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米国が「中国スマホ」を販売停止にした制裁がジワジワ効いている

「既に開戦している」とも「勃発寸前」とも言われる米中貿易戦争。しかし、トランプ大統領による制裁で中国の大手通信機器メーカーがスマホの販売停止に追い込まれるなど、中国経済にじわじわと暗雲が広がりつつあるようです。台湾出身の評論家・黄文雄さんは自身のメルマガ『黄文雄の「日本人に教えたい本当の歴史、中国・韓国の真実」』で、「朝鮮半島問題に一定の方向性が見えれば、米国は対中問題を本格化させる」とし、「米中戦争はこれからが本番」と予測しています。

※本記事は有料メルマガ『黄文雄の「日本人に教えたい本当の歴史、中国・韓国の真実」』2018年5月15日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会にバックナンバー含め今月分すべて無料のお試し購読をどうぞ。

プロフィール:黄文雄(こう・ぶんゆう)
1938年、台湾生まれ。1964年来日。早稲田大学商学部卒業、明治大学大学院修士課程修了。『中国の没落』(台湾・前衛出版社)が大反響を呼び、評論家活動へ。著書に17万部のベストセラーとなった『日本人はなぜ中国人、韓国人とこれほどまで違うのか』(徳間書店)など多数。

【米中】トランプは中国を少しずつ潰すと決めた

トランプ大統領、ZTE事業再開へ協力表明 中国の雇用守るためと

今年の4月、アメリカ政府は中国の通信機器大手、中興通訊(ZTE)が北朝鮮やイランに不法に製品を輸出し、虚偽の説明をアメリカ側にしていたとして、アメリカ企業に対して、ZTEとの取引を7年間にわたって禁止しました。

これにより、ZTEへの部品供給が止まり、ZTEは中国でのスマートフォンの販売が事実上停止に追い込まれました。ZTEのスマートフォンは日本をはじめ、世界各国で販売していますから、いずれ影響が出ると考えられています。

ZTE、中国でのスマホ販売が事実上停止 米政府制裁で

この事態に、トランプ大統領は、中国で多くの雇用が失われる危機が生じているとして、ツイッターでZTEが事業を早期に再開できるように習近平国家主席と協力していると述べました。

これについてトランプ大統領が対中制裁姿勢を融和へと大きく転換させたと指摘する声が上がっています。しかし、15日から19日にかけて、中国の劉鶴副首相が訪米し、経済問題について協議することになっていますが、むしろそれを前に、トランプ大統領が中国側に圧力をかけたと見るべきでしょう。

ZTEの生殺与奪を握っているのは自分であり、話し合いのテーブルにつく用意はある、ということを中国側に示したのでしょう。中国側に大きなディールを仕掛けているわけです。すでにアメリカは中国の輸入鉄鋼・アルミについて追加関税をかけています。

ZTEについては、かねてより、その機器やソフトにバックドアが仕込まれており、情報が中国側に流されていると言われてきました。また、華為技術(ファーウェイ)のスマートフォンにも同様のバックドアが仕組まれていると言われており、アメリカのCIAやFBI、国家安全保障局(NSA)などは、アメリカ国民に対して、ZTEやファーウェイのスマートフォンを使用すべきではないと警告してきました。

米情報機関、中国製スマホ「使うな」と勧告 情報流出の恐れ

もともとアメリカとしては、ZTEもファーウェイも安全保障上の脅威となっているメーカーであり、むしろ潰したい存在であるはずです。それを「中国の雇用のために」トランプ大統領が存続させるはずがありません。明らかに中国に対する脅しをかけているわけです。

この数ヶ月、トランプ政権は台湾への武器供与を決定したり、アメリカと台湾の高官の相互交流を可能にする「台湾旅行法」を成立させるなど、中国に対する圧力を強めてきました。その背景には、トランプ大統領が「中国がアメリカの雇用を奪っている」と問題視する、中国の巨額な対米貿易黒字の問題があります。

また中国が知的財産を不法に盗むことについても、アメリカは警戒しています。トランプ大統領は今年の3月21日、中国がアメリカの知的財産権を侵害していると断定して、少なくとも500億ドル相当の中国製品に制裁関税を命じる大統領令に署名しました。

米、中国製品5.3兆円に知財制裁関税-中国大使「貿易戦争恐れず」

また、CIAの次期長官に任命されたジーナ・ハスペルCIA長官代行は5月9日、上院情報特別委員会の公聴会で、「中国がアメリカの知的財産を不法に狙っている」と発言しました。

知的財産「中国はあからさまな窃盗」 次期CIA長官候補が懸念表明

中国企業が他国の企業買収によって相手企業の技術を一気に獲得するという手法を用いてきたことは有名です。しかも、中国企業は中国政府の息がかかっています。中国に在籍する企業は、外資も含めて、中国共産党の組織を企業内に設置することが義務づけられています。そのため、いくら私企業であっても、技術情報などは中国共産党に握られてしまうのです。

加えて、中国へ進出する外国企業のうち、自動車や船舶、送電網建設など、一部の製造業では中国側との合弁企業が義務づけられています。その際、中国側のパートナー企業から、合弁企業をつくらないと運営できないという弱みに付け込んで、技術開示を強いられることが多いそうです。

まるで「海賊」…中国知財侵害の手口「進化」 進出「餌」に技術開示要求、模倣レベルも向上

また、財務省によると、日本での模倣品の税関差し止め件数(2017年)全3万627件のうち9割以上の2万8,250件が中国の製品であり、中国の業者などによる模倣品の製造や販売の手口は巧妙化しているといいます。

アメリカは中国を14年連続で知財保護の優先監視国」に指定しています。そのアメリカ、トランプ政権が、中国企業に寛容な姿勢を見せるはずもなく、貿易摩擦と知財問題については、徹底的に中国を叩くはずです。それはアメリカの安全保障と雇用の問題だからです。

朝鮮半島問題も、習近平国家主席に任せたところでまったく前進しませんでしたが、トランプ大統領が強硬姿勢を示して動きました。実行力を見せつけることで、中国に対しても本気度を示しているわけです。

また、トランプ大統領が仕掛けている「米中貿易戦争」は、これまでの東西冷戦やサイバー・ウォー、かつての日米貿易摩擦ともまったく異なる、「複合的全力戦」という性格があります。ただの経済ではなく、民主、自由、人権という普遍的な価値に逆行する中国政府の独裁化に対する牽制という意味もあります。

しかも、先進国の技術盗用がなければ中国はこれ以上の発展は見込めないでしょう。パクリがなければ、中国の産業は生きていけません。中国は昔から虚言のみならず、2,500年前の孔子の時代から、「強盗」「窃盗」を国の存立条件としてきました。

『荘子』には、大泥棒の盗跖が孔子に「強盗にも仁義がある」ことを教えています。そして、孔子・孟子らの「天は徳を失った王朝に見切りをつけて、他の徳のある者に王朝を建てさせる」という「易姓革命」は、国盗りの理論となりました。

もともと中国は、日本や欧米など先進国が中国から火薬、羅針盤、ロケット技術などの知的財産権を盗んだなどと主張していますが、盗人猛々しいにもほどがあります。日本もハイテクからアニメまでさまざまな知財を中国に盗まれていますが、そろそろこれを守るための戦いを開始すべきです。

「モリカケ」ばかり口にする政治家たちの行いについて、私は「強盗国家の狙いを見えなくする共犯行為」だとみなしています。

そもそも言論の自由もなく、上への忠誠心ばかり求める国で、イノベーションなど起こせるはずもありません。ハイテク戦争ですから、長期戦になれば、中国の必敗は避けられないというのが、私の予想です。

米朝首脳会談が終わり、朝鮮半島問題に一定の方向性が見えれば、今度はアメリカは対中問題を本格化させていくと思われます。米中戦争は、まさにこれからが本番でしょう。

ただし、アメリカが中国に対してどこまで貿易戦争を続けていくのか、単なる揺さぶりだけで終わってしまうのかどうかは、わかりません。もちろん、中国はアメリカの農産品に報復制裁をかけるなど、反撃に出ていますので、アメリカの農産品も一定の打撃を受けるには違いありません。

しかし、以前のメルマガでも述べたように、それはむしろ中国の自殺行為だと見ています。中国では「三農問題」(農業、農民、農村)が国家的な「生態学的問題」となっていますが、それは人民共和国時代からではありません。すでに2,000年も前の漢の時代から、食糧不足は大陸最大の課題として続いてきたのです。

大陸では北は南に寄生し、それも限界になると天下が崩壊して戦乱の世になることが続いてきました。現在でも、南水北調(南の水を北に導く)ということを行っています。それだけでは国家を保つことができなくなり、中国はエネルギーも食料も輸入国に転落しています。

人民共和国の建国当初、中国は自力更生を叫んでいたものの、それは無理だということで外資を導入する改革開放という他力本願に変わりました。

もはや中国では「盗まなければ成立しない国家なのです。ハイテク技術を盗み続けなければ、軍事的な突出も不可能です。それだけに、日本や台湾など、中国の軍事的脅威にさらされている国は、より一層、技術や資本の中国への流出に警戒しなくてはならないのです。日本、台湾においては、死活に関わる問題として、具体的な対応策が必要不可欠です。

 

※本記事は有料メルマガ『黄文雄の「日本人に教えたい本当の歴史、中国・韓国の真実」』2018年5月15日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会にバックナンバー含め今月分すべて無料のお試し購読をどうぞ。

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※本記事は有料メルマガ『黄文雄の「日本人に教えたい本当の歴史、中国・韓国の真実」』2018年5月15日号の一部抜粋です。

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