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まだ間に合う。年金にかかる税金を1円でも安くしたい人がやるべき事

日本年金機構から届いた封筒を、開けもせずに放置―。忙しい人は特にやってしまいがちなことですが、その中身が「扶養親族等申告書」だったら大損してしまうかもしれません。今回の無料メルマガ『年金アドバイザーが教える!楽しく学ぶ公的年金講座』では、返信を忘れてしまいがちなこの書類の重要性について、著者のhirokiさんが詳しく解説しています。

年末だから…年金にかかる税金の徴収と確定申告

年末だし、税金を考える季節ですね。年金に関しては、今年は9月29日までが扶養親族等申告書の提出期限でした。普通は10月下旬から扶養親族等申告書送って、12月1日あたりがいつも期限なんですがマイナンバーの登録や扶養親族の氏名の登録事務のために前倒しで送られました。

さて、これを出してない人は、来年2月以降の年金からの源泉徴収税額がかなり高額になってしまいます。毎年、2月の年金振込みの時に「年金がすごい減ってる!」って驚かれる人がいますが、大体、扶養親族等申告書を出し忘れてるのが原因だったりします。もし…まだ出してない人はもう提出期限過ぎてますが出しましょう。出せば、4月年金振込とかそういう時にそれまで取りすぎた源泉徴収税額が年金振込口座に還付されます。

なお、毎回翌年12月31日時点で65歳未満の人は108万円以上の年金見込みである、65歳以上になる人は158万円以上になる見込みの人にのみ扶養親族等申告書は送られます。

※注意

遺族年金や障害年金は非課税

例えば平成30年12月31日時点というのは平成31年1月1日生まれの人まで含みます。もし平成31年1月1日に65歳誕生日の人も158万円枠。歳を取るのは誕生日の前日(平成30年12月31日)だから。

というわけで年金の税金の計算についてあらためて見ていきましょう。

1.昭和30年4月12日生まれの男性(今は62歳)

何年生まれ→何歳かを瞬時に判断する方法!

いきなりですが、この方は膝に人工関節を挿入置換(人工関節は障害等級3級相当だけど障害年金は貰えてない。身体障害者手帳5級交付されている)。62歳で定年退職した。現在は老齢厚生年金(報酬比例部分)95万円と、障害等級が3級以上(障害手帳の等級ではない)だからオマケで老齢厚生年金に定額部分70万円も付いている(厚生年金期間は20年以上有り)。更に65歳未満の生計維持している妻が居て、配偶者加給年金389,800円もオマケで前倒しして62歳から支給されている。

本来ならこの男性の生年月日だと老齢厚生年金(報酬比例部分)95万円しか支給されない人。配偶者加給年金が付くなら65歳からしか本来は付かない。

厚生年金支給開始年齢(日本年金機構)

よって現在の年金総額は老齢厚生年金(報酬比例部分95万円+定額部分70万円)+配偶者加給年金389,800円=2,039,800円(年金は偶数月に2ヶ月分支払われるからその額は339,966円)。ただし、この男性は年金年額108万円以上あるから税金がかかってくる。なお、妻は専業主婦(パート)で翌年見込所得は仮に60万円とします(控除対象配偶者)。

※注意

平成30年からは配偶者控除の見直しがされる。今までは年金(年金だけに限りませんが)の配偶者控除を使う場合は配偶者の見込所得が38万円まででしたが、来年からは85万円以下まで拡大。なお、38万円超えて85万円以下の場合は確定申告や年末調整の際は配偶者特別控除となる(配偶者特別控除の場合は配偶者が障害者であっても配偶者の分の障害者控除は使えない)。

ちなみに、年金に関しては年金受給者本人が合計所得金額が900万円超える人は配偶者控除が使えない。本人が合計所得金額900万円超えでも、配偶者が障害者に該当する場合で所得が38万円以下なら配偶者控除と障害者控除が使える。

配偶者控除の見直し(国税庁)

今年9月末までに扶養親族等申告書を出した。

となると、来年2月以降年金から源泉徴収される所得税はいくらになるか。まず、基礎控除を算出する。

※ 基礎控除→2ヶ月分の年金339,966円×25%+65,000円×2ヶ月分=214,991円

基礎控除は65歳未満は最低月9万円使える(2ヶ月分で18万円)。

よって、高いほうの基礎控除214,991円を使う。

配偶者控除は32,500円×2ヶ月分=65,000円。また、本人が普通障害者として障害者控除22,500円×2ヶ月=45,000円。よって2ヶ月分の年金339,966円-基礎控除214,991円-配偶者控除65,000円-障害者控除45,000円=14,975円。源泉徴収税額は14,975円×5.105%=764円。だから、毎回偶数月に支払われる年金339,966円-源泉徴収税額764円=339,202円が実際の年金振込額。

じゃあ、扶養親族等申告書を出さなかった場合はどうなるのか。この場合は基礎控除も各種控除も使えない。単純に339,966円×7.6575%=26,032円が毎回源泉徴収される。だから、実際の偶数月の年金機構からの年金支払いは339,966円-源泉徴収26,032円=313,933円となる。

もうべらぼうに源泉徴収されますよね)。だから、2月の振込額見て「一体なんでこんなに減ってんの!?」って驚かれる人が毎年ちょくちょくいるんですよね^^;。

ただ、扶養親族等申告書を出し忘れていた場合は途中からでも出しましょう。そうすれば、基礎控除とか各種控除を使って再計算しなおして、その後の年金振込時に取りすぎた税金が年金振込口座に還付されます。

じゃあ、確定申告する場合を見てみましょう。特に扶養親族等申告書出してない人はしないとですね…。

※参考

公的年金収入が400万円以下(厚年、基礎年金、共済、基金、確定拠出年金、確定給付年金等の公的年金収入すべて含む)、かつ、他の所得が20万円以下なら確定申告する必要はないですが市役所に住民税の申告はする必要が出てくる場合がある。まあ…しなくても、年金機構と共済組合から市役所に支払い報告書が行くから勝手に住民税や国民健康保険料とかの社会保険料が計算されて納付書が送られてきますけどね。ただ、公的年金以外に収入がある人はちゃんと市役所に確認してください。

というわけで、扶養親族等申告書を出さずに平成30年2月から12月まで、26,032円×6回=156,192円取られたものとして、平成31年になって確定申告(還付申告)した場合で計算します。

確定申告する場合は、公的年金等控除というのを使います。

公的年金等控除(国税庁)

まず全体の年金収入は2,039,800円。総合課税だけど、他の収入は無いものとします。他に普通徴収でとりあえず国民健康保険料を年間18万円と、介護保険料6万円支払ったものとする。65歳未満で公的年金収入2,039,800円から公的年金等控除を算出する。

・公的年金等控除額→2,039,800円×25%+375,000円=884,950円

所得税の課税所得は年金収入2,039,800円-公的年金等控除884,950円-基礎控除38万円-障害者控除27万円-配偶者特別控除38万円-介護保険料6万円-国民健康保険料18万円=0円。

※ 所得税→0円

次に住民税は2,039,800円-公的年金等控除884,950円-基礎控除33万円-障害者控除27万円-配偶者特別控除38万円-介護保険料6万円-国民健康保険料18万円=0円。

※ 住民税の所得割→0円

ただ、住民税は均等割が所得に関係なく5,000円くらいは取られますが、そこは市区町村に確認してください。

だから、今まで所得税の源泉徴収税額が26,032円×6回=156,192円徴収され過ぎてきたから、0円-156,192円=156,192円が還付。

一応、確定申告(還付申告)で税の精算の過程を示してみましたが、先程も書いてはいますが扶養親族等申告書を出してなかった人は年の途中で提出すれば、基礎控除や各種控除を使って源泉徴収の所得税を再計算して今まで取りすぎてた税金は還付する(年金振込口座に年金と一緒に還付金を振り込んだり奇数月の15日に還付したり)。

ただし、平成30年12月15日支払いに還付が間に合わない場合は平成31年になってから確定申告(還付申告の事)をする必要がある。最悪、平成30年10月末までに扶養親族等申告書を出せばなんとか12月15日支払いに間に合うかもしれないけど確約はできない。

なお、源泉徴収され過ぎた税金を還付してもらう場合(平成30年に引かれ過ぎた分は平成31年1月1日以降)は、確定申告時期を待つ必要はない。平成31年1月1日以降5年以内ならいつでも還付申告ができる。ただし、年金の源泉徴収票は1月下旬に届くので、それが届いてからの還付申告になる。あと、雑損控除や医療費控除、生命保険料控除みたいなのは還付申告でしか使えないので、もしそういうのもあるなら還付申告で更に還付金が多くなる人もいるでしょう。まあ今回はそこまでは必要なかったですが…^^;。

image by: Shutterstock.com

年金アドバイザーhirokiこの著者の記事一覧

佐賀県出身。1979年生まれ。佐賀大学経済学部卒業。民間企業に勤務しながら、2009年社会保険労務士試験合格。
その翌年に民間企業を退職してから年金相談の現場にて年金相談員を経て統括者を務め、相談員の指導教育に携わってきました。
年金は国民全員に直結するテーマにもかかわらず、とても難解でわかりにくい制度のためその内容や仕組みを一般の方々が学ぶ機会や知る機会がなかなかありません。
私のメルマガの場合、よく事例や数字を多用します。
なぜなら年金の用語は非常に難しく、用語や条文を並べ立ててもイメージが掴みづらいからです。
このメルマガを読んでいれば年金制度の全体の流れが掴めると同時に、事例による年金計算や考え方、年金の歴史や背景なども盛り込みますので気軽に楽しみながら読んでいただけたらと思います。

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【著者】 年金アドバイザーhiroki 【発行周期】 不定期配信

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