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中国が「軍事施設の偵察」を韓国に要求。米中の板挟みに泣く韓国

朴槿恵元大統領弾劾の後、文在寅新大統領が誕生し、落ち着きを取り戻したかのように見える韓国。しかし、無料メルマガ『ロシア政治経済ジャーナル』の著者で世界情勢に詳しい北野幸伯さんは、「文在寅大統領は、早くもTHAAD問題でアメリカと中国の板挟みとなり、厳しい状況に置かれている」との見方を示すとともに、韓国が直面し続けている「地政学的悲劇」について記しています。

韓国の悲劇~米中の板挟みで苦悩する文政権

韓国の大統領になったばかりの文在寅(ムン・ジェイン)さん。早くも、アメリカと中国に挟まれ厳しい状況にあるようです。

韓国といえば、もちろんアメリカの同盟国。しかし08年、リーマン・ショックからアメリカ発「100年に1度の大不況」が始まると、米韓関係がおかしくなってきました。韓国は、「アメリカは沈んだ」と認識。「沈まなかった中国に接近し始めた。

当時の大統領は、李明博さんでした。彼は2012年8月、竹島に上陸。さらに、同月、「日王が韓国に来たければ謝罪せよ!」と天皇陛下を侮辱した。日本は、この発言を許しませんでした。日韓関係は最悪になってしまいます。

2013年、朴槿恵さんが大統領になります。この方は、露骨に中国に接近しました。「日本の悪口をいうことで」中国に擦り寄っていった。朴槿恵さんの時代、欧米のあちこちで「慰安婦像建立プロジェクト」が実行され、日本人を怒らせました。

しかし、2015年12月の慰安婦合意以降、朴さんは、日本、アメリカとの関係を改善させ、中国と距離をとるようになります。理由は、「中国が北朝鮮から韓国を守る気がないことを理解したから」だとか。朴政権は、2016年7月、THAADを配備すると発表。中国と韓国の関係は最悪になってしまいます。2017年3月、皆さんご存知のように、朴さんは弾劾され失脚しました。反日大統領の哀れな末路です。

中国、「THAADを見せろ!」要求

韓国、最大の悩みは、「アメリカと中国の板挟みになっていること」でしょう。中国は、「THAADを見せろ!と文政権に要求しています。

韓国の文在寅(ムン・ジェイン)政権が外交に苦慮している。米軍の最新鋭迎撃システム「THAAD」に強く反発する中国から、施設の視察を要求されたのだ。中国と話し合う姿勢を見せていた文氏だが、その思いが袖にされた形だ。
(夕刊フジ 6月19日)

なぜ、中国はTHAADを見たいのでしょうか?

「中国側はTHAADレーダーが中国本土を探知可能かどうか直接確認したがっている。(中国が)韓国政府だけでなく、さまざまな外交・民間ルートを通じ、同様の要求を行っていると聞いている」

 

韓国紙、朝鮮日報(日本語版)が14日、青瓦台(大統領府)関係者の話として伝えた。

(同上)

「中国側はTHAADレーダーが中国本土を探知可能かどうか直接確認したがっている」。

そうなんです。中国は、「THAADは、対北朝鮮だけではなく、対中国でもある」と疑っている。「違うのなら見せろ!」と。韓国は、「嫌です!」とはっきりいえばよさそうなものですが。なぜ拒否できないのでしょうか?

青瓦台は対応に苦慮し、関係者は「中国の要求が無理な内容であることは事実だが、THAAD配備に対する中国側の反発が強まる状況で要求を一蹴することも難しい状況だ」と話したという。それはそうだろう。昨年7月にTHAADの韓国配備が決まってから、中国は「禁韓令」を連発し、中国のドラマや映画、バラエティー、広告などから韓流スターが排除される動きが拡大した。対象は化粧品や旅行にまでおよび、韓国で大騒ぎとなったからだ。
(同上)

そうなんです。中国は、THAADが原因で、韓国に事実上の経済制裁」を課している。日本全国、どこにいっても中国人観光客があふれている。韓国も以前はそんな状況だった。ところが、習近平の命令で、中国人が韓国に来なくなってしまった。その他、あらゆる分野で事実上の制裁が課され、韓国経済は苦境に立たされている。

「じゃあ、見せちゃえばいいじゃん」という人もいるかもしれません。しかし…。

中国の反発を考えれば、要求を受け入れるのも一つの手だ。だが、THAADは北朝鮮のミサイルから韓国を守る要であり、同盟国である米国との関係を考えても、簡単に中国の要望をかなえるわけにはいかない。
(同上)

そりゃあ、そうですね。アメリカ最大の「仮想敵」中国に、軍事機密を見せることになるのですから。

現に、文政権がTHAADの本格稼働を遅らせる動きを見せると、ドナルド・トランプ米大統領はホワイトハウスに「狂犬」ジェームズ・マティス国防長官らを集め、協議を行った。今月29日から予定されている米韓首脳会談でもTHAADは重要議題の一つになるとみられ、文氏が対応を誤れば、韓国の安全保障を担う米韓同盟に亀裂が走る恐れがある。
(同上)

嗚呼、板挟み…。

韓国の悲劇は、なぜ終わらない

韓国の歴史は、「悲劇の歴史」です。この国の不幸の原因は、「地理」「位置」によるもの。なぜ?

韓国は、日本、中国、ロシアという三大国から狙われる位置にある。日本は、韓国のために中国(清)、ロシアと戦いました。そして、中国にもロシアにも勝利し、韓国を併合した。しかし、日本は1945年に敗戦し、韓国は独立を果たします。

日本は、朝鮮半島から消えましたが、今度は、アメリカと中ソ冷戦の最前線」になってしまった。アメリカは韓国を支援し、中国・ソ連は北朝鮮を支援する。それで、1950年、朝鮮戦争が勃発しました。1991年末、ソ連が崩壊し、以後ロシアは、朝鮮半島への関与を減らしています。しかし、韓国をめぐるアメリカと中国の争いは続いている

このように、大国に囲まれた韓国の悲劇はとどまることを知りません。似たような状況にあるのが、EUとロシアの間にあるウクライナですね。海に守られた日本は、とてもラッキーです。

 

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【著者】 北野幸伯 【発行周期】 不定期

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