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米国の「利上げ」に世界経済が胸騒ぎ、日本はスタグフレーションへ

2月5日に1175ドル安という史上最大の下げ幅を記録したNYダウ平均株価。翌日6日の日経平均株価も大幅安となり、世界中で「株バブルの崩壊」が叫ばれています。今回のメルマガ『国際戦略コラム有料版』では著者の津田慶治さんが、米国の金利上昇で何が起き、これからの日本経済で何が起きようとしているのかを予測。さらに日本が取るべき破綻防止策について持論を展開しています。

株バブル崩壊後のシナリオ

2月の第2週は、世界の株バブルが崩壊した。米国の金利上昇で何が起こり、日本はどうなるのか? それを検討しよう。

米金利上昇と株暴落

中国の米国債売却により、米国の10年国債の金利が2.835%に急上昇したことと、米国雇用統計で賃金上昇、トランプ大統領の法人税の減税やインフラ投資などで米国債が大量に売り出されるということで、国債の需給バランスから株暴落後も金利が2.83%前後に張り付いている。

FRB政策金利は1.75%であるが、10年国債金利3%で債券の金利が3%程度になると、配当利回りを相当に大きくしないと株投資より元本が保証されている債券投資に資金が行くことになる。

FRBは短期金利は決められるが、長期金利は10年国債金利であり、決めることができない。FRBが日銀と同じように量的緩和を行えばよいが、景気回復期の局面では行えない

現在の米国は、債券バブル・株バブルなど資産全体がバブル状態であり、個人や企業は安い金利で借金して投資していたようであり、金利が上がることで借金を返す必要が出て株売却などで資金収縮を起こしたともいう。

レバレッジを利かした投資を企業や個人が行っていたようである。

銀行などは規制できないので、リーマン・ショックのようにはならないというが、まだわからない。

また、VIX指数でリスク計算して株、債券などの分散投資している投資信託が一斉に株から債券に移動したことで、株が暴落したと米国では騒いでいる。

心配なのが、テスラである。電池のパック工程の自動化ができずに生産量が伸びない。このため、今年も約2150億円の赤字であり、今後、債権発行の金利を3%以上にしないと誰も買わない。資金繰りができるのかとの疑問が起きる。もし破綻すると、NY株は相当に落ちることになる。今回の暴落で2割株価が落ちたが、まだ相当に高い。

中国の状況

中国株はここ数週間、上場企業の相次ぐ業績下方修正を受け、いくらか中国国内要因からの下げ圧力を受けていたが、中国の国営メディアは、中国株価の急落はウォール街のせいだと論じている。

今までは、政府系の大型投資ファンドを頻繁に使って、市場の安定を図ってきたが、このファンドが登場せずに、上海市場は6日に3.4%安と、1日の下げ幅としては中国の株式市場が長期低迷期にあった2015年8月20日以来の大幅安を演じた。翌7日も1.8%続落した。

都合、上海市場の下落率は12%にもなっている。そして、米中の市場が暴落していることになった。特に中国は人民元安、債券安、株安というトリプル安になっている。世界の経済大国1位、2位の米中の逆資産効果は、世界の景気を冷やすことになる。新興国から資金が逃げている

日本はどうなる

今後、日本の金利0%米国3%になると、日本株の取引主体である海外投資家が逃げ、日本株から米国債券という動きが出ると予想できる。日本企業は海外でのもうけを円に換える必要があり、大幅な黒字であるなら円高になるはずが、1ドル108円程度になっている。海外投資家が逃げているためにこうなる。事実、11月から海外投資家は逃げ始め、1月中旬以降は量が増えている。しかし、株価を維持し損をしないように、一挙には逃げていない。

そのうち、日本人や日本企業も海外での債権の方が金利がよいということで、円からドルなどに換えることで円安ドル高になる。1ドル=130円程度にはなる。

円安ドル高で石油や輸入飼料を使う肉などの食料、その他の輸入品の値段が上がり物価上昇局面になる。海外投資家が逃げるので株安円安になり、国内消費が減って日本の景気は下がりスタグフレーションになる。日本企業の海外での売り上げは順調であるが、国内消費が大幅になくなる

しかし、物価は2%上昇で日銀は金融緩和量的緩和を止めることになる。スタグフレーションでは円札を回収する必要があるが、金利上昇を起こすので、手持ち国債を売ることもできず。買った株ETFも、株の一段安になるので売れずに、スタグフレーションを放置するしかない。

すると、日本国債は格付けAであり、信用度が低く国債金利も3%以上になり、国債発行高1000兆円の3%以上が毎年利子の支払いに必要になる。このため、毎年30兆円以上に。

ここで財政均衡ができていないと、この金利が膨らんでいくことになる。雪だるま式に膨らみ、予算の半分以上が国債費となる可能性がある。こうなると、格付けがBレベルになり、日本国債がデフォルトする可能性も出てくる。そして、日本は破綻となる。

日本の破綻防止策

日本の破綻を止める方法は、いびつさを増大する金融政策しかないことになる。マイナス金利はゼロ金利に上げることは、銀行を守る必要からやるべきであるが、物価2%上昇しても今の量的緩和を止めないことである。これにより、10年国債金利をゼロのままにすることである。株安を止めるために株ETFも買い続けることになる。

海外投資家が逃げた分を買うしかない。これから本格的な日本売りが来る。

この政策をすることで、財政ファイナンスと見られて円安ドル高はより大きくなるとみる。1ドル=200円程度になり物価はより高くなる。こうなると、日本企業の売り上げが増すので、税収を維持できる。日本売り後の株価も上昇することになる。そしたら、株ETFを売り出して株バブルを止めることである。

これを行うために、今までの責任者である黒田日銀総裁を再任するようである。

この政策とともに、社会保障費を縮小し、女性の出産を促す政策をして、人口減少を止めて、かつ財政再建を行う必要がある。財政均衡化ができた後に、日銀の金融緩和を縮小することである。それまでは財政ファイナンスと思われても金融緩和ができない。

安倍首相はどうするべきか?

国民はスタグフレーションで苦しくなり、自民党政権の国家運営を問題視することになる。この問題の焦点は安倍首相とアベノミクスとなることが確実だ。放漫財政で国をつぶしたと言われる。

量的緩和の提唱者の経済学者クルーグマン氏から理論が間違っていたと謝られて、財政均衡が重要であるとやっと、安倍首相も気が付いたが、金融緩和のアベノミクス基幹政策を否定できないので、辞任するしかない。

その上に、モリ・カケ・スパ問題と婦女暴行犯の不起訴問題などで政権を失った後、今の野党が政権を取ったら、安倍首相を始め、多くの政権中核メンバーが罪を問われる可能性が高い。

国民からの怨嗟の声と今までのやりたい放題の政策運営が一挙に問題視されることになる。まるで田中角栄元首相のような感じだ。

ここは、角栄さんと同じく安倍首相は、11月の総裁選挙に出ずに、岸田総務会長に総裁を譲り、安倍首相は岸田さんのバックアップに回り、岸田総務会長の財政再建の政策を支援するべきである。

自民党がアベノミクスの悪い結果を財政再建策でカバーして、次の総選挙で勝たないと、国民は自民党から野党に政権を渡すことになる。

さあ、どうなりますか?

 

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国際的、国内的な動向をリアリスト(現実主義)の観点から、予測したり、評論したりする。読者の疑問点にもお答えする。

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【著者】 津田慶治 【月額】 初月無料!月額660円(税込) 【発行周期】 毎月 第1〜4月曜日 発行予定

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