過剰な接待や不正リベートは会社に大きな損害を与えます。そして、これを行った従業員は忠実義務違反や職場規律違反にあたり、企業側はその社員を処罰することができます。今回の無料メルマガ『採用から退社まで! 正しい労務管理で、運命の出会いを引き寄せろ』では著者で社労士の飯田弘和さんが、背信行為に及んだ社員を処罰する際に必要な3つの観点を紹介しています。
御社は、不正リベートについて厳しく対処していますか?
取引先に商品代金や発注金額を水増し請求させ、水増し分を個人的に受け取るような従業員への対処について考えていきたいと思います。
取引先企業は、受注欲しさに相手先企業担当者への接待や上記のようなリベートを渡すことがあります。過剰な接待やリベート等がなければ、会社はもっと安く購入できたであろうから、上記のような水増し分は明らかに会社の損害です。ですから、従業員の忠実義務違反や職場規律違反に当たります。
会社は3つの観点から、このような従業員に対応する必要があります。
- 懲戒処分の検討
- 刑事事件としての告訴
- 損害賠償請求
1.懲戒処分の検討
まずは事実関係を調査する必要があります。そして、その調査結果をもとに、就業規則の懲戒事由に該当するかどうかを判断します。ですから、就業規則がなかったり、就業規則の懲戒事由の中に該当するものがなければ、懲戒処分を科すことができません。
就業規則を確認していただき、懲戒事由の中に
- 職務上の地位を利用して私利を図った場合
- 取引先より不正に金品を受け取った場合
- 故意または重大な過失により会社に損害を与えた場合
などの定めがあれば、会社はこの従業員を懲戒処分に科すことができます。
就業規則に該当事由があったとして、次に考えるのが処分の重さです。不正行為を行った回数や金額、行った理由、不正に得た金の使途や普段の勤務態度等を考慮しながら処分の重さを判断します。懲戒解雇や諭旨退職とする場合には、弁明の機会を与えるようにします。
2.刑事事件としての告訴
次に、この従業員について、会社は刑事告訴するかを判断する必要があります。
事件が公になることで、会社の評価・評判が下がることも考えられます。他の従業員や取引先、お客様への影響も考慮すべきです。そういった中で、会社はこの従業員を刑事告訴するかどうか判断していくことになります。
3.損害賠償請求
また、従業員への損害賠償請求についても検討していく必要があります。最初の調査の段階で、会社が支払った金額や会社が受領した商品・サービスの価値などから、水増し請求金額を特定しておくことが望ましいでしょう。
従業員が損害賠償に応じるかどうか、応じる場合であっても損害全額について賠償するかどうかによって、懲戒処分の重さや刑事告訴を行うかどうかを判断するのも良いでしょう。
とにかく、このような従業員に対しては、会社は厳しく対処する必要があります。社内に不正がはびこって是正されないようであれば、それが蔓延していきます。厳しく対応することが、社内の不正の芽を摘む唯一の方法だと考えます。
不正で得た利益よりも明らかに重い不利益を課すことが、不正抑止につながると思います(まぁ、処分の相当性との兼ね合いが難しいのですが…)。
以上を踏まえて、改めてお聞きします。
「御社は、不正リベートについて厳しく対処していますか?」
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