都心からちょっと離れた住宅街にある本格ピザ専門店が支持を集めています。今回、無料メルマガ『MBAが教える企業分析』の著者でMBAホルダーの青山烈士さんが紹介しているのは、世界一の職人が腕を振るう「ピッツェリア ジターリア ダ フィリッポ」。青山さんは、同店が地元・石神井公園で人気となった戦略・戦術を詳細に分析しています。
地元を大切にする姿勢
世界一の職人が作る本格派ピッツァが楽しめる店舗を運営している企業を分析します。
● ピッツェリア ジターリア ダ フィリッポ(ピッツェリアリストランテ)
戦略ショートストーリー
食材や本物にこだわる方をターゲットに、「確かな腕と窯や食材への徹底的なこだわり」に支えられた「もっちり美味しいピッツァ」などの強みで差別化しています。
地元の顧客を大切にし、地元の食材にこだわった本格派のピッツァに加えて、ピッツァ以外のメニューも充実させることで、特に地元の顧客の支持を得ています。
分析のポイント
地元を大切にする姿勢
「ピッツェリア ジターリア ダ フィリッポ」はなぜ、都心から離れた、しかも住宅街である石神井公園に出店したのでしょうか。
店舗の紹介がぐるなびの紹介ページに記載されていましたので一部引用します
武蔵野台地の風土、日本の風土で世界に誇れる食材を厳選し、生産者の背景をのせたピッツェリアを目指しております。
自分たちのお店や料理を通して美味しい食材・生産者さんを知っていただけたら嬉しいです。
このコメントが一番の「こだわり」として紹介されています。このコメントから伺えるのは地域の食材にこだわること、地域に密着していくことを大事にしているということです。ということは、農家(農地)が少ない都心ではこのこだわりを実現することは難しいということでしょう。これが、石神井公園に出店した理由の一つだと思われます。
ちなみに、2番目の「こだわり」として紹介されているのが「伝統的な本格派ピッツァ」となっています。世界トップクラスのスキルを持っているわけですからそのスキルを前面に出して、最高のピッツァを提供する店舗として訴求することもできそうですが、それはあくまでも2番目ということです。
こういった部分からも地域密着を大切にしていることが伺えます。自社の方向性とメッセージや店舗の立地などが一貫していて素晴らしいですね。
また、地域に密着することで得られる効果として考えられるのが、差別化です。「ピッツェリア ジターリア ダ フィリッポ」の場合、世界トップクラスのスキルを持つシェフがいることが、自他ともに認める美味しいピザを提供することを可能にしています。
しかし、実は都心には美味しいピザ屋さんはたくさんあるようで、世界大会で優勝や入賞経験のある職人を抱えているお店もあります。つまり、都内でトップクラスのスキルを持った職人がつくる美味しいピザを食べたい場合、選択肢は意外と多いですし、顧客からみても、単純に実績やスキルだけでは、比較が難しいと思います。
このようにスキルで大きな差がつかない場合、スキルではない部分で違いを出すことが必要になってきます。「ピッツェリア ジターリア ダ フィリッポ」では、パティシエやバリスタなどの専門性が高いスタッフが、ピッツァ以外のメニューも充実させており、これが他店との違いとなっていますね。
そして、もうひとつ、違いとしてあげられるのが「地域密着」です。同じ本格派ピッツァでも、「地元」の食材にこだわった本格派ピッツァを提供することは都心の店舗には容易ではないわけですから、大きな違いになります。
ですが、ただ違いがあればいいのかというとそういうわけではなく、あくまでも顧客にとって意味のあるものでなければなりません。
地域の食材を使うということは、地域の方からすると、作っている方の顔が見えるわけですから安心感につながりますし、地元を大切にしているという姿勢が応援したいという気持ちにもつながると思います。
農家の方からみても世界一のスキルを持ち、食材にもこだわるシェフが、生産者の背景や想いをのせて、料理を提供してくれるというのは、うれしいことだと思いますし、応援したいと思うのではないでしょうか。
地元の商店街の方も、食材を購入してくれる「ピッツェリア ジターリア ダ フィリッポ」のようなお店を応援してくれるでしょう。
上記のように、地元を大切にする姿勢が、地域の顧客との信頼関係につながり、地域の顧客にとって、替えの利かない存在になっていくのです。
「ピッツェリア ジターリア ダ フィリッポ」はあくまでも、生産者の背景や想いをのせたピッツェリアを目指しているわけで、差別化を狙っていたわけではないかもしれませんが、戦略的にみてみると、実際に、地域に密着した結果として地元のファンが多く、常に店は賑わっているようです。
今後、「ピッツェリア ジターリア ダ フィリッポ」は地域に愛されるお店として、どのようなピッツェリアになっていくのか注目していきたいです。
◆戦略分析
■戦場・競合
- 戦場(顧客視点での自社の事業領域):ピッツェリアリストランテ
- 競合(お客様の選択肢):近隣のイタリアンレストラン など
- 状況:ピザ専門店の市場規模はやや拡大傾向のようです。
■強み
1.もっちり美味しいピッツァ
- 本格派ピッツァが楽しめる
- TVでも紹介されたドルチェピッツァも人気
2.ピッツァ以外のメニューも充実
- パティシエやバリスタなどの専門性が高いスタッフがメニューを提供
★上記の強みを支えるコア・コンピタンス
「確かな腕と窯や食材への徹底的なこだわり」
- ナポリピッツァ世界コンペティションで最優秀賞を受賞したオーナーシェフ
→オーナー以外のスタッフの方もピッツァの世界選手権の入賞者がおり、パティシエ、バリスタにも実力者が揃っているようです。 - イタリア伝統工芸の薪窯(まきがま)をナポリより輸入し使用
- 製粉機で挽いた地粉と、遺伝子組み換え無しの国産ピッツァ専用粉を独自に開発
- 地域密着(地元、練馬産にこだわった武蔵野台地の食材を使用、一部の食材は地元の商店街で購入)
上記のような実績(能力)やこだわりが強みを支えています。
■顧客ターゲット
- 食材や本物にこだわる方
→平日の昼間は女性客が多いようですが、幅広い層の顧客の支持を得ています
◆戦術分析
■売り物
「職人が焼き上げる50種類以上の伝統的な本格派ピッツァ」
- 日本の食材、とりわけ地元 練馬産にこだわった武蔵野台地の食材を使用
- こだわりイタリアンと相性のいいものを中心に、ビールやハイボールなど、様々なドリンクを提供
- パスタやその他一品料理、ドルチェも充実
- 90分制のリーズナブルなランチタイムも人気
- 店でお気に入りの食材があれば自宅用に食材を一緒に仕入れてくれます(業販価格でおすそ分け)
■売り値
「都心の相場よりは安めの価格設定」
- ピッツァマルゲリータSTG:2,300円
→2006年 2007年 2011年 2013年度受賞ピッツァ - ドルチェピッツァ NZW:2,000円
- 日替わりパスタA(ランチメニュー):1,000円
■売り方
- フィリッポオリジナルポロシャツ or 商店会収穫祭限定Tシャツ着用の方に1ドリンクサービス
■売り場
- 東京都練馬区石神井公園駅から徒歩5分
→都心から少し離れた住宅街です。 - テラス席や個室も用意
- 店の定休日に、地元のママが集まるイベントの場として、店舗を提供
※売り値や売り物などは調査時の情報です。最新の情報を知りたい場合は、企業HPなどをご確認ください。
image by: 「ピッツェリア ジターリア ダ フィリッポ」(食べログ)