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進む世界の米国離れ。トランプが「拡大と発散」戦略で向かう滅亡

中国のみならず、今や全世界を敵に回すがごとく「強硬的な姿勢」で邁進するトランプ大統領ですが、ついに共和党主流派からも見放されかねない状況となってしまったようです。今回のメルマガ『国際戦略コラム有料版』では著者の津田慶治さんが、勝つ戦略である「選択と集中」の逆を行くトランプ大統領の「拡大と発散」とも言うべき理解しがたい数々の言動や外交手法、それにより追い詰められつつある現状を記すとともに、今後日本がどの方向に舵を切るべきかについて考察しています。

「拡大と発散」するトランプ外交

トランプ大統領の政策に国内と国外から大きな不満が出ている。とうとう、共和党主流派も我慢が出来なくなっている。それを検討しよう。

米中通商協議の結果

中国の王受文商務次官・廖岷財政次官と米国のマルパス財務次官が8月22日、23日の2日間協議したが、物別れになってしまった次回協議の予定もない

トランプ政権の高官は別の会見で、米企業の知的財産権侵害や中国政府の産業への補助金という米国側の懸念に中国がまだ対処していないと指摘した。もう1つ、中国が北朝鮮へ経済支援して非核化をさせていないことも問題視している。

そして、米政府は23日、予定通り、160億ドル相当の中国からの輸入品に対する25%の追加関税を発動。中国も同時に米製品に対する同規模の追加関税を発動させた。

24日、中国商務省は、貿易問題を巡る米中の事務レベル協議について「建設的で率直な交流ができた。双方は次の協議に向けて接触を続ける」とした。米国の要求順位がわかったようである。第2のプラザ合意ともいわれる人民元の切上げが落し所だと、1ドル=3人民元か、どちらにしても中国の大幅な譲歩が必要である。

そして、北朝鮮対応では、習近平が来月訪問するがどうするのであろうか? 北朝鮮近海での瀬取りが問題視されているので、日米で海上封鎖もありえる。

しかし、現時点では、当分休戦という予想は外れて、米中貿易戦争は継続して、次の2,000億ドル分の追加関税を9月に実施するかと次回の米中通商事務レベル協議で中国が譲歩をするかに焦点が移っている。

どちらにしても、米国の中間選挙を中国は見ながら、対応策を検討することになる。トランプ大統領は11月6日中間選挙後に習近平国家主席との会談を予定しているが、トランプ大統領としては、中国だけではなく世界全体に対しての貿易強硬策の方が中間選挙に有利と見ているようだ。

米国の難癖

そうしないと、常人とは違うトランプ大統領の外交政策が説明できない。欧州、日本、カナダ、メキシコなどの友好国はもちろんのこと、非友好国である中国、ロシア、トルコなどにも難癖を付けているし、南ア共和国の土地解放問題でもクレームをつけているし、全世界を相手に難癖を付けている

シリア軍のイドリブ攻撃には、ヒズボラが参加しないでロシア海兵隊が参加するが、米国はロシアに対して化学兵器使用時には、大規模攻撃を行うと通告したが、これに対して、有力ロシア国会議員がロシア海兵隊は核兵器を持っていくべきと発言した。中東も戦争真近の状況である。しかも、米軍はクルド人地域に今もいる。

白人至上主義者、キリスト教福音派、白人労働者層などの絶大な支持を得ているが、その人たちの個々の主張を全部実施しているようである。

しかし、大豆や小麦などの米国農家の不満が解消しないで、より一層、LNGなどの企業関係者などの不満な層が増えている。

世界も米国の対応の異常性を認識して、米国離れを引き起こしている。日本も自動車輸入に25%の関税が掛けられたら、米国から引くしかない。しかし、中間選挙に勝つために、自動車輸入に25%関税を掛ける可能性が、劣勢挽回のためにまだある。

中間選挙のためか?

勝つ戦略とは、「選択と集中」であるが、トランプ大統領がしていることは、「拡大と発散」であり、そのような戦略を取ると、普通、破滅すると言われる

普通は、1つ1つの課題を「選択と集中」で解決していく。その都度、多くの味方を集めて少ない敵に譲歩を求める方法を取る。それを複数回実施して、全体の解決を図る。それがマネージメントの基本だ。政治も同じ。

「拡大と発散」の原因は、中間選挙に勝つ必要からであり、そこに「選択と集中」したことで、政策全体では「拡大と発散」していると見えるが、これは滅亡する論理のような気がする。

裁判とアカウント削除

トランプ大統領の元個人弁護士マイケル・コーエン氏は、ニューヨークの連邦裁判所で証言し、トランプ氏から2016年の選挙運動中に2人の女性へ口止め料を支払うよう指示があったことを明らかにした。トランプ大統領は、選挙資金から口止め料を支払っていないから問題がないと言うが、今までは、2人の女性との関係はないとしていた。この件で、また1つ疑惑が事実になった

また、フェイスブック、Apple、ツイッターなどが、ヘイトサイト、ウソニュース元などのアカウントを削除したが、その多くが強烈なトランプ支持である。現在メインのニュースで、トランプを支持するのはFOXしかない。そのFOXでさえ、ロシア・プーチン大統領の大統領選挙介入はないという意見にトランプ大統領が同意したことには、批判した

しかし、アンチワシントンという雰囲気がトランプ支持をサポートしている。そして、支持率は依然40%を維持している。批判が強い方が、トランプ大統領は有利と思っている。

だが、中国の米企業製品不買運動や世界的な嫌米的な雰囲気から多くの国の庶民は、米企業製品を買わなくなっている。このため、そのような企業の業績は下降してきている。米国株価を維持しているのは、アマゾン、Apple、グーグル、NVIDIA、Netflixなどのハイテク株である。

今は、米国経済は絶好調であるが、今後の関税UPは米国経済にも悪影響が出てくるはずである。まだ、半年程度、この好調は続くというが、いつかはダメになる。トランプ大統領もこの事実を知っているので、中間選挙に向けて経済好調を言わない。11月前に景気後退が起きると見ているからだ。

米企業経営者の反乱

米企業の経営者などは共和党支持者であるが、特にコーク兄弟は、非上場のコークグループのトップであり、共和党へ巨額献金していることで知られている。しかし、11月中間選挙では、反トランプの民主党共和党の候補に献金すると方針を変えている。

多くの大企業経営者もトランプ大統領の政策に反対している。特に世界全体への難癖には、経営的にも非常な重荷になっている。

また、軍産学などの影の政府にも危機感が出ている。全世界を敵にしているので、米軍の孤立化が起きて、世界にいる米軍が危機的な状態になるからだ。特にトルコと問題を起こして、シリアにいる米軍の退路を遮断している。

しかし、トランプ大統領からすると、世界展開する米軍はすべて撤退するべきであり、撤退すると軍事費が大きく減額出来て減税が一層できるとみている。

そして、米国は孤立でも生きられる。ユーラシア大陸とは離れているので、米国に戦争を仕掛ける国もない。米国企業も米国に戻り、米国だけでビジネスをすればよいのであると。

ということで、トランプ大統領は、共和党主流派の軍産学と企業なども敵にし始めている。そして、とうとう民主党だけではなく、共和党主流派も弾劾裁判に賛成する可能性が高くなってきた。そうしないと、共和党は上院でも過半数割れを起こす可能性がある。下院は、既に民主党が勝利の方向のようである。

このような状況であるために、トランプ大統領の威光が低下して、FRBのパウエル議長も、トランプ大統領が利上げをするなと言っても、ジャクソンホールで利上げを9月に行うと宣言した。12月の利上げは、新興国経済の状況を見る必要があると利上げ中止もありえるとして、トランプ大統領にも配慮している。

世界システムの変更

中国イラントルコロシアに上海協力機構参加国でもあるインドまでもが結束し始めている。欧州、特にドイツは、イラン核合意を維持するために、ドル基軸通貨制度を変革して、ユーロ、人民元、ルーブルなどを使った国際決済制度を作るべきであると言い始めている。

米国はイランと経済関係がある世界の企業に対して、ドル基軸通貨制度の根幹であるドル決済システムを使わせないとした。ドイツなどのイラン核合意維持国は、欧州企業がイラン制裁に参加させないためにも、このことの対応策を構築する必要になっているのだ。

このような動きで出て、米国のドル基軸通貨制度崩壊にもつながるか、少なくても、ドル基軸通貨制度の弱体化にはなる。そして、外貨準備をドルで持つ国が少なくなる。

日本も現時点では、対中、対北朝鮮で米国の味方であるが、米国の自動車輸入への関税で立場を変える必要が出てくる。米国の孤立化が明確化するからだ。

普遍的な思想へ

米国の孤立化は、自由貿易を維持・発展させたい世界と日本に大きな変革を起こすことになる。米国中心の世界システムから米国抜きの世界システムに再構築せざるを得ない。

自由民主主義国で、自由市場経済の推進者として日本は立ち位置を明確化していく必要がある。そのための明確な思想や主義を打ち立てることも重要だ。

もちろん、中国のような中国の夢という排他的な主義は、世界が受け入れないので、世界に受け入れられる普遍的な主義を構築することが必要になっている。

このためには、日本の神道を普遍化することが必要である。言上げしないことが神道であるというが、それでは世界に伝わらない。

日本の精神でもある「利他」や「相見互い」「わびさび」「和」「労働の価値」などの考え方を思想化することである。クールジャパンの根幹の思想を明らかにするとも言える。

しかし、トランプ大統領が中間選挙で負け弾劾裁判になり、米国も再度、正気に戻る可能性もあるが、日本精神の思想化の試みをするべき時に来たように思う。

さあ、どうなりますか?

image by: shutterstock

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【著者】 津田慶治 【月額】 初月無料!月額660円(税込) 【発行周期】 毎月 第1〜4月曜日 発行予定

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