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交通渋滞発生のメカニズムが、企業の問題解決にピタリとハマる訳

多くの企業では、目先利益の為におこなった人件費カットでコア技術者が空洞化するなど、「一部の改革」が大きな弊害を生むという事例は枚挙に暇がないと思います。では、長期的視点にたって問題を解決するにはどうすればよいのでしょうか? 今回の無料メルマガ『致知出版社の「人間力メルマガ」』では、長年に渡り交通渋滞発生メカニズム研究をする「渋滞学」を学び、企業分析も行なう東京大学教授の西成活裕さんが、実際に調査に入った企業の事例を挙げてその方法を探っています。

部分最適よりも全体最適 西成活裕(東京大学教授)

20年以上にわたって渋滞が発生するメカニズムについて研究する「渋滞学」について学んだこられた東大教授の西成さん。その学問成果は車の渋滞のみならず、企業における問題にも及んでいます。

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企業における問題の多くも交通渋滞と同様の原因で起こっています。実際に私が調査に入った企業のケースをご紹介しましょう。

A社の経営会議に出席した時のことです。「営業部門が頑張って売り上げを3倍にした」と、大きな拍手が巻き起こりました。しかし全社的な視点で見ると、突然営業部門が大きな売り上げを挙げたために、調達や物流部門の体制が整っておらず、結果的には営業部門の成果を数倍上回る損失になっていたのです。

自部門のことしか考えず、部署間で十分なコミュニケーションをとらないまま、目先の成果を出すために行動したことが組織の渋滞を招いたのです。

個人間でも同様です。一部の真面目な社員がどんどん仕事を進めても、別の社員がその作業に対処できなければ渋滞が生じます。

このような事態を招かないために大切なのは、長期的な視点に立って、自部門だけの利益を追う「部分最適」ではなく、常に全社的利益になる「全体最適」を考えて経営や仕事に取り組むことです。

そのためには、いま一番大事な目的は何か、いまやる必要のない無駄なことは何か、という定義を全社で話し合い、きちんと共有しておかなくてはなりません。

たとえ話し合いに時間が掛かったとしても、そこがきちんと共有されていれば、「いまは営業部門は頑張らなくてもいい。その分、別の部門に経営資源を振り向けよう」などと、長期的には無駄のない仕事をすることができるはずです。

人事・教育の面でも長期的な視点は欠かせません。これもある大手メーカーのケースですが、改革派の経営者が短期的な利益、業績改善を目指して人件費を削り、技術者の多くを派遣に切り替えました。

その結果、短期的には業績が回復して、株主からも賞賛を得たものの、長期的に見ると、会社の根幹を支えるコアな技術が社内から失われて空洞化し、いま非常に危機的な状況に直面しています。

大手メーカーでもそのような状況だということは、他の日本企業でも同様の事態が起こっている可能性は十二分に考えられます。

image by: shutterstock.com

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【著者】 致知出版社 【発行周期】 日刊

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