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仕事関係の「通信教育」自宅でやったら労働時間と認められる?

スキルアップのために自宅でeラーニングに取り組んでいるという方が増えているようです。その内容が仕事に関わるものであり、会社も把握しているのならば当然「労働時間」とみなされるべきだと思われますが…。今回の無料メルマガ『「黒い会社を白くする!」ゼッピン労務管理』では著者で特定社会保険労務士の小林一石さんが、自宅でのeラーニングは労働時間に含まれるか否かを論点に争われた裁判の結果を紹介・解説しています。

eラーニングの時間は労働時間になるのか

「バナナはおやつに入りますか?」

これは非常に難しい問題です。例えば、朝にヨーグルトと一緒に食べるようであれば朝食と言えるでしょうからおそらくおやつには入らないでしょう。ただ、これがチョコをかけたチョコバナナであればはたして朝食と言えるのか?また、普通のバナナでも3時に食べるのであればおやつに入ると言って間違いないでしょう。このように同じバナナでも状況によってとらえ方が変わってきます。

これは「労働時間」についても同じことが言えます。例えば、

これらは労働時間と言えるのか?そして、最近増えている「eラーニング」。もしかすると、みなさんの会社でも導入しているところもあるかも知れません。それではもし自宅でeラーニングを行った場合その時間は労働時間になるのか?

これについて裁判があります。ある通信会社で、「WEB学習(eラーニング)の時間は労働時間である」として社員がその分の給与を払うように会社に要求をしました。それに対して会社は「WEB学習は任意であり、あくまでも社員のスキルアップのものであるからその時間は労働時間ではない」としたため、その社員が会社を訴えたのです。

では、この裁判はどうなったか。

労働時間かどうかの判断基準の1つのポイントが「(その業務を会社が指示していたか」です。これについて会社は「受講は任意である(指示ではない)」と主張しました。ではこれを裁判所はどう判断したか。

裁判の結果、会社が負けました。裁判所は「その時間は労働時間である」と判断したのです。なぜか?その理由は次の通りです。

これらの理由から「会社の指示があった(その時間は労働時間である)」と判断したのです。

いかがでしょうか。最近は様々なeラーニング研修のシステムが開発され、値段も非常に安いものもあります。タブレット端末でも受講が可能なものも多いため「自宅で学習させれば労働時間にしなくてもすむ(残業代を払わなくてよい)」と考えて導入する会社もあるようです。

ただし、実務上は今回の判例の点は気をつけるべきでしょう。もしこれを労働時間としないようにするのであればあくまでも「自己啓発のためとして厳しい管理や強制はしないように注意する必要があります。また、その内容も自社特有の知識を学ぶようなものではなく一般的なスキルなどにするようにしましょう。

ただし、そうするとよっぽど自ら熱心に受講する意欲の高い社員でない限りは効果が限定される可能性があります。それではせっかく経費をかけて導入してもその分が無駄になってしまいます。それであれば労働時間としてしっかりと学ぶように仕組みを作るのも1つの方法です。

ただし、もし労働時間として導入するのであれば

などの工夫が必要でしょう。

最近は在宅勤務制度を採用する会社も増え在宅勤務の社員にとってはeラーニングは非常に親和性も高く、便利です。「eラーニングは便利、安い」だけで導入するのではなく、「どう運用するかが大切なのです。

image by: Shutterstock.com

特定社会保険労務士 小林一石この著者の記事一覧

【社員10人の会社を3年で100人にする成長型労務管理】 社員300名の中小企業での人事担当10年、現在は特定社会保険労務士として活動する筆者が労務管理のコツを「わかりやすさ」を重視してお伝えいたします。 その知識を「知っているだけ」で防げる労務トラブルはたくさんあります。逆に「知らなかった」だけで、容易に防げたはずの労務トラブルを発生させてしまうこともあります。 法律論だけでも建前論だけでもない、実務にそった内容のメルマガです。

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【著者】 特定社会保険労務士 小林一石 【発行周期】 ほぼ週刊

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