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天井に描かれた龍に見守られ。京都で「悟り」に近づく禅寺の旅へ

今や世界の共通言語となった「禅=ZEN」。京都にも建仁寺を始め、数多くの禅寺が今なおその伝統を守り続けています。「そんな禅寺だけを巡る旅もオススメ」と言うのは、無料メルマガ『おもしろい京都案内』の著者・英学(はなぶさ がく)さん。今回は英さんが、「禅寺の基礎知識」をレクチャーしてくれます。

京都の禅寺

今回は京都の禅寺についてです。禅の精神が私達日本人の生活や食文化に及ぼした影響は意外にもとても大きいものがあります。京都には禅寺の宗派である臨済宗曹洞宗黄檗宗などの大寺院がありその1つのお寺を見るだけ何日もかかってしまうほどです。禅寺だけを巡る京都の旅などはとてもオススメです。そんな時の予備知識になるような内容を今回はお伝え致します。

京都初の禅寺は建仁寺で、日本の臨済宗の祖・栄西(ようさい)が開山しました。元々はインドの僧・菩提達磨(ぼだいだるま)が、中国でその教えを説いて誕生したとされています。日本でも有名な「だるまさん」ですね。

禅の教えと禅寺の生活

禅は、生まれながら備わっている澄みきった心や、自らの心を見つめ直して純粋な心を自覚した境地を意味します。これをいわゆる「悟り」と呼びます。

鎌倉時代、日本にも禅の教えが伝わり、僧侶たちが修行するための道場が建てられるようになりました。これが禅寺の始まりです。禅寺では、坐禅などの修行の他に、禅僧が出世するのに必要な漢詩や語録を記した五山文学水墨画などの文芸活動も盛んに行われました。

禅の宗派を一般的に禅宗と言います。禅宗は臨済宗曹洞宗黄檗(おうばく)の3つの宗派からなり、各宗派によって思想や修行は少し異なります。鎌倉時代に栄西が臨済宗を、道元が曹洞宗を伝え、室町時代に発展していきました。

臨済宗は鎌倉幕府の北条家と室町幕府の足利家に信仰されました。そしてその後も室町時代の武家政権に支持されました。このように幕府から保護を受けたことにより、京都には今でも臨済宗のお寺が多いと言われています。江戸時代になると中国の隠元が黄檗宗を伝え、武士や民衆を中心に禅が広まりました。インゲン豆を日本に伝えた人です。

禅寺の歴史と五山文化

 
image by: 京都フリー写真素材

京都最古の禅寺は、1202年、禅宗の一派である臨済宗の祖・栄西が開山した建仁寺です。禅の作法や規則が厳格に守られた道場で、戦乱などで荒廃しますが、復興して現在に至ります。

その後室町時代以降は、金閣寺・銀閣寺・龍安寺・東福寺などを含めた沢山の禅寺が建立されるようになりました。中には日本最大規模を誇る妙心寺や、最も格式高い南禅寺をはじめ、京都五山と呼ばれる禅寺などがあります。

禅宗の統制と保護のために中国では五山制度が導入されていました。これに習い、日本でも室町時代に後醍醐天皇が京都の格式の高い5つの禅寺を定めました。その後足利義満が自ら建立した相国寺を五山に加えるため、天皇によって建立された南禅寺を五山より上となる禅寺の最高位「五山之上」としました。その後京都五山は、天龍寺・相国寺・建仁寺・東福寺・万寿寺と定められました。

禅が及ぼした食文化への影響

禅の教えを実践するため、食事は重要な修行とされています。肉食を禁じられています。穀類や豆、野菜など植物性の材料を使い、素材そのものの味を生かし調理したものしか食べません。これを精進料理といいます。

安土桃山時代になると、千利休が禅の精神をを元にした茶の湯に簡素な料理、茶懐石を取り入れました。これが後の懐石料理に受け継がれることになります。

また、黄檗宗では普茶(ふちゃ)料理という中国風の精進料理を食べます。植物油を使った炒め物や揚げ物、豆腐を素材にして肉や魚に似せた料理などが特徴です。

禅寺の見どころ「龍」と「塔頭」


image by: 京都フリー写真素材

多くの禅寺の法堂の天井にはが描かれています。龍は、仏教を守護する八部衆の一つで、龍神と崇められています。龍を天井に描くことで、師匠から弟子へ法を説く場を空から見守るという意味が込められているとされています。
龍神が水をつかさどることから、雨を降らすともされているので、昔から建物を火災から守ると伝えられているのです。

天龍寺には加山又造、建仁寺には小泉淳作、東福寺には堂本印象など比較的最近の画家によって描かれたものに龍の天井画になりました。しかし、中には狩野光信が描いたとされる相国寺の蟠(ばん)龍図など年代物も存在しています。

大寺院の禅寺には元来は亡き高僧の徳を慕って弟子が敷地内に建てた小さな院(寺)があります。これを塔頭(たっちゅう)といいます。京都では、特に塔頭の多い寺院として東福寺、南禅寺、大徳寺、妙心寺などが有名です。

いつしか時間を見つけて禅寺巡りをしてみてはいかがでしょうか?

いかがでしたか? 京都は日本人の知識と教養の宝庫です。これからもそのほんの一部でも皆さまにお伝え出来ればと思っています。

image by: Shutterstock.com京都フリー写真素材 

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【著者】 英学(はなぶさ がく) 【発行周期】 ほぼ週刊

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