国民年金の免除期間や未納が多かった人は、当然ながら受け取れる年金額は低くなります。「それでは不安」という方のために、今回の無料メルマガ『年金アドバイザーが教える!楽しく学ぶ公的年金講座』では著者のhirokiさんが、老後の年金を少しでも増やす方法を紹介してくださっています。
免除期間が多かったから年金が低くなる。これから保険料を納めていけばどのくらい増やせるか?
障害年金を受給されてる方は全国に約200万人くらいいらっしゃいますが、2級以上で現在は就労をしていないとか、もしくは就労はしてるけど厚生年金には加入してない、配偶者の扶養(国民年金第三号被保険者)にも入っていないという方は国民年金保険料を全額免除にしてるのではないかと思います。
ただ、障害年金2級以上の障害年金を受給してる人は普通の全額免除と違って、法律上当然に国民年金保険料を免除にする「法定免除」といいます。なお、平成26年4月の改正からこの法定免除ではなく、本人が申し出れば国民年金保険料を納める事が可能になりました。それまでは、免除にした期間は「追納」といって、後で本人の申請で別の納付書で国民年金保険料を納めてもらうしかなかった。
障害年金は終身年金ではなく、傷病の状態が続いてる間は年金が支給されるという年金。もちろん障害状態が治らない人は一生の間障害年金が支給される人もいます(こういう場合には終身になる)。
で、障害状態が軽くなると障害等級によっては障害年金がストップする事になるんですが、今まで国民年金保険料が法定免除により全額免除だった場合は老後の年金が著しく低下する恐れがあるんですね。
まあ…障害年金受給者だった方だけではなく、今まで国民年金保険料を免除だったとか未納が多かった人が老後の年金を少しでも増やしたいという場合はどうすべきか? 普通に納めた場合はどのくらい増えるのか? を見ていきたいと思います。
というわけで事例。
1.昭和42年11月11日生まれの女性(今は50歳)
● 何年生まれ→何歳かを瞬時に判断する方法!(参考記事)
20歳になる昭和62(1987)年11月から平成2(1990)年3月までの29ヶ月は昼間大学生だったが、平成3年3月までは国民年金に加入する義務が無く、任意加入だったので国民年金保険料は納めなかった。この29ヶ月は未納期間ではなく、年金受給するための受給資格期間10年を満たすためのカラ期間に含まれる。
平成2年4月から民間企業にて平成4年3月までの24ヶ月を厚生年金に加入する。この間の給料の平均である平均標準報酬月額は21万円とします。
なお、平成2年7月16日に体調の異変(血尿)を確認して病院に行く(初診日)。糸球体腎炎と診断され、慢性腎不全に進行してしまい時々人工透析療法を行う事になった。初診日から1年6ヶ月経過した日である平成4年1月16日(障害認定日という)になったので障害年金の請求を行う。
初診日が厚生年金加入中にあるので支給される年金は「障害厚生年金」になる。ちなみに初診日が国民年金加入中もしくは20歳前にあると、障害基礎年金のみ。
あと、初診日の属する月の前々月以前の年金保険料納付要件を見なければならないが、初診日が平成3年5月1日前にある人は、初診日の属する月の直近の基準月(1月、4月、7月、10月)の前月までの直近1年間に未納が無い、もしくは3分の1以上の未納が無い事が必要。この人の場合は国民年金保険料納付義務が発生する昭和62年11月から平成2年3月までの保険料納付期間で見る。
ただし、20歳になる昭和62年11月から平成2年3月までは年金保険料納付義務はなく年金保険料は納めていないが、カラ期間なので納める必要は無かった。カラ期間は未納ではないため、保険料納付要件を満たす。
障害年金2級に認定されて、平成4年2月分(障害認定日の属する月の翌月分から年金が発生する)から障害年金が支給される。以下は平成30年度価額です。
- 障害厚生年金2級→21万円÷1,000×7.125×22ヶ月(障害認定月までの期間)÷22ヶ月×300ヶ月=448,875円
あと、2級だから国民年金から障害基礎年金779,300円も支給。障害年金総額は
- 障害厚生年金2級448,875円+障害基礎年金2級779,300円=1,228,175円(月額102,347円)
平成4年3月末をもって退職し、平成4年4月からは国民年金に加入となるが障害年金2級以上の人は法律上当然に国民年金保険料が全額免除になる法定免除。
この法定免除は平成4年4月から平成21年3月までの204ヶ月は税金が基礎年金の3分の1に反映し、平成21年4月以降は税金が基礎年金の2分の1に反映(下記の理由にて平成32年3月までの132ヶ月とします)。
平成26年5月に生体腎移植を行い、その後臓器が生着し安定的に機能し、1年以上その経過が見られた。平成28年11月の誕生月に障害年金の更新の診断書を提出し、平成29年3月分の年金から3級にも該当しないと認定され障害年金は全額停止となった。
※ 参考
障害年金受給者になると1~5年間隔で誕生月にその後の障害等級を見るための「更新の診断書」が日本年金機構から送られてくる。この更新の診断書にて等級が下がる人は、誕生月から4か月目に年金額が変更となる。逆に等級が上がる人は誕生月の翌月分の年金から増額改定。
さて、障害等級2級から3級にも該当しないと認定され、障害年金が打ち切りとなりました。この時の国民年金保険料はどうすればいいのか?
障害等級が3級にも該当しなくなった日の属する月(平成29年3月)から3年経った日の属する月、つまり平成32(新年号2)年3月までは国民年金保険料は法定免除として全額免除。平成32(新年号2)年4月から国民年金保険料は60歳前月である平成39(新年号9)年10月までの91ヶ月は申請により全額免除を希望。
さて、この女性は65歳からの年金総額はどうなるのか。まず、
- 老齢厚生年金額→21万円÷1,000×7.125×24ヶ月=35,910円
- 国民年金からの老齢基礎年金→779,300円÷480ヶ月×(保険料納付済期間24ヶ月+平成21年3月までの法定免除期間204ヶ月÷3+平成21年4月から平成32年3月までの法定免除期間132ヶ月÷3+平成39年10月までの申請による全額免除期間91ヶ月÷3)=779,300円÷480ヶ月×(24ヶ月+68ヶ月+44ヶ月+30.333ヶ月→166.333ヶ月)=270,049円
全額免除期間が多かったため、
- 老齢厚生年金35,910円+老齢基礎年金270,049円=305,959円(月額25,496円)
これでは少なくて老後が不安…。一応平成32年3月までは法定免除による全額免除を希望するけど、平成32年4月からは国民年金保険料を納付し平成39年10月までの91ヶ月は支払うものとします。市役所に申し込んで毎月400円を納める付加年金にも加入する(納めた月数×200円が年金額)。
そしてさらに、60歳から65歳までの60ヶ月も国民年金に任意加入できるのでそれも活用しようと考えました(この60ヶ月も付加年金加入とします)。
また、過去10年以内の免除期間は国民年金保険料を追納する事ができるので、それもフルに活用するとします。追納期間は平成22年3月から平成32年3月までの120ヶ月。
このように、国民年金を65歳までに納めた場合はどうなるのか。
ちょっと整理します。
- 国民年金保険料納付済み期間→厚生年金に加入した24ヶ月+平成22年3月から平成32年3月まで追納120ヶ月+平成32年4月から平成39年10月までの91ヶ月+任意加入60ヶ月=295ヶ月
- 付加年金→200円×151ヶ月=30,200円
- 法定免除期間→平成4年4月から平成21年3月までの204ヶ月(国庫負担が3分の1の時)+平成21年4月から平成22年2月までの11ヶ月(国庫負担が2分の1の時)=215ヶ月
ここで、全体の国民年金加入期間が510ヶ月となって上限480ヶ月を超えているので、30ヶ月分の全額免除期間を減らさないといけない。国庫負担が少ない平成21年3月以前の期間から30ヶ月引くので、平成21年3月以前の期間は174ヶ月となる。これで、65歳からの老齢基礎年金を算出する。
- 老齢基礎年金→779,300円÷480ヶ月×(保険料納付済期間295ヶ月+174ヶ月÷3+11ヶ月÷2)=779,300円÷480ヶ月×358.5ヶ月=582,040円
よって、国民年金保険料をかなり納められるだけ納めた場合の65歳からの年金総額は
- 老齢厚生年金(報酬比例部分)35,910円+老齢基礎年金582,040円+付加年金30,200円=648,150円(月額54,012円)
※ 追記
65歳から70歳までの最大60ヶ月間は年金を貰わない事で年金を増やす年金の繰下げができる。1ヶ月遅らせるごとに0.7%ずつ増えていく。60ヶ月フルに活用すると年金が42%増える。
もし、先ほどの648,150円の年金を60ヶ月繰り下げたら、648,150円×142%=920,373円(月額76,697円)まで増やす事が可能。
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