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注意すべきは中国の罠。米国は日本の「改憲」に絶対反対なのか

以前掲載の「田原総一朗氏が暴露。安倍首相「改憲する必要なくなった」の衝撃」の中で、「米国は日本の集団的自衛権行使を求めているのであり、自国が作った憲法改正には反対の立場」と記した無料メルマガ『ロシア政治経済ジャーナル』の著者で国際関係研究者の北野幸伯さん。ところが読者の方から「米国の指導者層は日本の憲法改正に肯定的で、改正しないのは危険と考えられているという意見もある」とのメールが届きました。これに対する北野さんの見解は?

アメリカは、憲法改正支持に転じたのか?

読者のYさまから、こんなメールをいただきました。

北野様

 

いつもロシア政治経済ジャーナルを拝読しております。貴重な情報と独自の視点をありがとうございます。

 

ところで、日本の憲法改正について以前に、「米国は反対しているから無理に進めなくてもよい、憲法改正しなくても集団的自衛権を行使すれば十分…」というような趣旨のご発言があったと記憶しております。

 

しかし最近、産経新聞の古森義久さんのインタビュー動画を拝見していたら、米国の指導層は共和党も民主党も日本の憲法改正に肯定的で、むしろ改正しない方が危険との意見でまとまってきたとの情報を得ました。たとえば、チャンネル桜の「日いずる国より」という最近の番組で中山恭子さんとの対談でそのように述べています。

 

【日いづる国より】古森義久、アメリカから見た場合の日本国憲法[桜H29/10/13]

 

この問題について最新の御見解を記事にしていただけないでしょうか? よろしくお願いします。

お答えします(古森先生と中山先生の動画は、必見です!)。

中国の「武器」として使われていた「憲法改正」カード

昔からの読者さんには、おなじみの話で申し訳ないです。2012年9月、日本政府は尖閣を国有化しました。そして2012年11月、中国は「反日統一共同戦線略」を打ち出します。そう、ロシアと中国に、以下の提案をしたのです。

これ、新しい読者さんは、「トンデモ系」「陰謀系」に思えるでしょう? そう思われた方は、今すぐこちらの「絶対証拠」をご一読ください。

反日統一共同戦線を呼びかける中国

この話、中国、ロシア、韓国は、「日本と領土問題がある!」ということで一体化できます。しかし、日本とアメリカには、領土問題がない。

では、中国は、どうやってアメリカを「反日統一共同戦線」に入れようとしたのでしょうか? これは、「日本は『右傾化』している。『軍国主義化』している。『歴史の修正』を求めている」とプロパガンダを行った。

ちょうどいい時に、安倍さんが総理に返り咲いた。安倍総理は、「東京裁判は勝者の断罪!」「侵略の定義は定まっていない!」などと発言している。東京裁判史観をつくったのは、アメリカ。安倍さんはその史観を否定する。それで、アメリカから見ると、安倍さんは歴史修正主義者」なのです。

さらに中国は、日本が右傾化」「軍国主義化している証拠になる行動として、以下を挙げました。

なぜ憲法改正が「右傾化」「軍国主義化」の証拠になるのでしょうか? そう、日本憲法をつくったのがアメリカだから。アメリカは、「日本が二度とアメリカに反逆できないように」日本国憲法をつくった。日本がそれを「変えたい」ということは、「アメリカに反逆するという意味だ!」と。

バカバカしい!

私たちは、そう思いますね。しかし、リベラルで親中のオバマさんは、案外信じちゃったのです。それで、2013年12月に安倍総理が靖国を参拝すると、全世界でバッシングが起こった。中韓にとどまらず、アメリカ、イギリス、ドイツ、EU、ロシア、オーストラリア、シンガポール、親日の台湾までが、靖国参拝を非難した。これは、中国の戦略が大成功したのです。

私は、こういう一連の流れを知っていたので、こんなことを書いていました。「集団的自衛権行使容認はいいが、憲法改正は、米中を反日で一体化させる可能性が強いので、現段階では必要ない」と。この二つ、違いはなんでしょうか?

集団的自衛権行使容認の意味は、「アメリカは日本を守るが、日本もアメリカを守れるようにする」です。これは、「アメリカの利益」でもあるので、当然支持される。一方、「憲法改正」は、「アメリカ製憲法(=日本憲法)の否定」なので、反対される可能性がある。

しかし、古森先生の話によると、アメリカ支配者層の意見もずいぶん変わってきているようです。

【日いづる国より】古森義久、アメリカから見た場合の日本国憲法[桜H29/10/13]

考えられる理由は、2015年3月のAIIB事件で、アメリカは「中国こそが最大の脅威だ!」と悟ったこと。さらに、北朝鮮問題でも、戦争になれば、日本の協力が不可欠であること、などでしょう。

それでも、アメリカには、共和党、民主党といろいろいる。親日といわれる共和党ですが、たとえばトランプの顧問キッシンジャーは、反日親中で知られている。民主党の人たちは、概して親中で反日が多い。

というわけで、「憲法改正」については、ひろくアメリカ政治家の意識を調査してみる必要があるでしょう。少なくともトランプが憲法改正に反対という話は聞きません。それでも、「改正したら、アメリカと国際世論はどう動くのか?」を真剣に調査、分析、予測しておく必要があります。これを怠ると、「見事中国の罠に堕ちた」なんてことになりかねません。

「憲法は完全に国内問題だ!」と原則論を持ち出す人がたくさんいます。確かにそうなのですが、だからといってわざわざ中国の罠にはまって自分の首を絞めるのは愚かです。

ご理解いただけると思いますが、私は「アメリカ製日本憲法の信者」ではありません。ただ、「反日統一共同戦線」の実態を知っているという話です。もし、改正しても大した影響がないのならやったらいい。しかし、「その前にきちんと調査して影響を見極めましょう」という話です。

image by: 首相官邸

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【著者】 北野幸伯 【発行周期】 不定期

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