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プーチン誕生日に反プーチンデモ。ついに「一強時代」崩壊か?

ロシア国民からの支持率が常に80%以上を誇るというプーチン大統領。しかし、今月7日の誕生日には「反体制デモ」が行われ、「プーチンなきロシアを」との声があがりました。反体制派の指導者といわれ、カリスマ的人気を誇るアレクセイ・ナバリヌイ氏は一体どのような人物なのでしょうか。無料メルマガ『ロシア政治経済ジャーナル』の著者でモスクワ在住の国際関係研究者・北野幸伯さんがナバリヌイ氏の人となりを紹介しながら、今後の政局を読み解きます。

プーチン65歳の誕生日に、「反体制デモ」

10月7日は、プーチンさん65歳の誕生日だったのですね。そんなめでたい日に、ロシアでは、「反プーチンデモ」が起こりました。

「プーチンなきロシアを」 反体制派リーダー逮捕に抗議

朝日新聞DIGITAL 10/8(日)19:15配信

 

ロシア各地で7日、反体制派指導者アレクセイ・ナバリヌイ氏の逮捕に抗議する集会やデモが開かれた。来年3月の大統領選を前にプーチン政権の汚職体質への批判の声は地方にも広がり、政権側はインターネット規制の強化などで運動の広がりを阻止する構えだ。

反体制派指導者アレクセイ・ナバリヌイ氏の逮捕に抗議する集会やデモ」だそうです。なぜナバリヌイさんは、逮捕されたのでしょうか?

ナバリヌイ氏は先月、大統領選に向けた選挙運動を開始。プーチン大統領の65歳の誕生日のこの日、プーチン氏の出身地サンクトペテルブルクで集会を予定していた。だが、2日に「無許可集会を呼びかけた」として逮捕され、20日間の禁錮となった。
(同上)

無許可集会を呼びかけた」から逮捕されたそうです。

ナバリヌイさんとは?

ところで、ナバリヌイさんて誰でしょう? 日本ではほとんど無名ですね。

1976年生まれの弁護士政治活動家。41歳です。カリスマ・ブロガーカリスマ・ユーチューバー。09年頃から、政府高官の汚職追及で有名になりました。2013年には、モスクワ市長選に立候補し、27%を獲得、2位につけます。2016年12月、2018年の大統領選挙に立候補すると宣言しました。

彼の代表的動画、「オン ヴァム ニ ディモン」といいます(意味は、「彼は、あなたのディモンじゃない」、ディモンというのは、メドベージェフのこと)。メドベージェフ首相の汚職を暴いたもの。

2,400万人以上(おそらくほとんどロシア人)が見た。それで、メドの汚職を追求する大規模デモも起こりました。この動画、ロシア語ですが、「メドの隠し資産のすごさ」がわかって面白いです。時間があれば、豪華別荘群の写真だけでもご覧になってください。

プーチンの代わりがいないロシア

ロシアでは、言うまでもなく「プーチン一強」です。そのレベルは、脆かった「安倍一強」とはわけが違う。2014年3月にクリミアを併合した後、ず~~~と8割台の支持率を誇っている。こういうと、必ず「っていうか世論調査、操作されてるのでは?」と聞かれます。もちろん、そんな可能性はありますね。それで私は、会う人会う人に、「プーチンどう?」と聞きます。ほとんどの人がプーチンを支持しています。というか、「他に人がいない」と。

ちなみに、ロシアは「共産党一党独裁」の中国とは違います。議会選挙があり、下院には4党いる(統一ロシア、ロシア共産党、ロシア自民党、公正ロシア)。しかし、与党も野党も、「プーチン批判を一切しないのです。彼らは、「システム内野党」と呼ばれます。

あなどれないナバリヌイの影響力

ロシアには、「システム外野党」もいます。ほとんど大した力はありませんが、唯一あなどれないのがナバリヌイさん。私は、長年彼について「デモを呼びかけてはしょっちゅう逮捕されている変わった人」と見ていました。しかし、「結構影響あるのかな」と感じが出来事が二つあった。

一つは、2013年のモスクワ市長選のとき。近所の80過ぎのおばあさんが、「ナバリヌイに投票してね!」と、熱心に選挙運動していた。話を聞くと、とても情熱的に彼のことを語っていました。

もう一回は、友人の誕生日会に行ったときのこと。そこには、モスクワ大学哲学科に通う天才少女と、そのお母さんがいた。誕生日会の最中に「政治議論」が始まってしまいました。その天才少女は、ナバリヌイ支持者。お母さんは、プーチン支持者。二人で熱い論戦になってしまい、周りの人たちが、「まあまあ落ち着いて」となだめなければならなかった。

私は、「80過ぎのおばあさんからモスクワ大学の天才少女まで支持を得ているナバリヌイさんは、結構すごい」と関心したのです。

しかし、プーチン一強は揺るがず

ちなみにロシアでは、2018年3月に大統領選挙があります。5カ月後ですね。面白いのですが、誰も正式に立候補していない。当然、誰も選挙運動していない。アメリカみたく、「2年間選挙戦が続く」のとはずいぶん違います。おそらく「政治的空白」(笑)をつくりたくないのでしょう。それに、誰が出てもプーチンには勝てません。プーチン以外に予想される候補は、

彼らは、90年代から大統領選に出て、毎回負けている人たちです。そして、勝つ気もない。ナバリヌイさんはおそらく出させてもらえないでしょう。いえ、出馬してフェアに戦っても、プーチンには勝てないと思います。結局、プーチンの時代は、最低あと6年間続きます。

メルケルさんは、4期目に突入。習近平は、もうすぐ2期目の5年が始まる(彼は、死ぬまで続けたいらしい)。安倍総理も、負けずに超長期政権をつくったらいいですね(しかし、消費税は上げないでください)。

image by: Semen Lixodeev / Shutterstock.com

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【著者】 北野幸伯 【発行周期】 不定期

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