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妻は大丈夫?専業主婦でも年金保険料を納めなくてはいけない理由

サラリーマンの妻でパートタイマーの方々が年金保険料を支払わずに年金が貰えるようにするために「130万円の壁」と言って年収額の調整をする話はよく聞きますよね。しかし、実はサラリーマンや公務員の妻がずっと年金保険料を支払わないかというと、そうではなく、働く女性に比べて優遇されているわけではないようです。無料メルマガ『年金アドバイザーが教える!楽しく学ぶ公的年金講座』で、著者のhirokiさんがその理由について、事例を含めながら詳しく解説しています。

サラリーマンや公務員の専業主婦(主夫)であればいつまでも年金保険を料納めなくていいわけじゃない

よく、年金保険料を支払わないでも年金が貰えるっていうサラリーマンや公務員の専業主婦(主夫)を第三号被保険者って言いますが、この第三号被保険者期間は老齢基礎年金に反映します。この第三号被保険者の人は全国に910万人くらいですね。

なお、年収見込み額が130万円以内に抑えるという条件がある。だからよくパートさんやアルバイトさんの中では130万円の壁とか言われる。一昨年くらいからは106万円の壁も新たに出ましたがこの記事では収入に関しては割愛して話を進めます。

第三号被保険者は保険料支払わずとも年金額に反映されるから、特に働く女性からよく批判されますが、別に優遇されてるわけじゃない

さて、よく勘違いされるのは配偶者がサラリーマンや公務員である限りずっと第三号被保険者っていうわけではありません。あくまで、専業主婦(主夫)の人が国民年金の強制被保険者になる20歳到達月から60歳到達月の前月までの480ヶ月の間のみ第三号被保険者になる事ができます

また、今回のような場合も気を付けておく必要があります。

うっかり自分は第三号被保険者だと思ってたら、自分で国民年金保険料を支払わないといけない国民年金第一号被保険者になっていたって事もありますので…。逆にそのまま第三号被保険者記録になっていた第3号不整合記録問題もあり、そういう人は記録が訂正されます。間違った記録で年金貰ってた人も今月から訂正されて年金減額されてる人もいる。

あなたのお宅もヤバいかも。年金の「第3号不整合記録問題」とは(参考記事)

というわけで事例。

1.昭和28年4月11日生まれの男性(今は65歳)

何年生まれ→何歳かを瞬時に判断する方法(参考記事)

20歳になる昭和48年4月から昭和50年6月までの27ヶ月間は昼間学生。この部分は国民年金には強制加入ではなく、任意加入だった。保険料は納めなかったがカラ期間にはなる。

昭和50年7月に学生を中退し、海外へ在住することになった。昭和53年8月までの38ヶ月間は海外在住した。なお、この海外在住期間はカラ期間になる。

※参考

昭和61年3月までの海外在住期間は国民年金には加入できずに適用除外だった。昭和61年4月からは海外在住していても、日本国籍があれば国民年金に任意加入できる。ついでですが、60歳から65歳まで国民年金に任意加入できるようになったのもこの昭和61年4月から。

昭和53年9月から民間企業に就職し厚生年金に加入(第二号被保険者と言う。平成27年10月からは第一号厚生年金被保険者ともいう)し、今現在も継続雇用で70歳(2023年4月)まで働くつもり。

厚生年金は最大70歳までは加入できる。厚生年金は平成14年3月までは65歳までの加入だったが、平成14年4月以降は70歳まで延長された。

昭和60年12月に現在の妻と婚姻。

じゃあ次に妻。

2.昭和38年19月6日生まれの妻(今は54歳)

18歳年度末の翌月である昭和57年4月から婚姻する月の前月である昭和60年11月までの44ヶ月は民間企業で厚生年金に加入。平均的な給与(平均標準報酬月額)は20万とします。20歳到達時は昭和58年10月。婚姻した月である昭和60年12月に寿退職し、専業主婦となる。ここからは、サラリーマンの専業主婦。

昭和60年12月から昭和61年3月までの4ヶ月は国民年金には強制加入ではなくて、任意加入だった。この4ヶ月は任意加入しなかった。任意加入しなかったらカラ期間となる。

今の第三号被保険者制度は昭和61年4月からの制度。よって、昭和61年4月からずっと第三号被保険者として、国民年金保険料を納めなくても納めたものと扱うようになった。

今現在平成30年4月時点で54歳ですが、この妻は平成30年4月をもって第三号被保険者から外れる。つまり、平成30年4月から国民年金保険料月々16,340円(平成30年度の保険料額)を支払う必要がある

昭和61年4月から平成30年3月までの384ヶ月が第三号被保険者。平成30(2018)年4月から60歳の前月である2023年9月までの66ヶ月を未納にしたとします。

まだ妻は60歳に到達してないし、また、夫はあと5年間はサラリーマンをやるっていうのになんで、第三号被保険者から外れるのか。

これは、ある理由があって老齢の年金受給権がある夫(年金保険料納付済み期間+免除期間+カラ期間≧10年)が65歳に到達し、その後厚生年金に加入しても妻は第三号被保険者にはなれない

平成14年4月からは厚生年金加入が65歳から70歳まで延びてるやん! って話ですが、この延長の時に第三号被保険者も夫が70歳まで延長する事にはならなかったから。なお、老齢の年金受給権を満たしてない人が65歳以降も厚生年金に加入してる場合は第三号被保険者になる事ができる。

まあ、とりあえず第三号被保険者期間は妻自身の国民年金保険料は支払う必要は無いが、年金期間には保険料納付済み期間になる。

この妻の有効な年金記録は、保険料納付済み期間(44ヶ月+384ヶ月)+カラ期間4ヶ月≧10年を余裕で満たす。この妻のこの時点での65歳からの年金総額を算出。以下は全て平成30年度価額です。

・老齢基礎年金→779,300円÷480ヶ月×410ヶ月(20歳から60歳前月までの期間)=665,652円

※注意

なぜ44ヶ月+384ヶ月=428ヶ月で計算せずに410ヶ月なのかというと、国民年金からの給付である老齢基礎年金は20歳以降の期間から含める。この妻は20歳前からの期間が18ヶ月あるから老齢基礎年金の計算から省く。

・老齢厚生年金(報酬比例部分)→20万円÷1,000×5.481×44ヶ月=48,233円

また、国民年金は20歳から60歳までという縛りがあるが、厚生年金は70歳までの全体の期間で見るため、この期間の差額を埋めるための「差額加算(経過的加算)」という給付を老齢厚生年金に加算する。

・老齢厚生年金(差額加算)→1,625円×44ヶ月-779,300円÷480ヶ月×26ヶ月(昭和36年4月以降20歳から60歳前月までの厚生年金期間)=71,5007円-42,212円=29,288円

よって、妻の65歳からの年金総額は老齢厚生年金(報酬比例部分48,233+差額加算29,288円)+老齢基礎年金665,652円=743,173円(月額61,931円)

なお、この妻は昭和41年4月1日以前生まれで、配偶者である夫に配偶者加給年金が付く人(厚生年金期間20年以上等)だから妻が65歳到達時に振替加算年額15,028円(妻の生年月日に応じての額)が老齢基礎年金に付く場合がある。振替加算は原則として終身。

なお、この記事では振替加算をもらうのは妻ですが、夫が逆の立場なら夫でも振替加算が貰える。妻でないと貰えないわけじゃない。

振替加算額(日本年金機構)

image by: Shutterstock.com

年金アドバイザーhirokiこの著者の記事一覧

佐賀県出身。1979年生まれ。佐賀大学経済学部卒業。民間企業に勤務しながら、2009年社会保険労務士試験合格。
その翌年に民間企業を退職してから年金相談の現場にて年金相談員を経て統括者を務め、相談員の指導教育に携わってきました。
年金は国民全員に直結するテーマにもかかわらず、とても難解でわかりにくい制度のためその内容や仕組みを一般の方々が学ぶ機会や知る機会がなかなかありません。
私のメルマガの場合、よく事例や数字を多用します。
なぜなら年金の用語は非常に難しく、用語や条文を並べ立ててもイメージが掴みづらいからです。
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【著者】 年金アドバイザーhiroki 【発行周期】 不定期配信

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