの共通点は、「第2次大戦で、日本と戦ったこと」です。ロシアは当時ソ連で、中国は共産党ではなく国民党が日本と戦った。厳密に言うとそうですが、中国は気にしません。
「中国、ロシア、アメリカは、かつて一緒に軍国主義国日本と戦った。韓国は、軍国主義日本に支配されていた哀れな国」。こういう、共通項でアメリカにアプローチする。
そして、次にこうきます。「日本で、右傾化、軍国主義化が始まっています。彼らは、第2次大戦の結果を認めず、『歴史の見直し』を狙っています。これを、中国、ロシア、アメリカ、韓国で、一緒に粉砕しましょう!」とこう来るわけです。
これが2012年11月。中国は、この方向で大金を投じて反日プロパガンダを行った。その結果、2013年12月、安倍総理の靖国参拝は、大バッシングされることになりました。
中国がやっているのはなんでしょう? 「情報戦」をやっているのです。目的は、「日本を孤立させること」です。中国(当時国民党)は1930年代、日本の「世界支配計画書」「田中メモリアル」(偽書)を大拡散した。それで、世界中の人たちが、「日本は世界征服を狙っている」と信じた。(ロシア人に、「田中メモリアル、偽書だって知ってた?」と聞くと、「え ?偽書なの? 本物だと大学で習ったけど」と答えました。80年経っても、まだ中国のプロパガンダ効果は続いている!)。
つまり中国は、まず「情報戦」で勝利し、日本を「孤立させる」ことに成功していた。それで、日中戦争が1937年始まったとき、日本は、中国、アメリカ、イギリス、ソ連を敵にまわしていた。こんなもん勝てるはずがありません。
というわけで、中国は、「日本孤立化」を目的とする「情報戦」を継続しています。日本は、「反日統一共同戦線」と逆の道をいく。つまり、
- アメリカとの同盟関係をますます強固にする。
- ロシアと和解し、関係をどんどん改善させていく。
韓国については、アメリカを間に入れて付き合っていけばいいでしょう。
私たちは、歴史の教訓「孤立したから負けた」を胸に刻み、「孤立する言動」は、慎重に避けていく必要があるのです。
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