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北朝鮮問題、トランプの華麗な手のひら返しで北との対話に動くのか?

前回掲載の「米国とは対立、韓国とは急接近。北に対して日本はどう動くべきか」では、「米国とは対立を深め、韓国とは急接近した北朝鮮」という観点で、今年の北朝鮮情勢を占った無料メルマガ『ロシア政治経済ジャーナル』の著者で国際政治に詳しい北野幸伯さん。今回は、「トランプ大統領が北朝鮮との対話に意欲を示している」という驚きの事実について、専門家の視線で詳しく考察しています。

え? トランプは、北朝鮮との対話に意欲的なの???

米国とは対立、韓国とは急接近。北に対して日本はどう動くべきか」の最後に、こんなことを書きました。

というわけで、アメリカも、「戦争」「圧力」「対話」でゆれています。そんな中、日本一国だけが、「圧力路線を絶対維持だ!」などとがんばればどうなるでしょうか? そう、「日本だけが戦争を望んでいる」「好戦的な国だ!」となるでしょう。

 

しかし、実をいうと日本は、「戦争を望んでいる」のではないですね? 「自分はできるだけ何もしないで、アメリカに北朝鮮を成敗して欲しい」と思っているのでしょう??? これは、アメリカから見ると、非常に狡猾です。

 

日本政府は、北朝鮮問題について情報収集を怠るべきではありません。トランプは、こんなことをいいました。

 

「トランプ氏は4日、『私が、力の行使も辞さない断固とした強い姿勢で北朝鮮問題に臨んでいなければ、誰が南北の対話開始を信じられただろうか』とツイート。自らの北朝鮮政策が対話機運の高まりにつながったと自賛。『対話は良いことだ』と述べた。(毎日新聞1月5日)」

 

「対話は良いことだ」そうです。だから、安倍総理もいうべきです。「韓国と北朝鮮の対話がはじまったことを歓迎する。世界に核戦争をのぞむ人は一人もいない」と。少なくとも、今は…。

この話、続きがあります。トランプさんは、さらに「対話に意欲を示しました。

トランプ米大統領、北朝鮮との対話に意欲 南北対話にも期待

CNN.co.jp 1/7(日)14:07配信

 

ワシントン(CNN) トランプ米大統領は6日、記者団との会見で、北朝鮮の金正恩(キムジョンウン)朝鮮労働党委員長と対話することに抵抗はないと話し、韓国と北朝鮮が予定している会談の成果にも期待を示した。
(同上)

トランプが、金正恩と対話することに抵抗はないそうです。そして、韓国、北朝鮮会談の成果にも期待しているそうです。

トランプ氏は首都ワシントン近郊の大統領山荘キャンプデービッドで記者団に、「私はもちろんいつでも対話には賛成だ」と語った。同氏と正恩氏はともに強硬な立場を主張していると述べる一方、対話については「ぜひやりたい。何の抵抗もない」との姿勢を示した。

対話について、「私はもちろんいつでも対話には賛成だ」「ぜひやりたい。何の抵抗もない」だそうです。皆さん、「あれ~、なんか今までと話が違うぞ!?」と思われていますか? ですね。そうですが、起こっていることは、「起こっていること」として知っておく必要があります。トランプは、「ぜひ対話したい」と言っているのです。

この発言を受けて記者団からは、北朝鮮との間で前提条件は必要ないということかという質問が出たが、トランプ氏は「決してそういう意味ではない」と答えた。そのうえで、対話が何らかの成果を生み出せば、それは「人類全体にとって素晴らしいことだ」と強調した。
(同上)

「前提条件は必要ないということか」

この質問は何でしょうか? アメリカは今まで、「北が核兵器とICBMを放棄する準備があるなら対話することができる」と言っていた。これが「前提条件」です。つまり、「北が核兵器とICBMを放棄するかわりに、金王朝を存続させてもいい」と。

ところが、金正恩は、アメリカが核開発を放棄したカダフィを殺したことを知っています。だから、アメリカを信用できない。トランプさんは、要するに「北に核を放棄させるという目標はぶれてない」と言ったのです。

トランプ氏はまた、「韓国の文在寅(ムンジェイン)大統領から2~3日前に電話があって素晴らしい会話を交わした」と述べ、9日に予定される南北会談がうまくいくよう願っていると語った。韓国で開催される平昌(ピョンチャン)冬季五輪に北朝鮮が参加の意向を示していることについても、「100%支持する」と述べた。
(同上)

文さんにとって、今は核問題より五輪問題が重要ですね。

結局戦争になっても、対話はするべき

問題を整理しておきましょう。1月1日、金正恩は、アメリカ本土を核攻撃できるICBMが完成したので、実戦配備を命じたと宣言しました。これに対し、アメリカ国防総省は、「アメリカ全土を核攻撃できるというのは現状ウソだが近い将来本当になる」との見解を出した。「残された時間は少ない」と。

一方、北朝鮮は、アメリカのいかなる脅しにも屈しません。既述のように、リビアのカダフィは、欧米と和解するために核開発を断念した(03年)。しかし、彼は2011年に殺されました。金正恩が、「アメリカは絶対信用できない」と思うのは当然でしょう。彼が核兵器を放棄することはあり得ないと思います。

さらに問題を複雑にしているのが、中国とロシア。この二国は、「最大唯一の脅威はアメリカだ」と考えている。それで、地政学的に、「北朝鮮は、われわれの緩衝国家だ」と考えている。この二国は、北朝鮮をこっそり守っています。

こういう現状ですが、実に難問です。日本、アメリカ、韓国、北朝鮮、中国、ロシアをみんな満足させる道が見つからないのです。結局戦争になる可能性がある。しかし、日本、アメリカは、以下二つのことをしておく必要があります。

1.国連安保理を通して、いけるところまでいくこと

アメリカは、イラク戦争時、国連安保理を完全に無視しました。常任理事国の三国、すなわちフランス、ロシア、中国は戦争反対。しかし、アメリカは強行した。結果、この国の評判は、失墜しました。

アメリカ、今回は国連安保理を重視しています。制裁案を提出しても、中ロが訂正案を出してくる。アメリカは、制裁案の中身よりも「全会一致を重視しています。それで、対北制裁は、徐々にですが、確実に強化されてきている(中ロは、こっそり北支援を続けているが…)。

2.対話の可能性があれば、対話すること

なぜこの二つが重要かというと、「日米は、平和のためにありとあらゆる努力をしたが、北朝鮮があんななので、仕方なく戦争になったのだ」と国際社会を納得させるためです。

可能性は低いですが、「国連安保理」や「対話」で、北朝鮮が核放棄を決意したらどうなるのでしょうか? それはそれで、大いにめでたいことです。大歓迎するべきでしょう(繰り返しますが、そうなる可能性は、ほとんどありません)。

というわけで、前々号に続き、同じ結論を書きます。トランプさんが言うのですから、日本政府も、「対話を歓迎する日本は常に平和を望んでいる」などと、さらりとコメントすべきですね。

 

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【著者】 北野幸伯 【発行周期】 不定期

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