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トランプ長男の「告発」は見せしめか?米ロ接近を阻みたい影の勢力

「ロシアゲート」で弾劾の危機にまで追い込まれているトランプ大統領。今度は長男が「選挙法違反」で法的責任を追及される可能性が出てきたようです。無料メルマガ『ロシア政治経済ジャーナル』の著者で世界情勢に詳しい北野幸伯さんはこれら一連の流れついて、「米ロ接近を快く思わない勢力が裏で動いているのでは?」との見方を示しています。

告発されるトランプ長男 なぜ???

前号「やっぱりプーチンが好き。ついに初対面したトランプのジレンマ」では、「ようやくトランプとプーチンが初会談した」という話をしました。そして、「トランプのプーチン愛は変わらないようだ」と。要するに「米ロ接近」の可能性は、残っている。

しかし、アメリカには、「米ロを接近させないぞ!という勢力が存在しているのですね。今度は、「トランプの長男が、選挙戦中に、ロシアから『クリントンに不利な機密情報』を得ようとした」という話が浮上してきました。これは、何でしょうか?

トランプの長男は、何をしたのか?

トランプさんの長男は、ドナルド・ジョン・トランプ・ジュニアといいます。現在39歳。彼のどんな行動が問題視されているのでしょうか? BBC News 7月11日から見てみましょう。

トランプ大統領の長男、ドナルド・トランプ・ジュニア氏は昨年6月9日、ニューヨークのトランプ・タワーでロシア人のナタリア・ベセルニツカヤ弁護士と面会した。大統領の義理の息子ジャレッド・クシュナー氏(現・大統領上級顧問)と、当時のトランプ陣営選対本部長ポール・マナフォート氏も同席したという。トランプ氏が共和党候補指名を確実にした、2週間後のことだった。

トランプ・ジュニアは、昨年6月9日、ロシア人弁護士のナタリア・ベセルニツカヤさんに会った。

9日付の米紙ニューヨーク・タイムズ報道を機に明らかになったこの会談について、トランプ・ジュニア氏は報道を受けて、その事実を認めたものの、選挙とは無関係の内容だったと説明した。しかし、ヒラリー・クリントン氏に不利な情報を提供するという申し出だったと同紙が報道すると、具体的な内容はなかったと説明を修正。10日には、政敵に関する情報収集は普通のことだと反論した。

 

また、この会談に関する自分のこれまでの発言は矛盾していないと強調した。同紙によるとトランプ・ジュニア氏は同紙の取材に対して今年3月、選挙について話し合うためロシア人と会ったことは一度もないと話していた。
(同上)

発言が変わっているのですね。

  1. 「選挙について話し合うためロシア人と会ったことは一度もない」
  2. 「会ったが、選挙とは無関係な内容だった」
  3. 「ヒラリーに不利な情報を提供する」というので会ったが、具体的な内容(つまりヒラリーに不利な情報)はなかった。

ここまででわかることはなんでしょうか? トランプ・ジュニアさんは、「ヒラリーに不利な情報が欲しくてロシアの弁護士さんに会ったと認めた」。

ところで、ジュニアさんとロシア人弁護士の間には「仲介者」がいました。

ベセルニツカヤ弁護士との面会についてトランプ・ジュニア氏は、「選挙運動に役立つ情報を持つかもしれない人物」に会うよう知人に言われたと説明した。米紙ワシントン・ポストによると、この知人とはロシアの音楽業界とつながりのある音楽広報業者ロブ・ゴールドストーン氏。10日付のニューヨーク・タイムズ紙によると、このゴールドストーン氏はトランプ・ジュニア氏にメールで、ロシア政府が父トランプ氏を大統領選で支援している、面会を求めている人物の情報もロシア政府のそうした取り組みの一環だ──と書き送っていた。ゴールドストーン氏はそうしたメールの内容について、同紙に否定している。
(同上)

ロシア政府が父トランプ氏を大統領選で支援している、面会を求めている人物の情報もロシア政府のそうした取り組みの一環だ」と知人のメールに書かれていて、ジュニアさんは、それを承知であった。

「ゴールドストーン氏はそうしたメールの内容について、同紙否定している」。

このゴールドストーンさん、「ウソをついていた」ことが明らかになっています。なぜか? 何と、トランプ・ジュニアさん自身がメールを公開してしまったのです。ロイター7月12日付から。

トランプ・ジュニア氏はツイッターで、問題の会合を取り持ったパブリシストのロブ・ゴールドストーン氏が同氏に宛てた2016年6月3日付のメールを公表。ゴールドストーン氏は同メールで「ロシア政府のトップ検事が公文書に加え、クリントン氏に不利となる情報および同氏のロシアとの対応に関する情報をトランプ陣営に提供することを申し出た。あなたのお父さんに非常に役立つだろう」と指摘。さらに「これが高官レベルの機密情報であることは明確だが、ロシアと同国政府のトランプ氏に対する支持の表れといえる」と述べている。

 

トランプ・ジュニア氏は、メールのやり取りを公表したのは「完全に透明であるため」とし、問題の弁護士は「何も提供する情報を持ち合わせていなかった」と説明した。

「これが高官レベルの機密情報であることは明確だが、ロシアと同国政府のトランプ氏に対する支持の表れといえる」だそうです。ジュニアさん、「おお! ヒラリーをぶちのめす機密情報が得られるぞ!」と思い、喜んで会ったのでしょう。

トランプ・ジュニアの行為は、法的に問題なのか?

トランプ・ジュニアさんは、「ヒラリーのヤバい機密情報をもっていると主張するロシア人弁護士と会った。これは、法的に問題なのでしょうか? ブルームバーグ7月11日から。

昨年の米大統領選中に、ヒラリー・クリントン陣営に不利な情報の提供を約束したロシア人弁護士と面談したトランプ米大統領の長男、ドナルド・トランプ・ジュニア氏が法的責任を追及される可能性が出てきた。

法的責任を追及される可能性が出てきた」そうです。なぜ?

選挙を専門とする弁護士によれば、選挙法では陣営が外国人から資金や寄付金、「他の価値あるもの」を承知の上で受け取ることを禁じており、「他の価値あるもの」には情報や相手陣営の調査なども含まれる可能性があるため、トランプ・ジュニア氏が同法違反に問われる事態も考えられるという。2つの別個の監視団体は、トランプ・ジュニア氏の面談について連邦選挙委員会(FEC)と司法省に告発する方針を表明した。

「選挙法」では、外国人から「金」や「他の価値あるもの」を受け取ることを禁じているのですね。「他の価値あるもの」の中に、「情報」も含まれる可能性がある。それで、ジュニアさん、「選挙法違反になる可能性があると。

確かに、ジュニアさんが、ロシア政府から「ヒラリーの秘密情報」を受け取ったとすれば重大問題でしょう。たとえば、ある日本の政治家が、中国のエージェントから政敵の極秘情報を受け取り、それをリークした。結果、政敵は沈み、この政治家は首相になった。もちろん、何かヤバいことをしていた政敵も問題です。しかし、中国のエージェントから情報を得ていた首相もやはり問題でしょう。

そういう側面ももちろんあります。

しかし、トランプとプーチンが会った直後に出てきた問題。やはり、「米ロを接近させたくない勢力が動いているのだな」という感じがしますね。

image by: Joseph Sohm / Shutterstock.com

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【著者】 北野幸伯 【発行周期】 不定期

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