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ひきこもりの原因にも。詐欺まがいの営業と成功報酬制が壊した心

立派な企業理念を掲げ、コンプライアンス重視を謳い研修を行っておきながらも、数字を上げるために給与形態は成功報酬制を取り、契約成立のためなら社員の詐欺まがいの営業トークも容認するといった会社、少なくありません。今回の無料メルマガ『まんしょんオタクのマンションこぼれ話』では著者でマンション管理士の廣田信子さんが、そのような企業体質を変えないことが人材流出につながっていると指摘。さらにここのところ続いている「求人難」は、そんな企業体質を変えるいいチャンスであると記しています。

次世代には、自分たちのような営業はさせたくない

こんにちは! 廣田信子です。

前回の「学びと行動がいい営業マンとの出会いに」で、不動産仲介の営業マンが、「会社が、成功報酬制を廃止して、固定給になったことで、今はお客様が望む物件を紹介して、喜んでもらおう…という気持で、契約が成立するかどうかにこだわらずに仕事ができるようになった。販売のために、多少嘘をついたり隠し事をするのは普通だったので、子供に顔向けできないなあ…と思って心のプレッシャーになっていたが、それがなくなって、お給料は減ったが気持ちが楽になった」…と語った話を紹介しました。

最近、こういう話をよく聞きます。

営業は、仕事を成約するのが仕事ですから、仕事をとるのに当然ながら必死になるでしょう。それぞれが、数字の目標を達成することを求められます。不動産業界や建築・修繕業界は、体質が古いので、仕事をとるためなら、多少のウソや隠し事は仕方がない営業トークの範囲内という風習が未だに残っています。それを法令違反と後でいわれないように、上手に契約することが、営業の腕といわれます。あとからトラブルになっても、それをできるだけ認めないで頑張るのが会社の利益を守ることとして評価される文化もあります。

でも、それは、営業の感覚をどんどん麻痺させ、「詐欺じゃないかというレベルにも行ってしまいます。営業トークとして許される範囲と、詐欺と言われても仕方がないものの境目は何なのか…良心的な営業マン自身が悩んでいます。それで、もう、こんなことはしたくないと、業界を去る人もいます。古い営業スタイルの会社に嫌気がさし、他社へ移る人もとても多くなっています。企業体質を変えないことが人材の流失に繋がっているのです。

失わわれた20年と言われる就職難の時代には、仕事を求める側に、仕事を選ぶ余裕がなく、変わらない旧体質企業に加え、新たなブラック企業もずいぶん出てきて、厳しいノルマが課され、詐欺のような営業をさせられて、心を病んでしまった若者も少なくありません。それが原因で、長期の引きこもりになってしまってる人もいるのです。

先日、テレビ番組で、どんなに、立派な「企業理念」を掲げても、それが社員の行動に繋がっていなければ大きな企業もあっという間に崩壊する…と。

その通りだと思います。「お客様の幸せのために」と企業理念を掲げていても、収益を上げるために、高いノルマを課し、成功報酬がないと生活が成り立たないような給与体系で、厳しくはっぱをかけられているようなことが、現場で行われていたら…当然、社員は、成約のためになら、多少のウソや隠し事や誤魔化しを当たり前のようにするようになり、それを上司も見て見ぬふりをするということになることは目に見えています。管理組合のためにといいながら、管理組合の側の体制の脆弱さを知った上で、不誠実なビジネスモデルを考える人たちもいます。

でも、そういうことは、だんだん通用しなくなるのだと思います。コンプライアン重視をうたって、コンプライアンス研修をしていながら、数字を上げるために、社員に良心が痛むような営業をさせているような企業はだんだん崩壊していくはずです。

余りに長年そのやり方に慣れて、それに心が痛むことさえない営業もまだいますが、それは昭和の遺物だと私は思います。平成は、バブル崩壊後の長い経済の停滞があって、昭和的なものと完全に決別することができませんでしたが、お客の喜んでもらえる仕事をして、社会に貢献するという企業の原点に回帰することが、いろいろなことを変えていくと思います。求人難は企業体質を変える本当にいいチャンスです。

大手企業でバリバリの営業マンだった人が、今、地域で、人を元気にするパフォーマーになって、お呼びがあるとどこにでも無償で出かけて行っています。「現職で営業やっているときは、ずいぶん人もだましたから、その罪滅ぼしでやっているんだよ…」と。今は、心から楽しそうです。そして、次世代には自分たちのような営業はさせたくないと、心から思っての行動でもあるのです。

image by: Shutterstock.com

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【著者】 廣田信子 【発行周期】 ほぼ 平日刊

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