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習近平のことが好きだ。トランプが口にした衝撃告白の「真意」

当初は敵対関係にあるとみられていたトランプ大統領と習近平国家主席が利害の一致を見、急速に関係を強化し始めたと分析する記事「トランプと習近平の一致した思惑。報道されない米中首脳会談の裏」を先日紹介しました。では、これまでたびたび両者の関係について言及してきた無料メルマガ『ロシア政治経済ジャーナル』の著者・北野幸伯さんはどう見ているのでしょうか。メルマガの最新号では、短期間で急激に変わった「米中関係」と「米露関係」を、独自の視点で分析しています。

トランプが衝撃告白、「私は習近平がとても好きだ!」 プーチンは?

アメリカのシリア攻撃、北朝鮮問題でかすんでしまいましたが。習近平トランプに会ったのですね。この件、「夕食中、トランプが習近平にシリア攻撃のことを伝えた」話ばかりです。二人の関係はどうだったのでしょうか?

トランプの衝撃告白

ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)4月13日付を見てみましょう。

ドナルド・トランプ米大統領は12日、就任後に知己になったある国の首脳との関係について冗舌に語った。「われわれの関係は非常に良い」。トランプ氏はホワイトハウスの大統領執務室で行われたウォール・ストリート・ジャーナルとのインタビューでそう述べた。

 

「われわれの相性はすごくいい。互いに好意を持っている。私は彼のことがとても好きだ。彼の妻も素晴らしい」

 

これほど温かい言葉で評されているリーダーとは誰か。

皆さん、クイズです。トランプがある国のリーダーについて、以下のように語っています。「われわれの相性はすごくいい。互いに好意を持っている。私は彼のことがとても好きだ。彼の妻も素晴らしい」。トランプは、誰のことを語っているのでしょう??? 答えを紙に書いてみてください。

正解です。安倍総理ですね。すいません。ウソです。答えは、こちら。

中国の習近平国家主席だ。
(同上)

「え~~~~~、トランプは習近平の悪口ばかり言っていたのでは???」ですね。だから、トランプにインタビューしたWSJの記者さんも驚いています。

トランプ氏の口からこうした言葉が出てくると思っていた人はほとんどいないと言ってもいいだろう。昨年の米大統領選挙中、中国はどの国よりもトランプ氏による「口撃」の標的だった。いわく、世界経済の枠組みの中で公正に取引していない、自分たちが有利になるよう米国を利用している、米国の仕事を盗んでいる、周辺諸国をどう喝している──。
(同上)

そう、トランプは、当時明らかに「習近平が嫌いだった

トランプは、安倍総理が大好きですが、他にもお気に入りがいますね? そう、プーチンです。

その一方で当然のことながら、大国の指導者の中ではロシアのウラジーミル・プーチン大統領がトランプ氏のお気に入りの人物になり、緊密な関係を築いて過去の罪を許されるはずだった。
(同上)

そうなんです。選挙戦中も大統領就任後も、トランプのプーチン愛は一貫していました。しかし…。

ところがどういうわけか、トランプ氏が選挙で勝利した後のこの5カ月ほどの間に、ほとんど正反対のことが起こった。今やトランプ氏と習氏の関係が世界で最も重要なものとなりつつあるかのようだ。
(同上)

アメリカはGDPでも軍事費でも世界一。中国は、GDP、軍事費で世界2位。世界1位と2位の首脳の関係が「世界で最も重要」なのは、当然でしょう。しかし、その関係の質はいろいろあり得ます

トランプ、習近平との会談を語る

ここから、最近の首脳会談に話が移ります。どうだったのでしょうか?

トランプ氏がインタビューの中で詳細に語ったところによると、習氏とは先週、フロリダ州の別荘「マール・ア・ラーゴ」で長時間ともに過ごし、随行者を同席させずに対話した時間も長かったという。米中首脳会談の最初の協議は「10分から15分の予定だったが、3時間に延びた」。さらに「2日目に10分間の予定で組んでいた会談は2時間に延びた。われわれは本当に相性がいい」とも述べた。
(同上)

もちろん、「話すネタがあった」というのも大事でしょう。シリア問題、北朝鮮問題。特に北朝問題は、中国が金正恩体制への支援を続けていることが根本的大問題。だから、「話が盛り上がる」のは、わかる。

しかし、「おまえが金正恩を甘やかしているせいで、あの小僧はもうすぐ、アメリカ本土を核攻撃できるようになる! なんとかしないと、中国もタダではすまないぞ!」と脅迫することもできたはずです。

しかし、会談後の感想は、「われわれは本当に相性がいい」。これは、本当にそうなのでしょう。トランプはこの辺、正直です。メルケルさんに対して、「相性がいい」とは言いません。

なぜトランプは、習近平を好きになったのか?

シリア攻撃と習近平の話になります。

習氏はトランプ氏によるシリア攻撃の決断を世界で最初に知った外国の首脳だ。シリア攻撃では59発の巡航ミサイル「トマホーク」が発射された。トランプ氏は6日夜に行われた夕食会でデザートを食べながら習氏に伝えた。
(同上)

このニュースを聞いた時、ロシアは、「アサドは、化学兵器を使っていない! アメリカは、イラクのときと同じで、ウソをついている!」と非常にネガティブで激しい反応をしました。

一方、習近平は、「化学兵器を使うのは、容認できない。アメリカがシリアを攻撃したのは、『理解できる』」と言った。そして、国連安保理は4月12日、「シリア非難決議」の採決をしました。ロシアは「拒否権を行使し、この決議を葬った。

問題は、中国の動きです。中国は普通、ロシアと共に「拒否権」を行使する。ところが、今回は「棄権」しました。つまり、中国は、ロシアを裏切った。ロシアのテレビでは、報道されませんでしたが、ショックは大きいだろうと思います。

選挙期間中の厳しい発言から習氏とのこうした関係が生まれることを想像できたかと尋ねると、簡潔に「ノー」と答えた。そしてこう付け加えた。「彼はとても聡明だ。それが彼の長所だ。順応性と呼んでもいい」
(同上)

習近平には順応性があるそうです。まさにその通りでしょう。

習近平は、「中国の夢」を標榜する「ナショナリスト」として登場しました。それで、ダボス会議に集まるような国際金融資本に嫌われ、2015、2016年、中国経済はボロボロになってしまった。

しかし、「ナショナリスト」トランプがアメリカ大統領になると、国際金融資本は、彼を敵視し始めた。習は、その機会をとらえ、1月のダボス会議で、「グローバリズム、絶対支持!」を宣言しました。「ナショナリスト」だったのが、一夜にしてグローバリストに変貌した。これも「順応性」ですね。

以後、欧米メディアから、「中国経済のハードランディングは不可避」といった論調は消えました。むしろ、「中国経済、底打ち」といった記事ばかりになってきた。

そして今回の件。習は、中国では「皇帝」です。しかし、トランプに会った時は、「皇帝らしい振る舞いを封印しました。微笑みを絶やさず、トランプの話に耳を傾け、シリア攻撃のニュースを聞いたときも、「アメリカの行動は理解できる」と賛意すら示した。これは、何でしょう?

中国人のいわゆる「陰陽論」なのでしょう。つまり、トランプみたいな強いの人と会うとき、自分自身は「にならなければならない。考えてみると、メラニア夫人、娘のイヴァンカさん。安倍総理、イギリスのメイ首相。「になれる人がトランプのお気に入りですね。習近平も見事に演じた」のでしょう。これを、「順応性がある」と言います。

冷める「プーチン愛」

一方、トランプの「プーチン愛」はどうなったのでしょうか?

習氏との関係をプーチン氏との関係と対比させて質問したところ、トランプ氏は選挙後にプーチン氏から好意的な電話がかかってきたことや、ロシアで最近発生したテロ事件後にトランプ氏から電話をかけて哀悼の意を表し、協力を申し出たことについて語った。「あなた方がこれまで書いてきたこととは裏腹に、私はプーチンを知らない。知らないのだ」
(同上)

「私は、プーチンを知らない」

これも本音でしょう。トランプは、プーチンに会ったことがない。一方で、シリア問題で対立している。会えば変わるかもしれませんが、現状は、トランプは、「習近平が大好きだ!」と公言している。トランプは、「プーチンを知らない!」と公言している。

WSJ、記事をこんな風に結んでいます。

少なくとも今のところは、トランプ、習両氏の関係は世界で最も驚くべき「ブロマンス(男性同士の親密な関係)」になりつつある。
(同上)

日本は、こういう現状を踏まえ

  1. アメリカとの同盟関係をますます強固にしていく
  2. ロシアとの関係をますます強化し、結果的に中ロを分断させる(しかし、中国の悪口をいうべきではない)
  3. 中国を挑発しない(米中関係がさらに良好になると、梯子を外される可能性がある)

で行きましょう。移り変わりの激しい、「米中ロ・三国志には関わらないように。

アメリカとは、「最高の関係」ロシアとは、「良好な関係」中国とは、「悪くない関係」を築いていけば、80年前の過ちを繰り返すことはないでしょう。現在の国際関係は、1930年代並に移り変わりが激しい。注意深く、情勢を追い続けていきましょう。

 

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【著者】 北野幸伯 【発行周期】 不定期

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