「きちんと伝えたはずなのに、みんな覚えが悪い」「あの時、大丈夫って言ったのは嘘だったのか」等々、研修後に各所から上がるこんな声……。これ、何が原因で起こってしまうのでしょうか。今回の無料メルマガ『ビジネス真実践』では著者で戦略コンサルタントの中久保浩平さんが、研修やOJTなどを行う前に絶対に知っておきたい「指導する側とされる側のギャップ」について解説しています。
意味あるOJTや研修をする
人材育成の一環で規模や業界関わらず様々な企業が社内のルール、マニュアル、基礎知識などを教えたり、キャリアップのため研修やOJTなどを行っています。そうした研修やOJTの際に、ある一定のところまで教え、
「ここまでで何かわからないこととかありませんか? 大丈夫ですか?」
と聞くと、大抵が
「大丈夫です。問題ありません」
と応えます。果たして、この「大丈夫です」は本当に大丈夫なのでしょうか?
非常にわかり易い例で例えます。例えば、新入社員にAという製品についてスペックや用途といった基礎知識を説明し教えます。ひととおり教えたところで、「大丈夫?」と聞くと、新入社員は「大丈夫です」と応えます。「では、今説明したAという製品についてそのまま説明してみてくれる?」と尋ねると、新入社員はタジタジになってしまいます。そう、大丈夫ではなかったのです。
ではなぜ大丈夫じゃなかったのでしょうか? そこには、指導する人の「大丈夫」と新入社員の「大丈夫」とにギャップがあるからです。
- 指導する人の意図する大丈夫は「Aという製品が説明できるレベル」
- 新入社員の意図する大丈夫は「Aという製品の内容を理解するレベル」
研修やOJTを行うと、こうしたギャップは細かな所で多々生じます。そして、このようなギャップが生まれる主な要因は3つあります。
- 指導する際に「大丈夫なライン=ゴール」がきちんと決めれられていない
→先ほどの例からいくと、Aという製品を説明できるようになるのがゴールであることの共有不足。 - 「大丈夫?」と聞かれたら条件反射的に「大丈夫」と応える
→多くの人がこの傾向にあります。性格にもよるでしょうが、仕事の現場ではとくに「相手に弱みを見せたくない」「出来ないヤツだと思われたくない」「評価に響く」などの要因により、オウム返しでそう応えてしまう人が多い。 - 本人が大丈夫だと思っていても他人から見ると大丈夫じゃない
→本人が自信を持って大丈夫だと思って業務をこなしていても他人からすると全然業務が出来ていないように映る。能力判断や評価について客観的に基準がないことから起こるケース
こうしたギャップを生み出す要因を十分に踏まえて研修やOJTを実施しない限り、せっかくの研修やOJTは徒労に終わります。
では、人材育成の研修やOJTを無駄にしないためにはどのように実施すればいいでしょうか? それは簡単なことで、先に挙げた3つの要因を指導する人が指導される人に伝え、理解してもらった上で実施することです。
「今から始める研修の最終目標はみなさんが、○○出来るようになることです。よろしいですか?」
「今日行うOJTでは、Aさんが○○について自信を持って取り組んで貰えるようになることが目的です」
「今から始める研修について1つだけお願いがあります。どんな些細なことでも構いません。不明点や分からないことはその場でスグに挙手してください」
「大丈夫だと思っていても第三者から見ればそうではないこともあります。今日のOJTでは、Aさんは普段通り業務を実施してください。そのうえで客観的に見てAさんの業務をより良いものにしていきましょう」
いかがでしょうか? このように研修やOJTを実施する際には必ず初めに意図すること、目的などを明確に伝え、そのことを互いに理解・合意した上で実施することです。そうでないと、いつまで経っても「やらされてる研修やOJT」「業務の一環」で終わり、時間もコストも無駄になります。
御社では、研修やOJTプログラム、きちんと機能していますか?
■今日のまとめ
『大丈夫じゃないことを前提に研修やOJTを行う』
- 研修やOJTを実施する目的を列挙する。
- 列挙したことを実施する人、される人、双方理解合意して行えているか? 社内でチェックする。
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