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どうした習近平。米国の対決姿勢に焦り軍事行動をエスカレートか

南北朝鮮首脳会談がいよいよ27日金曜日に迫りましたが、ここに来て中国がベトナムなど周辺諸国に対して不穏な動きを見せています。台湾出身の評論家・黄文雄さんは自身のメルマガ『黄文雄の「日本人に教えたい本当の歴史、中国・韓国の真実」』で、これらの動きは「習近平の焦りが表れたもの」と断言。その原因はトランプ大統領の対中姿勢に起因するとし、「ここ数週間でアジア情勢が大きく動く」と予測しています。

※本記事は有料メルマガ『黄文雄の「日本人に教えたい本当の歴史、中国・韓国の真実」』2018年4月24日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会にバックナンバー含め今月分すべて無料のお試し購読をどうぞ。

プロフィール:黄文雄(こう・ぶんゆう)
1938年、台湾生まれ。1964年来日。早稲田大学商学部卒業、明治大学大学院修士課程修了。『中国の没落』(台湾・前衛出版社)が大反響を呼び、評論家活動へ。著書に17万部のベストセラーとなった『日本人はなぜ中国人、韓国人とこれほどまで違うのか』(徳間書店)など多数。

【中国】南北首脳会談を前に軍事行動を活発化させる習近平の焦り

ベトナム漁船が中国船の攻撃で沈没 銃所持、書類への署名・押印要求

中国が、南沙諸島で突然、軍事演習を行ったりしはじめたのが2007年でした。それから10年の間、南沙諸島ではたびたび中国による理不尽な行為が行われており、その都度ニュースになっています。あまりに頻繁にあるため、ニュースを見ても、「またやってるな」と思う程度になっている人も多いでしょう。最近も上記のようなニュースがありました。以下、報道を引用します。

中国とベトナムが領有権を主張する南シナ海パラセル(中国名・西沙)諸島のリンカーン(東)島近海で4月20日、ベトナム漁船が中国船2隻から攻撃を受け、沈没していたことが分かった。ベトナム漁業者組合(VFS)が23日、明らかにした。

 

沈没船は、ベトナム中部クアンガイ省所属。船長は地元メディアに、全長約50メートルの中国船2隻から体当たりを受けてエンジンが故障し、銃を持って乗り込んできた5人から、書類への署名と指紋押印を求められたと語った。6人の船員は、近くの僚船に救出された。

 

VFSのグエン・ベト・タン議長は、中国船は漁船を装い、ベトナム漁民を追い払う目的で哨戒中だった可能性を指摘した。越メディアによると、南シナ海では今年3月以降、ベトナム漁船10隻以上が、中国船から攻撃や略奪を受けた。

この記事によれば、何かの書類に署名をさせようとしたそうですが、一体何だったのかは明記されていません。そのほか、最近のニュースでは、中国の大型船が、ベトナム籍の小さな漁船にわざと衝突し、中国人が漁船に乗り込んできて魚を奪い漁具を壊した上に船を沈没させるというものもありました。

中国がベトナム漁船を相次ぎ襲撃、1隻は沈没 「魚を奪われ漁具壊された…」

2016年にオランダ・ハーグの常設仲裁裁判所が中国の主張する領有権は違法だと認定したことも無視して、主張を撤回しないどころか、その海域で操業するベトナム漁船を追い払うために海賊のような暴力行為にも出ています。しかも、その船の船体にある数字が中国海警局の船と同じだったという目撃談もあり、国を挙げての違法行為が公になっています。

この中国船によるベトナム船撃沈の少し前、3月31日にベトナムのハノイで開かれた「大メコン圏(GMS)首脳会議」の首脳会議に出席するためにベトナム入りした王毅外相は、ベトナムのチャン・ダイ・クアン国家主席や、ファム・ビン・ミン・ベトナム外相などと相次ぎ会談し、「領有権問題の解決は、健全で持続可能な両国関係の構築に向け非常に重要だということで合意した」と説明しました。

中国とベトナム、南シナ海領有権問題の対話による解決確認

両外相は、市場開放を背景に貿易や投資が拡大し、両国間の関係は良好に発展していると述べていますが、両国間の2017年の貿易は1,000億ドルを突破しているということです。

これほど被害を被っているベトナムが、表立って中国を非難できない理由はここにあります。ベトナムが経済的に中国に依存していることを中国は利用しているわけです。

とはいえ、このような対話があったにもかかわらず、そのすぐ後にベトナム船を撃沈する中国側の行動は不可思議です。

「大メコン圏(GMS)首脳会議」で王毅外相は、「一帯一路で最も大きな恩恵を受けるのはGMSだ」と発言して存在感を示しましたが、ベトナムのみならず、カンボジアやラオスに対しても、自分の味方となるようにカネをばらまいているのは言うまでもありません。中国は1月にカンボジアのプノンペンで開いたメコン川流域国との首脳会議でも、3億ドルのファンドを立ち上げるといった支援を明言しています。

中国・東南ア、インフラや通関で協力

しかし、その中国企業によるメコン川流域の開発計画では、自然破壊の懸念が高まっています。中国企業は、世界遺産などの観光スポットが点在するラオス南部のメコン川流域のコーン滝周辺に、ホテルやレストラン、ショッピングセンターなど、100億ドルの投資を行っているそうですが、これまでの中国の海外でのインフラ投資が、自然破壊などで地域の不興を買っているため批判が高まっているそうです。

【ラオス】中国企業によるメコン川流域の開発計画で自然破壊の懸念

中国主導の一帯一路に対しては、世界中から懸念の声があからさまに聞こえるようになってきています。4月21日、米華字メディアの多維新聞は、「中国・北京に駐在するEU28カ国の大使のうちハンガリー大使を除く27人中国の一帯一路を批判する報告書に署名した」とドイツメディアが報道したことを紹介したそうです。

EU27カ国の大使、中国主導の経済圏構想「一帯一路」に連名で反対―米華字メディア

27カ国の大使らは、利益を独占するのは、中国政府による無制限の補助金を受け取った中国企業だけで、これは自由貿易プロセスを損ねるものだと批判していそうです。ようやく、欧州も、一帯一路のとんでもないカラクリに気づいてきたといえるでしょう。

そして、一帯一路の化けの皮が剥がれるにしたがって、中国の行動が次第にエスカレートしているように思えます。

今年3月以降のわずか1カ月半あまりで、10隻以上のベトナム漁船が略奪や攻撃を受けています。ベトナム政府にも我慢の限界はあるでしょう。ベトナム国内での嫌中感情はどんどん高まっており、国内での小競り合いも絶えません。中国の南侵がこれ以上エスカレートして、ベトナムの被害が拡大していけば、政府は何も言わなくても、国民は黙っていないでしょう。2014年にベトナムで起こった大規模な反中デモが再び起こる可能性も決して低くありません。

余談ですが、南洋(南シナ海)をめぐるベトナムと中国の対立は根が深いものがあります。ベトナムの主張によれば、長江以南の「江南」、百越の地は中国に奪われた祖先の地だそうです。周恩来はかつて、ベトナム統一後に海南島をベトナムに返還すると口約束しましたが、返還しないかわりにトウ小平が対ベトナム懲罰戦争を起こしました。

これに怒ったベトナムは、失地回復戦を起こして北京まで攻め込むぞと中国に警告しました。中国人の祖先である漢人は、漢帝国の滅亡後、ホームランドである中原を追われ、「資治通鑑」の「梁記」によると、その後に死に絶えたとされていますが、越まで逃れた漢人が広東で生き残っていたのかもしれません。

それはともかく、4月11~12日にかけて、習近平は、強い中国を誇示するために中央軍事委員会の軍事首脳を総動員して南海(南シナ海)で自ら「史上最大と称する軍事演習を行いました。もちろん、改造空母「遼寧」も登場しました。

習主席、南シナ海の大規模軍事演習を視察 中国の軍事力誇示

ところが、本来なら、総指揮官の習近平は遼寧の艦上でその勇士をメディアにアピールする予定でしたが、巡洋艦「長沙号」で軍事演習を視察しただけでした。一説によれば、米軍の動向が掴めず身を守るために隠れていたということです。

結局、米軍は太平洋艦隊ではなく、大西洋艦隊の空母「ルーズベルト」をフィリピンのマニラに派遣しましたが、習近平は一網打尽にされるのを恐れて、米軍を挑発するために行おうとしていた軍事演習の一部を中止せざるをえなかったとも言われています。そのため13日まで行われるはずの軍事演習を12日で切り上げたという見方も出ています。

「張子の虎!」習近平は何をビビった!?

その後、中国軍は18日から台湾海峡で実弾演習を行い、さらに20日には冒頭のように、漁船を装った中国船がベトナム船を撃沈したわけです。

アメリカに貿易戦争を仕掛けられ、その一方で一帯一路の悪評が広まるにつれて軍事行動をエスカレートさせていく中国の姿は、習近平の焦りが表れているのです。

これまでのメルマガでも述べてきたように、何の実績もない習近平が毛沢東に並ぶ独裁権力の獲得と神格化を目指すからには、目に見える成果が必要です。しかしトランプ大統領には追い込まれ、一帯一路もうまくいかないならば、あとは軍事的な虚勢を張り、南シナ海を実効支配し、台湾統一に着手したかのようなポーズをとるしかありません。

4月27日には南北首脳会談が開催され、その後、5月末か6月初旬には米朝首脳会談が開かれる予定です。アメリカも朝鮮半島へのプレゼンスを高めてくるでしょう。

陣取りゲームの行方はまだ予測不能ですが、トランプの北朝鮮戦略と中国への対決姿勢の本格化が習近平の焦りを引き起こしていることは間違いありません。ここ数週間でアジア情勢が大きく動くと思われます。

 

※本記事は有料メルマガ『黄文雄の「日本人に教えたい本当の歴史、中国・韓国の真実」』2018年4月24日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会にバックナンバー含め今月分すべて無料のお試し購読をどうぞ。

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