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5分の手続きで、1年間も国民年金の保険料が全額免除になるケース

早いもので、今年ももう7月。さて、この7月に役所で国民年金保険料の免除申請をすると、来年6月までの1年間、全額免除になるケースがあることをご存知でしょうか。そんな「知らなきゃ損」な情報の詳細を、無料メルマガ『年金アドバイザーが教える!楽しく学ぶ公的年金講座』の著者・hirokiさんがメルマガ内で紹介してくださっています。

7月は国民年金保険料免除申請をすると来年6月までが免除期間となる

もう7月ですが、この時期になると新しく国民年金保険料免除の申請免除をすることによって、向こう1年間の国民年金保険料の免除をすることができます。7月以降に市役所にて免除申請をして、それが承認されると翌年6月までの国民年金保険料が免除になります。過去に滞納してる期間があれば、過去2年1ヶ月以内の滞納期間分まで遡って免除にすることは可能です。

まあ、誰でも免除になるわけではなくて、あくまで免除を受けようとする本人だけでなく世帯主や配偶者の前年所得とかで判断されるので必ずしも免除になるわけではないですが…。

免除申請して、免除にしておくメリットは未納扱いにならくて年金額にも反映するだけでなく(学生などは反映しないのもある)、年金受給資格期間最低10年にも含まれるし、障害年金や遺族年金を請求する時にも重要な役割を持ちます。

また、国民年金(基礎年金)には11兆円程の税金が基礎年金の2分の1として投入されている(平成21年3月までは3分の1)ので、仮に年金への強制加入期間である20歳から60歳まで保険料を全額免除にしても将来の老齢基礎年金の半分(779,300円の半分である389,650円)になります。

免除にせずにそのまま面倒臭くて未納の状態にしておくというのは、税金分すら受け取る事を放棄してる事になります。だから普通に損してるだけです。市役所でのたった5分程度の手続きをしないがために。

俺は絶対年金なんか払わないからな! っていう人はカッコいいこと言ってるようで、俺って自ら損してるんだぜ! ドヤ!! って言ってるようなもんです^^;。

あと、普通は国民年金保険料を滞納すると時効の関係もあって2年1ヶ月以内の保険料しか納める事はできませんが、免除にしておくと保険料納めたいなあという時に過去10年以内の免除期間分を後で保険料を納める事が出来ます(追納という)。ただし、3年度以前の保険料を納める場合は当時の保険料に一定の利子が付いてやや高めの保険料を支払う必要がある。

今なら、平成27年度分以前が対象。なお、平成30年9月までは特例的に過去5年以内の未納期間の保険料を年金事務所に専用の納付書を申込む事で納める事は可能です(国民年金保険料の後納)。

まあそんな免除の事例を見てみましょう。

1.昭和55年6月27日生まれの男性(今は38歳)

何年生まれ→何歳かを瞬時に判断する方法!(参考記事)

20歳になると国民年金に強制加入となりますが、平成12年6月から平成15年3月までの34ヶ月は4年制大学生だったのでこの時は学生特例免除を使っていた。この学生の免除は通常の免除と違って、将来の年金額に反映しない

平成15年4月から平成16年12月までの21ヶ月は国民年金保険料を未納にした。しかし、平成17年1月になって保険料の免除ができる事を知り、市役所の国民年金課に出向き、保険料免除の申請をする。申請から約2か月後に全額免除が認められ、全額免除が平成16年12月から平成17年6月まで7か月間となった。平成15年4月から平成16年11月までは未納となる。


注意

免除が認められた場合は、今だったら7月から翌年6月まで免除だけでなく、過去2年1ヶ月までの滞納期間も遡って免除になりますが(平成26年4月からそうなった)、平成17年4月の改正までは免除申請をした月の前月以降が免除になっていた。なお、平成17年4月以降は例えばその年の7月に免除申請をすると前年7月から翌年6月までが免除となっていた。8月以降に免除申請すると前年7月までは遡らず、その年の7月から翌年6月までが免除。6月までに免除申請すると前年7月まで遡ってその年の6月まで免除という形だった。


平成17年7月から平成21年3月までの45ヶ月間は国民年金保険料を納めた。平成21年4月から平成24年9月までの42ヶ月は国民年金保険料4分の3免除を利用(将来の老齢基礎年金の8分の5に反映)。

平成24年10月から平成27年2月までの29ヶ月間は未納にしていたが、平成27年3月にまた免除申請に行った。それが認められ、過去2年1ヶ月以内である平成25年2月から平成27年6月までの29ヶ月が全額免除となった(平成21年4月以降の全額免除は老齢基礎年金の2分の1に反映する)。

なお、平成24年10月から平成25年1月までの4ヶ月は2年1ヶ月より前の期間になってるから未納期間。平成27年7月から平成30年6月までの36ヶ月は現在は国民年金保険料を納付中。

ちなみに平成30年7月から60歳前月の平成52(2040)年5月までの263ヶ月は厚生年金に加入するとします。この間の給与と賞与の合計を263ヶ月で割った平均は50万円とします。

じゃあこの時点での65歳からの年金総額を出してみます。まず整理。

ア.平成12年6月から平成15年3月までの3ヶ月は学生特例免除

イ.平成15年4月から平成16年11月までは未納

ウ.平成16年12月から平成17年6月までの7か月は全額免除(平成21年3月までの場合は老齢基礎年金の3分の1に反映)

エ.平成17年7月から平成21年3月までの45ヶ月は保険料を普通に納めた(保険料納付済期間)

オ.平成21年4月から平成24年9月までの42ヶ月間は4分の3免除(老齢基礎年金の8分の5に反映)

カ.平成24年10月から平成25年1月までの4ヶ月は未納

キ.平成25年2月から平成27年6月までの29ヶ月は全額免除(平成21年4月以降は老齢基礎年金の2分の1に反映)

ク.平成27年7月から平成30年6月までの36ヶ月は国民年金保険料納めた(保険料納付済期間)

ケ.平成30年7月から平成52(2040)年5月までの263ヶ月は厚生年金加入(保険料納付済期間)

まず、65歳からの老齢厚生年金額→50万円÷1,000×5.481×263ヶ月=720,752円。

次に問題の老齢基礎年金→満額値の779,300円÷480ヶ月(20歳から60歳までの期間)×(保険料納付済期間344ヶ月+オの4分の3免除期間42ヶ月÷8×5+ウの7ヶ月÷3+キの全額免除29ヶ月÷2)=779,300円÷480ヶ月×(344ヶ月+26.25ヶ月+2.333…ヶ月+14.5ヶ月)=779,300円÷480ヶ月×387.083ヶ月(小数点以下3位まで含む)=628,445(1円未満四捨五入)。


注意

学生納付特例免除期間の34ヶ月は年金額に反映しない。ただし、平成3年4月から平成12年3月までの学生免除は老齢基礎年金の3分の1に反映する。


よって、年金総額は老齢厚生年金720,752円+老齢基礎年金628,445円=1,349,197円月額112,433円)。

さて、この男性は平成30年7月に気が変わって、過去の免除した期間の保険料を納めようと考えた。これを「追納」と言います。免除にしておくと本来の滞納期間2年1か月前までしか納める事はできませんが、免除にしておいたおかげで10年以内の免除期間まで遡って保険料を後で納付することができる。ただし原則として一番古い期間順から納める必要がある。任意に好きな場所を納められるわけじゃない。もし平成30年7月に追納したい場合は、平成20年7月以降の期間の分が対象となります。

で、追納したいわけですが、この男性は「オ」の4分の3免除の42ヶ月と「キ」の全額免除期間29ヶ月のみが追納できる期間。この部分を追納するとどうなるのか。追納すると保険料納付済み期間が344ヶ月から71ヶ月増えて415ヶ月になる。

追納した場合の老齢基礎年金→779,300円÷480ヶ月×(保険料納付済期間415ヶ月+ウの全額免除期間2.333…ヶ月)=677,557円となる。まあ5万円くらいは増えましたね!

なお、60歳から65歳までの60ヶ月は国民年金に任意で加入して更に老齢基礎年金を増やすことは可能(厚生年金加入中や年金の繰上げをしてしまった人は不可)。任意加入で60ヶ月支払ったら、老齢基礎年金は779,300円÷480ヶ月×(保険料納付済期間475ヶ月+ウの全額免除期間2.333…ヶ月)=774,970円まで増える(この記事では付加年金と国民年金基金は省いてます)。

追記

国民年金保険料の免除は7月以降にやると直近2年1ヶ月以内の滞納期間と翌年6月まで未来に向かって免除になりますが、途中で取り消すことは可能。取り消した場合は取り消しの申し出をした月の前月分からの取り消しとなる。

なお、学生の場合は7月から翌年6月までというのではなく、4月から翌年の3月までが免除になるが途中で取り消した場合は年度ごとまとめて取り消す。

また、免除申請をする前に保険料をまとめて支払って割引を受ける「前納」をした場合は、免除申請をした月の前月以降の分の保険料が還付となる(平成26年4月からの取り扱い)。

単に毎月の保険料をいっぺんに払ったものは前納じゃなく早く支払ったものに過ぎないから対象外。例えば、4月に来年3月までの保険料を1年分まとめて「前納」したとします。で、7月に免除申請して承認されました。となると、6月分から来年3月分までの保険料が還付となる。

平成26年4月改正になるまでは、免除申請前に前納した場合は保険料の還付は不可だったが取り扱いがこのように改善された。

※ 国民年金保険料前納に関しては4月発行の有料メルマガバックナンバーにまとめたので購入したい方はお求めください。

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image by: Shutterstock.com

年金アドバイザーhirokiこの著者の記事一覧

佐賀県出身。1979年生まれ。佐賀大学経済学部卒業。民間企業に勤務しながら、2009年社会保険労務士試験合格。
その翌年に民間企業を退職してから年金相談の現場にて年金相談員を経て統括者を務め、相談員の指導教育に携わってきました。
年金は国民全員に直結するテーマにもかかわらず、とても難解でわかりにくい制度のためその内容や仕組みを一般の方々が学ぶ機会や知る機会がなかなかありません。
私のメルマガの場合、よく事例や数字を多用します。
なぜなら年金の用語は非常に難しく、用語や条文を並べ立ててもイメージが掴みづらいからです。
このメルマガを読んでいれば年金制度の全体の流れが掴めると同時に、事例による年金計算や考え方、年金の歴史や背景なども盛り込みますので気軽に楽しみながら読んでいただけたらと思います。

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