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儲かるのは国だけ。タワマン高層階の資産価値がなくなる日

素晴らしい眺望を楽しめる上にステータスを感じることもできるというタワーマンション高層階。しかし、地震や火事の際に起こりうるリスクやそれに伴う価値の逆転に関してはあまり語られることはありません。今回の無料メルマガ『まんしょんオタクのマンションこぼれ話』では著者の廣田信子さんが、マンションと戸建て住宅の「固定資産税」の違いに触れつつ、マンション住民が抱く「不公平感」について記しています。

投資金額に税額を連動させるならマンションと戸建ての違いは?

こんにちは! 廣田信子です。

さて、昨日の記事で、5階建て階段室団地は、売り出しの時、上の階の方が人気で価格も高かったけど、今では逆転し、上に行くほど安くなっていると書きました。で、固定資産は、もともと専有面積割りで、売買価格や階数によって差がないので、それはそれで公平なんでしょうが…。

階による価格の差という話で思い出すのは、超高層マンションで2018年以降の引き渡し物件について上に行くほど固定資産税を上げるという税制改正です。超高層マンションは上に行くほど価格が高いから…というのがその理由です。

タワマン節税に待った?
高層階ほどバカを見る。タワーマンション「課税」に黄昏れて

で書いています。でも、何に価値を感じるかが時代とともに変わるということは、団地の階による価格の逆転で証明済です。

そうはいっても、タワーマンションは、上にいくほど価格が高いのは今後も変わらないでしょう~と思われますか?

私は、首都圏を大地震が襲ったら、階による価値が大きく変わることも十分あり得ると思います。長周期振動で数メートルも振り子のように揺れる恐怖を体験したら、もう、40階なんて住めなくなる人が出るでしょう。エレベーターが破損して、陸の孤島になった40階は、もう人の住めるところじゃありません。

眺望は見たい時に最上階のラウンジにいけばいいじゃないですか。それで、普段は安全な下の階に居住するという方が、賢い暮らし方になるかもしれませんよ。タワーマンションにお住いの方は、とんでもないと思われるかもしれませんが、価値の逆転は、決してめずらしいことではありません

で、そんな危うい前提で、税制を変える前に、もっと明らかに非合理なことを是正してもらいたという声が、最近また高まっています。戸建て住宅とマンションの固定資産税の差です。

同じ価格で同じ広さでも、木造戸建てとマンションとでは、固定資産税の額が、当初でも1.5倍、30年の累積では2倍近く違ってくると言われています。投資した金額で価値と税額を判断するのが公平というのなら、これはおかしいですよね。

当初の差は、物件価格に占める土地と建物の価格の差にあります。戸建ては、土地の占める割合が高く、マンションは建物が占める割合が大きくなります。土地に関しては、土地評価額の6分の1が課税対象評価額となります。一方、建物は評価額の100%が課税対象評価額となるため、建物の割合が大きいマンションの税額が高くなるのです。

さらに、マンションなど鉄筋コンクリートの耐用年数は47年、木造戸建ては22年とされているので、耐用年数が長いマンションの固定資産税の方がより高い状態が長く続くのです。木造も100年住宅が当たり前になっているのに…。

以前からこの税制の不合理については、マンション管理の関係団体の中では問題とされてきましたが、最近、また声が大きくなってきたように思います。税制ですから自治体に言っても仕方がないと分かっていながら、自治体に対して物言うケースに遭遇しました。

なぜ、今なのかと代表者の方に聞くと、「年金暮らしの人が増えて、家計からの支出に敏感になる人が増えている。マンション住民はおとなし過ぎる。全国のマンション住民が声を合わせれば不公平を是正させられるのに…」と。

国の立場で考えたらどうでしょう。タワーマンションに関する税制改革は、公平性の担保とはいうものの、固定資産税の総額は減らないようになっていて、同時に相続税逃れを阻止するという意味もあり、国の税収は増えこそしても減らないようになっています。

で、今後、容積率アップの建替え、再開発によって、住戸数が増えれば、同じ面積の地面から上がってくる固定資産税、都市計画税は、大幅にアップするのです。

で、一番儲かるのは国じゃないでしょうか。税制の不公平に対して、マンション住民が声を上げるときかもしれません。

image by: Shutterstock.com

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【著者】 廣田信子 【発行周期】 ほぼ 平日刊

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