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信用していいのか。習近平氏が安倍首相に初めて見せた笑顔の意味

先日、安倍総理と会談した際に初めて笑顔を見せたという中国の習近平国家主席。安倍総理の地道な外交努力が功を奏し、最悪の状態だった日中関係も徐々に改善されつつある証とも言えますが、無料メルマガ『ロシア政治経済ジャーナル』の著者で国際政治に詳しい北野幸伯さんは、「日中友好は複数国との良好な関係があってこそ可能になることを忘れてはならない」と警鐘を鳴らしています。

なぜ日中関係は改善されるのか?

前号「一生忘れない。ようやく目覚めたトランプが再び中国の策に落ちた訳」では、「トランプ訪中」について書きました。アメリカと中国はお互い仲良くしよう!と最大限努力している。トランプは、言います。

習氏に向かい、「あなたに対して信じられないほど温かい感情を持っている。以前にも話したように、私たちは相性がぴったりだ。共に米中両国にとって素晴らしいことをしていると思う」と褒めちぎった。
(AFP=時事11月9日)

「あなたに対して信じられないほど温かい感情を持っている」そうです。これ、「本音」と解釈するべきでしょう。トランプさんは、ず~~~と、「私は習近平が大好きだ!」と言い続けています。最近では、「習近平は、毛沢東以上だ!」と絶賛しています。毎日新聞11月12日から。

中でも絶賛されたのが8~10日に訪問した中国の習近平国家主席。トランプ氏は「とても賢い人間。私は彼が好きだ」と述べ、「毛沢東以来の最強の指導者。毛より力を持っていると言う人もいる」と、建国者の毛沢東主席と比べて持ち上げた。

こういう状況なので、私は書きました。

こういう状況下で、「インド太平洋戦略」を日本が主導するのは大変危険です。この戦略の参加国は、日本、アメリカ、インド、オーストラリア。しかし、アメリカ、インド、オーストラリアは迷っている。ここで総理が、戦略を主導すれば、「笛吹けど踊らず」状態になり、日本が孤立する可能性が高まります。では、どうすればいいのでしょうか?

 

ダイヤモンドオンラインにも書きました。まず、「インド太平洋戦略」の「主役」をトランプ大統領にすることです。私たちが願っているのはあくまで、「アメリカを中心とする対中バランシング同盟」です。アメリカ抜きで、日本単独で中国と戦うことではないのです(日本一国で戦っても勝てません)。

 

もう一つは、中国への挑発、批判は控え、米中関係と日中関係を「同レベル」にすることです。つまり、日中関係は、米中関係程度に改善される必要がある。(しかし、常に 日米関係 >>> 日中関係 であることを忘れてはなりません。これをやめると鳩山時代のように、ひどいことになります)。

今日のテーマと関係あるのは、この部分です。

日中関係は、米中関係程度に改善される必要がある。

そして安倍総理は、習近平に会ったのです。結果は、どうだったのでしょうか?

改善された日中関係

皆さんご存知のように、安倍総理は11月11日、ベトナムで習近平さんと会いました。結果は

習主席、安倍首相との写真で笑み 日中、関係改善を確認

朝日新聞DIGITAL 11/12(日)7:44配信

 

「日中関係の新たなスタートとなる会談」──。安倍晋三首相と中国の習近平(シーチンピン)国家主席との日中首脳会談で、習氏が両国の関係改善に向け踏み込んだ。日中韓首脳会談の早期実現でも合意。両首脳にとって仕切り直しを宣言する友好的な会談となった。

 

両首脳にとって仕切り直しを宣言する友好的な会談となった。

だそうです。そして…。

習氏も6回目となる首相との会談で、首相と並んだ冒頭の写真撮影で笑顔を見せた。これまで習氏は首相と報道陣の写真に納まる際、硬い表情を崩さなかったが、今回は冒頭から対日姿勢の変化を印象づけた。
(同上)

習近平が安倍総理との写真撮影で初めて笑顔を見せたと。まあ、米中関係ほどではないにしろ、日中関係も改善されてきたようです。これ、保守派の皆さんは、心配になるのではないでしょうか? 「おいおい、安倍さん、何で習近平と仲よくしてんだよ!」と。わかります。

日中関係は、もう7年ほど最悪な状態にあります。これほど長く険悪な状態が続くと、「何で俺中国嫌いだったんだっけ?」と原因を忘れてしまいますね。今回は、日中関係の近過去を思い出し、中国との和解を目指す安倍総理の行動は日本の国益にかなっているのか、考えてみましょう。

なぜ、日中関係は「戦後最悪」になったのか?

詳述すると長くなるので、ざっくり書きます。

2008年9月、リーマンショックから「100年に一度の大不況」が起こりました。これで、アメリカは沈んだ。しかし、中国は沈まず、「一人勝ち状態」になります。世界中の国々の指導者たちが、「アメリカの時代は終わり中国の時代が来る!」と思った。

日本では、親米の自民党が没落。09年、親中反米の民主党が政権をとります。小沢さんは、北京から世界に向かい、高らかと宣言したものです。「私は、人民解放軍の野戦軍司令官である!!!!!!!」と(これ、冗談じゃないですよ。ウソだと思う人は、調べてみてください)。

そして、鳩山さんは、極めて短期間で、日米関係を破壊し尽くしました。幸い、鳩山内閣は、長く続かなかった。激怒したのが中国です。日本が「アッ」という間に、アメリカの方に戻り始めたからです。

そして、2010年9月に起こったのが、「尖閣中国漁船衝突事件」。皆さん、覚えていますか? 「レアアース禁輸」とか、驚きましたね。そして、中国政府の高官たちは、世界中でこんなことを言い始めました。

「尖閣は、中国固有の領土であり、『核心的利益』であ~る!」

中国は1970年代はじめから「尖閣は中国のもの」と主張していた。しかし、全世界に向けて大声で宣言したのは、2010年だった。この事件で、日中関係は、かなり悪化しました。そして、2012年9月、野田総理(当時)は、「尖閣国有化」を決断した。これで、日中関係は、「戦後最悪」になったのです(私は、「尖閣国有化」をもちろん支持します。しかし、それで日中関係が最悪になったのは、間違いない事実です)。

中国は、尖閣を強奪すべく、戦略をたてました。それが、皆さんご存知の「反日統一共同戦線戦略」です。戦略の骨子は、

「トンデモか?!」と思った新規読者さんは、いますぐこちらの【絶対証拠】をご一読ください。

● 反日統一共同戦線を呼びかける中国

日中関係は、なぜ改善されたのか?

「中国、アメリカ、ロシア、韓国で日本を破滅させよう! 尖閣、沖縄を奪おう!」

この戦略が出てきたのは2012年11月。日本では、翌12月、安倍さんが総理に返り咲きました。2013年、中国は、大金を投じて「反日反安倍プロパガンダ」を展開した。「反日統一共同戦線プロパガンダ部長」の朴槿恵さんは、「告げ口外交」で大いに習近平を喜ばせました。

そして、2013年12月、総理の靖国参拝をきっかけに、全世界で安倍バッシング」が起こった。「批判するのは中韓だけ!」と思っていたら、アメリカ、イギリス、ドイツ、EU、ロシア、オーストラリア、シンガポール、台湾などなどが、これを非難した。特にアメリカの反日、反安倍ぶりは、すごいものがありました。しかし、2014年3月、ロシアのクリミア併合で、総理は救われます。オバマさん、日本を対ロシア制裁網に入れなければならない。それで、総理と和解した。

2015年3月、「AIIB事件」勃発。イギリス、フランス、ドイツ、イタリア、スイス、韓国、イスラエル、オーストラリアなど「親米国家群」が、アメリカの制止を無視して、中国主導「AIIBへの参加を決めた日本だけはこれに参加しなかった。そして安倍総理は15年4月、アメリカで「希望の同盟演説」を行い、日米関係は大きく改善されました。この時から、日米関係は、一貫して良好なのです。「アメリカを反日統一共同戦線に入れる」という中国の野望は、とりあえず阻止されました。

2015年12月、日韓合意で、日本と韓国の関係はだいぶマシになった。とはいえ、「予想通り」というか、韓国の嫌がらせは続いています。それでも、朴槿恵さんの「告げ口外交時代」と比べれば、ずいぶんマシです。

2016年12月、プーチンさんが訪日。日ロ関係は劇的に改善されます。中国は、アメリカ、ロシア、韓国と組んで日本をつぶそうとした。安倍総理は、アメリカ、ロシア、韓国との関係を改善することで、「反日統一共同戦線戦略」を「無力化」させた。

中国が、今もし「尖閣強奪」に動けば、間違いなくアメリカが出てくる。ロシアは、中国をサポートしない。それで、中国は日本との和解に動きはじめたのです。

日中友好は、いいこと

皆さん、思い出してください。なぜ日中関係は「戦後最悪」になったのか? そう、中国が、「日本には尖閣だけでなく、沖縄の領有権もない」などと、トンデモ主張をしているからです。私たちの目的は尖閣と沖縄を守ること。中国が、トンデモ主張を停止すれば、和解してもいいのではないでしょうか?

思い出していただきたいのですが、2010年、2012年、日中関係が悪化したとき、日本企業は、大きなダメージを受けました。中国のような巨大な国とケンカするのは日本にとってリスクであり、損なのです。ですから、中国が、トンデモ主張をひっこめれば、ケンカするより、仲良くした方がいいに決まっています。

中国と和解する際の注意点

08~2017年の流れを見てきました。09年と2017年の「日中友好」は何が違うのでしょうか?

09年の「日中友好」は、「アメリカとの関係を破壊して中国に走った」のです。小沢さんは、事実上「日本は中国の属国になります!」と宣言した。一方2017年、日米関係は、戦後最良と言っていい。これを基盤に日中関係を改善させている。それで中国も、「関係をよくしたければ、尖閣を俺にくれ!」とは言えません。

日本は、アメリカと最良の関係にある。イギリス、インド、オーストラリアと「準同盟」の関係にある。ロシアともいい関係にある。「手を出せない状態にあるから習近平は微笑むのです。

もし、日米関係が最悪であれば、2010年の悲劇が繰り返されることでしょう。いえ、2010年レベルにとどまらないでしょう。今度は、尖閣を奪いに大軍が押し寄せてくることを覚悟する必要があります。

日中友好」これは、「日米友好」「日印友好」「日ロ友好の基盤があってこそ可能なのです。安倍総理は、「アメリカと不仲になっても中国と仲良くする!」と決断していた田中角栄さん、小沢一郎さんの過ちを決して繰り返さないよう、願っています。

image by: 首相官邸

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【著者】 北野幸伯 【発行周期】 不定期

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