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なぜ中華チェーン「ぎょうざの満洲」は温泉旅館を経営するのか?

埼玉を中心に展開している中華料理チェーン「ぎょうざの満洲」というお店をご存知でしょうか。中華屋なのに旅館を経営したり、餃子がふるさと納税の返礼品になっていたり、とてもユニークな手法で地方や農家の活性化に貢献しているそうです。無料メルマガ『繁盛戦略企画塾・『心のマーケティング』講座』の著者で繁盛戦略コンサルタントの佐藤きよあきさんが、そんな「ぎょうざの満州」の「愛される企業像」について紹介しています。

「ぎょうざの満洲」は、なぜ“旅館”を経営しているのか?

「3割うまい!!」というキャッチフレーズの中華料理店チェーン「ぎょうざの満洲」をご存知でしょうか? やや古くさい女性店員さんのキャラクターはどうでしょう?

このお店を知っているのは、関東の人と大阪の人兵庫の一部の人だけではないでしょうか。直営店が全82店舗(2017年)もあるのですが、この地域に集中しているため、他の地域の人はほとんど知らないはずです。

ここは、餃子を売りにした、普通の中華料理店なのですが、マーケティングの視点から見ると、ユニークなアプローチをしている、興味深い存在なのです。

有名な中華料理店チェーンであれば、問屋と提携し、大量発注することを条件に、できる限り安く食材を仕入れようとします。しかし、このお店は全国の一般農家と直接取り引きしています。できた作物はすべて買い取ることを条件に、委託栽培しているのです。

これは、食の安全・安心を考えてのことで、自分たちの知らないところで作られたものは使いたくないという思いからです。手間もコストも掛かりますが、農家を助けるためにも、やらなければならないことだと考えています。食べる側のお客さまにとっても、安心の担保となります。

またこのお店は、ファンの間では“変わったお店”として認知されています。群馬県老神温泉で旅館を経営しているのです。看板にデカデカと「ぎょうざの満洲 東明館」と書かれています。「旅館」と「ぎょうざ」のミスマッチ、というより、違和感が凄い。

ぎょうざと温泉が自慢の宿」とも謳っています。日本旅館ではあり得ない、唯一無二の存在です。

この旅館は、「1泊朝食つき」のプランしかなく、館内の食堂は「ぎょうざの満洲」となっています。つまり、“夕食はこちらでどうぞ!”なのです。もちろん強制ではありませんが、これがユニークだと、食堂で食べる人がほとんどです。

旅館で中華料理を食べる。しかも、チェーン店。それでも、お客さまは大勢やって来ます。非常に不思議なことです。

この旅館のある老神温泉は、オーナーの出身地で、廃業した旅館を買い取ってリニューアルオープンさせています。自身の出身地にもっと人を呼び込みたいとの思いから、旅館経営に乗り出したようです。物珍しさが功を奏したのか、週末は予約が取れなくなっています。

さらに、この餃子は、埼玉県鶴ケ島市のふるさと納税返礼品にもなっています。地元の企業であるサイボクハムとのコラボ餃子です。現在の本社がある埼玉県でも地域に貢献しようとしています。

「ぎょうざの満洲」の取り組みは、そのすべてが、地方の人や地域に貢献することが目的だと捉えることができます。取り組みとその理由を整理すると……。

Q:一般農家から仕入れているのはなぜ?
A:小さな農家の収入を安定的に確保するため。

Q:埼玉のふるさと納税に登録したのはなぜ?
A:地元埼玉のPR及び活性化に貢献するため。

Q:旅館を経営するのはなぜ?
A:オーナーの出身地を賑やかな街に復活させるため。

これらの取り組みは、大都市圏でお店を展開しながらも、その収益は地方に還元するために行われているようです。これは、大都市と地方を繋ぐ、理想的な姿なのかもしれません。

大都市で儲けて、地方に貢献する。巨大化するだけが、企業の使命ではありません。人と地域に貢献することこそが、愛される企業像なのではないでしょうか。

image by: 『ぎょうざの満洲』公式インスタグラム

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【著者】 佐藤きよあき(繁盛戦略コンサルタント) 【発行周期】 週刊

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