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年金の裏技、ポロリ。9月末までに未納分を払い年金を増やす方法

未納にしていた年金保険料をさかのぼって収めることができるのは、本来過去2年1ヶ月以内となっています。しかし、今年の9月末までに特例措置として「過去5年以内」の後納ができる制度があるそうなのです。今回の無料メルマガ『年金アドバイザーが教える!楽しく学ぶ公的年金講座』では著者のhirokiさんが、その後納制度でどのくらい年金が増やせるのか、事例を挙げて詳しく紹介しています。

今月末までの特例措置である国民年金保険料後納制度を利用して年金を増やそう!

今月末までの特例措置なのですが、過去5年以内の年金保険料未納の期間は「後納制度」を利用して老齢の年金額を増やす事が出来ます。申し込みは平成30年9月28日までで、支払いは平成30年9月30日まで。

また、今後遺族年金や障害年金をという事になった場合は、あまり過去の未納期間が多いと支給されない場合があるので、その点でも未納は埋めておきたいところです。本来は年金保険料を納める時効というものがあって、それは本来は過去2年1ヶ月以内です。それを特例的に過去5年まで遡って納める事を認めています

ところで、平成29年8月からは年金を貰うために必要な期間の年金保険料納付済期間+免除期間+カラ期間≧10年あれば可能になりました。ただ、本当に10年程度しかないとか、今まであんまり年金保険料を納めてこなかった人はその分年金額も低くなってしまいます。

年金の強制加入は20歳から60歳までの40年間というかなりの長期に渡ります。しかし、年金は増やしたいと思った場合は、厚生年金なら最大で70歳まで加入できるので健康状態や雇用が許すならそこまで頑張って増やす事は可能。

なお、国民年金も60歳以上でも任意で加入して保険料を納める事はできますが(上限は480ヶ月まで)、65歳から70歳までの任意加入は特例任意加入と言って、年金そのものを増やすのではなく年金の受給権の10年を得る為に加入するような制度。既に65歳時点で老齢の年金の受給権を持ってる人は65歳以降に国民年金に加入する事は不可という事。厚生年金は70歳まで加入可能。

国民年金の特例任意加入は昭和40年4月1日以前生まれの人に限られますが、平成29年8月に原則の年金受給資格期間の25年以上必要だったのが10年まで大幅に短縮されたのでほぼ該当する人はいないでしょう。25年以上が必要だった頃でも、この特例任意加入で国民年金保険料を支払っていた人はそんなに見かけませんでした。

強制加入リミットである60歳を過ぎてもこのように任意で加入する事はできますが、任意加入や60歳以降も働いて年金を増やすというのもこれからは高齢者雇用が当たり前のようになってきたのですが、できるだけ60歳前の年金記録も未納は避けておきたいところです。年金額が低くなっちゃうから。

というわけで、最近まで未納期間が多かった人はなんとか少しでも年金を増やす事が出来ないのか。それをちょっと今回は今月末までの措置である後納制度を使って見ていきたいと思います。

1.昭和33年10月13日生まれの男性(今は59歳)

何年生まれ→何歳かを瞬時に判断する方法!(参考記事)

国民年金に強制加入となる20歳になるのは昭和53(1978)年10月ではありますが、この男性は平成6(1994)年2月までの185ヶ月はベトナムの人だった。平成6年3月から日本に住所を置くようになり、また、厚生年金に加入する事になった。

平成14年3月までの97ヶ月は平均給料(平均標準報酬月額)28万円だった。平成14年4月から平成19年3月までの60ヶ月は国民年金半額免除(65歳からの老齢基礎年金の3分の2に反映する)。平成19年4月から平成21年8月までの29ヶ月は国民年金保険料を納めた。平成21年9月から60歳の前月である平成30年9月まで(国民年金の強制加入被保険者となれるのは60歳前月まで)の109ヶ月は未納にするものとします。

ここでこの人の年金記録を整理すると、厚生年金期間が97ヶ月と国民年金保険料を納めた期間が29ヶ月半額免除期間が60ヶ月の合計186ヶ月しかない。まあでも、10年(120ヶ月)以上あるから老齢の年金は貰える。

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※ 参考

この男性は例えば平成25年に日本国籍または永住権を取得したとします。となると、昭和53年10月から平成6年2月までのベトナム人としてベトナムに住んでた頃の期間185ヶ月はカラ期間となり、年金受給資格期間に10年の中に組み込む。カラ期間は年金額に反映しないから、この人の場合は老齢年金を貰う上では意味は無いですね(笑)。ただ、将来自分が死亡した時にカラ期間と併せて300ヶ月以上(186ヶ月+185ヶ月)となる事により遺族に遺族厚生年金が発生する時に力を発揮する。

厚生年金加入中の死亡のような事ではない限り、遺族厚生年金の支給条件として有効な年金記録が300ヶ月以上無いといけないから。

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来月の平成30年10月の60歳を迎えて、63歳(平成33年10月→新年号3年10月)からまず97ヶ月分の厚生年金の受給権が発生する。一応この60歳時点の年金額で計算をする。

・63歳からの老齢厚生年金(報酬比例部分)→28万円÷1,000×7.125×97ヶ月=193,515円(月額16,126円)

・65歳からの老齢基礎年金→779,300円÷480ヶ月×{保険料納付済期間(97ヶ月+29ヶ月)+半額免除期間60ヶ月÷3×2}=779,300円÷480ヶ月×166ヶ月=269,508円(月額22,459円)

65歳から、老齢厚生年金193,515円+老齢基礎年金269,508円=463,023円(月額38,585円)となりますが、少なすぎますよね^^;平成30年9月現在時点でどうにかもっと増やせないか?

この人は平成21年9月から平成30年9月までの109ヶ月が未納状態ですよね。平成30年9月30日までの時限措置ですが(9月30日が日曜日なので9月28日までに年金事務所に申し込まないといけない)過去5年以内の未納期間を遡って国民年金保険料を納める事が出来る(保険料後納制度)。後納で納める時は一番古い未納期間のほうから納めなければならない。

なお、直近2年1ヶ月以内の滞納期間は普通の納付書を使って納められますが、それより前を「後納」する事ができる。年金事務所(市役所は不可)に申し込んで後納専用の納付書で平成30年9月30日までに納める。だから期限が迫ってますので申し込みはお早めに!

もしこの過去5年の未納期間の保険料を納めて、更に60歳から65歳までの5年間を国民年金保険料を任意加入で納めるとします。そうなるといくら増えるのか? 過去5年の未納期間と、60歳から65歳までの5年間を任意加入しましたよね。120ヶ月国民年金保険料納付済み期間が増える事になります

そうすると、老齢基礎年金は779,300円÷480ヶ月×{保険料納付済期間(97ヶ月+29ヶ月+後納60ヶ月+任意加入60ヶ月)+半額免除60ヶ月÷3×2}=779,300円÷480ヶ月×286ヶ月=464,333円まで増やせる。平成30年9月28日までの申し込み期限で9月30日支払期限の後納を利用すれば、ここまで増やす事は可能。

なお、60歳以降の国民年金任意加入は市役所でも年金事務所でもいいんですが、他に付加年金保険料月々400円を納める事で200円×60ヶ月=12,000円の付加年金にもなる。

・それらをフルに利用した場合の65歳からの年金総額→老齢厚生年金193,515円+老齢基礎年金464,333円+付加年金12,000円=669,848円(月額55,820円)

ちなみに国民年金保険料を1ヶ月納めると、約1,623円(←平成30年度満額779,300円÷480ヶ月)の老齢基礎年金額になる。後納や任意加入で120ヶ月納めた事により、1,623円×120ヶ月=194,760円増えた

※ 追記

この男性は平成14年4月から平成19年3月まで半額免除期間がありますが、免除期間の場合は過去10年以内なら国民年金保険料の「追納」が可能。しかし、平成30年9月時点では過去10年以内だと平成20年9月までしか遡れないので、追納は不可。

また、この男性に妻が居たとして、もしその妻の年金記録に240ヶ月以上の厚生年金期間もしくは共済組合期間、または厚生年金と共済組合両方合わせて240ヶ月以上の期間がある場合はこの男性の65歳以降にこの男性の生年月日に応じた振替加算32,972円(平成30年価額)が老齢基礎年金に付く場合がある。振替加算が付くなら、年金総額は669,848円+32,972円=702,820円になる。

つまり、妻の年金に配偶者加給年金が付く資格があったら、この男性には振替加算が付くという事です。

加給年金と振替加算(日本年金機構)

image by: Shutterstock.com

年金アドバイザーhirokiこの著者の記事一覧

佐賀県出身。1979年生まれ。佐賀大学経済学部卒業。民間企業に勤務しながら、2009年社会保険労務士試験合格。
その翌年に民間企業を退職してから年金相談の現場にて年金相談員を経て統括者を務め、相談員の指導教育に携わってきました。
年金は国民全員に直結するテーマにもかかわらず、とても難解でわかりにくい制度のためその内容や仕組みを一般の方々が学ぶ機会や知る機会がなかなかありません。
私のメルマガの場合、よく事例や数字を多用します。
なぜなら年金の用語は非常に難しく、用語や条文を並べ立ててもイメージが掴みづらいからです。
このメルマガを読んでいれば年金制度の全体の流れが掴めると同時に、事例による年金計算や考え方、年金の歴史や背景なども盛り込みますので気軽に楽しみながら読んでいただけたらと思います。

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【著者】 年金アドバイザーhiroki 【発行周期】 不定期配信

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