割増賃金となる残業や休日出勤ですが、「基本給から割増」になると思っている方が案外多いようです。今回の無料メルマガ『採用から退社まで! 正しい労務管理で、運命の出会いを引き寄せろ』では著者で現役社労士の飯田弘和さんが、間違えやすい残業代の基礎賃金から、除外してよい手当・してはいけない手当について詳細に解説してくださっています。
御社では、残業代の算定の基礎に各種手当を含めていますか?
「残業代算定の基礎賃金」といわれても、何のこっちゃでしょ? ザックリいうと、残業代を計算するときの元になる賃金のこと。でも、これを間違えてると、後で痛~い目にあいますよ。
残業や休日出勤に対しては、割増賃金を支払わなければなりません。残業代であれば、2割5分増し。休日出勤であれば、3割5分増し。
この「〇割増し」の基礎となるものは何か? これを理解していない方が結構多い。単純に「基本給の〇割増し」ではないんです。
もちろん、給料の「〇割増し」なのだけれども、割増の計算を行うときに、除外して良い手当と、除外できない(含めなければならない)手当があります。ここをしっかり理解していないと、不要で余分な残業代を支払ったり、逆に、残業代が不足して、労基署につつかれたりするのです。
では、割増賃金の計算のさいに除外しても良い手当とは何か? 7つあります(7つしかありません!)。
- 家族手当
- 通勤手当
- 別居手当
- 子女教育手当
- 住宅手当
- 臨時に支払われる賃金
- 1ヶ月を超える期間ごとに支払われる賃金(ボーナス等)
1.~5.は、従業員の「個人的な事情」に左右されるものであり、「労働の対価」としての賃金とは認められません。よって、残業代を計算するときの元になる賃金には含めません。
ということは、全員「一律で〇〇円支給」などといった場合は、(個人的事情に当たらないため)賃金に相当し、残業代計算の基礎賃金に含めなければなりません。たとえば、家族がいてもいなくても、「一律1万円の家族手当を支給」なんていうのは、1.の家族手当には当てはまりません。
ちなみに、6.臨時に支払われる賃金には、ケガをした時に会社から支払われる傷病手当や結婚手当などがあります。7.については、ボーナスが代表的なものになります。
「役職手当」「資格手当」「営業手当」「危険手当」など、実質的に、上記1.~7.に当てはまらない手当は、割増賃金を計算の時に、基礎賃金に含めなければなりません(基本給のみで割増賃金を計算していませんか? それ、ダメですよ!)。
「役職手当」等を含めて計算するので、当然、残業代はupします。しかし、これらを含めない金額で残業代を計算していると、未払残業代が発生していることになり、後々のトラブルの元となります。従業員とのトラブルはもちろんのこと、労基署から賃金未払で勧告や指導がきますよ。当然、未払分の支払いもしなければなりません。絶対に、放置しておかないでください。
以上を踏まえて、あらためてお聞きします。
「御社では、残業代の算定の基礎に各種手当を含めていますか?」
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