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米中が「朝鮮戦争後」を協議。米国は遂に戦争の準備を始めたのか

先日、国連は北朝鮮への制裁をさらに強化することを全会一致で採択しました。しかし、中ロが現在も北朝鮮を「緩衝国家」と認識している可能性は高く、朝鮮戦争をも視野に入れている米国にとって大きな障害となっています。そんな中、無料メルマガ『ロシア政治経済ジャーナル』の著者で国際政治に詳しい北野幸伯さんは、米国が中国側と交わしたというある約束に注目し、その意図について分析しています。

米中は、「朝鮮戦争後」について協議している!

北朝鮮問題で、動きがありました。そう、制裁がさらに強化されたのです。

石油、海運制裁を強化=対北朝鮮決議、全会一致で採択─国連安保理

12/23(土)3:31配信

 

【ニューヨーク時事】国連安全保障理事会は22日午後(日本時間23日午前)、北朝鮮による11月末の大陸間弾道ミサイル(ICBM)発射を受けた新たな北朝鮮制裁決議を全会一致で採択した。

「全会一致で採択」だそうです。しばしば拒否権を行使する中国やロシアも賛成だと。制裁の中身は?

決議は、北朝鮮への原油の年間輸出上限量を400万バレルあるいは52万5,000トンと設定。これまで過去1年分としていた上限量の数値を明確化した。石油精製品の年間輸出上限量については50万バレルと設定。従来の上限量である200万バレルから規制を強化した。米国は石油精製品の年間輸出量を450万バレルと推定。50万バレルとなれば、輸出が9割近く削減される計算になる。
(同上)

北朝鮮は、年間450万バレルの石油製品を輸入している。しかし、今後は年間50万バレルしか買えなくなるそうです。実行されれば、厳しいですね。

さらなる核実験やICBM級のミサイル発射には石油制限を強化すると警告した。
(同上)

金正恩がさらに核実験ICBM実験を強行すればさらに買える石油の量を減らすと。世界規模の「ABCD包囲網」です。

アメリカは、すでに戦争開始を決めた?

北朝鮮問題については、大きく二つの立場があります。「圧力強化」を進めるアメリカと日本。「対話」を主張する中国、ロシア。なぜ、中国、ロシアは、金正恩との対話を呼びかけるのでしょうか?

中ロは、アメリカの同盟国韓国が朝鮮半島を統一することを望んでいません。北朝鮮は、アメリカの「侵略」を止める「緩衝国家」である。だから、金正恩がクレイジーに見えても、守らなければならない「地政学的理由」がある。あるいは、金正恩を排除して、中国傀儡政権をたててもいいのです。

ところで、いろいろなところから、「アメリカは戦争を決意した」という話が聞こえてきます。理由は? アメリカ国防総省は、「北朝鮮がアメリカ全土を核攻撃できるというのは、現時点でブラフである。しかし、来年にはブラフでなく現実になる」と見ている。「アメリカは、クレイジーな北朝鮮が、いつでもアメリカを核攻撃できる状態にあるのは容認できない」と。それで、「戦争を決意している」と。ロシアの番組を見ていると「アメリカは戦術核を使う可能性がある」と報じられています。中国、ロシアが北朝鮮制裁を支持しているのは、アメリカが戦争を開始するよりは、「マシだ」ということでしょう。

米中は、「朝鮮戦争後」を協議している

ちなみにアメリカと中国は、「朝鮮戦争後について協議しています。

<米中>朝鮮半島有事で協議 核確保手段など詳細に

毎日新聞 12/13(水)21:29配信

 

【ワシントン会川晴之】ティラーソン米国務長官は12日、ワシントン市内で講演し、朝鮮半島有事に備え中国と詳細な危機対応策を詰めていることを明らかにした。米軍が休戦ラインの38度線を越え北朝鮮に侵攻した場合、いずれ韓国側に撤退すると中国側に確約したほか、核拡散防止のため、北朝鮮が数十発保有すると見られる核兵器の確保手段についても「中国と既に話し合った」という。

大事なポイントは、

米軍が休戦ラインの38度線を越え北朝鮮に侵攻した場合、いずれ韓国側に撤退すると中国側に確約した

ですね。なぜこれが大事?

既述のように、中国は、「アメリカの同盟国韓国が朝鮮半島を統一するのを望んでいない」「緩衝国家の消滅を望んでいない」でした。アメリカは、「非核化はするが、中国の緩衝国家は残す」と確約したと。これは、戦争時、中国が北朝鮮を支援しないようにしているのです。「俺たち(アメリカ中国の利益も尊重するから北朝鮮を助けたり邪魔しないでね!」と。

日本は、アメリカ、中国がこのような協議を行っていることを歓迎すべきです。なぜ?

中ロ北 対 日米韓 戦争を回避せよ

核を持つ北朝鮮は、恐ろしい。しかし、中国ロシアが緩衝国家北朝鮮を守るために大きく動くことはもっと怖い。え? ありえない?

こんな例を思い出してください。2013年、シリアで内戦が始まりました。アメリカ、欧州、サウジ、トルコなどは、反欧米のアサドを倒すため、「反アサド派」を支援しました。一方、ロシアは、イランと組んで、アサドを支援しました。そう、「シリア内戦、「欧米 対 ロシア代理戦争」に転じたのです。

で、この戦争どっちが勝ったの? アサドは、いまだ政権にあり、反アサド派も(シリア内の)ISもほぼ消滅しました。そう、この戦争に勝ったのはロシア、イラン、アサドだったのです! それで、これまで親米だったトルコ、サウジ、エジプトなどが、「新たな中東の覇者」ロシアに急接近しています。

問題は、ここです。プーチンは、「緩衝国家」を守るために、北朝鮮を支援しないでしょうか?中国に、「俺は中東でアメリカに勝った、あんた(中国)と俺が組めば、必ずアメリカに勝てる。一緒にアメリカ幕府を倒しちまおうぜ!」と説得し、成功しないでしょうか?

こういう状況にならないために、米中が「朝鮮戦争後」について話し合うのは、いいことなのです。日本にしても、核さえなければ金体制が存続してもまったく困りません

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【著者】 北野幸伯 【発行周期】 不定期

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