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米陸軍司令官は知っていた。日本でレッドチーミングができない訳

防衛研究所国際会議場で開催された「メガシティ会議」に軍事アナリストの小川和久さんが参加し、会議中4回質問に立ち手応えを感じたと、自身のメルマガ『NEWSを疑え!』で報告しています。小川さんは以前から、「軍事アナリストが警戒。原発へのテロよりも恐ろしいテロとは?」など、日本のテロ対策が不十分であると指摘し提言を続けています。今回の会議でも仮想敵が全力で攻撃を仕掛けるレッドミーチングを提言。総括にも盛り込まれたことで、対策が前に進むことを期待しています。

意味があったメガシティ会議

17~18日の2日間、防衛省内の防衛研究所で行われた第2回メガシティ会議に参加してきました。会議のタイトルは「メガシティにおける現代および未来の作戦」。 具体的には、来年の東京オリンピック・パラリンピックに向けて、世界有数のメガシティである東京の危機管理、つまり大災害や大事故、テロに対して、陸上自衛隊と米国陸軍、オーストラリア陸軍がどのように協力していくべきかを論じ合う場となりました。

私は2日間に4回、質問に立ちました。会議を混ぜっ返しただけに終わったのか、それとも少しは役に立ったのか、自分ではわからないところがありますが、とにかく積極的に発言しました。 なかでも、冒頭の質問とコメントは会議を進めるうえで、ひとつの意味を持ったようです。司会役の米陸軍訓練教義コマンド(TRADOC)のグレン博士が「東京は防災面で進んでいる」と述べたのに対して、私は真っ向から否定したのです。

「災害だけでなく、テロ対策の面から見ても東京の重要インフラは守られていない。たとえば、一人のテロリストや特殊部隊であれば東京の中心部を24時間以上にわたって停電させることができるが、対策はとられていない。東京が防災面で進んでいるというコメントは、日米間の情報共有が十分でない証拠だ。スティーブ・ブラウン大佐(パネリストの一人)が在籍しているテキサスA&M大学のディザスターシティにしても、日本から1万人以上の見学者が行っているが、同じような危機管理要員の教育訓練施設は日本には1カ所もない。それが文化の違いというものでもある。どうしていったらよいか、パネリストに答えてもらいたい」
めいめいのコメントはありましたが、私の発言を否定するものはありませんでした。そして、午前の部の総括では、組織間についても「文化の違い」を理解する必要性が強調されました。

午後の部に入り、私は「文化の違い」を克服していくためにはレッドチーミングが有効ではないかと提案しました。グレン博士のコメントにも出てきた言葉です。 レッドチーミングとは、高い能力を備えた仮想敵のチームがあらゆる角度から攻撃をかけ、問題点を洗い出していく手法です。災害や事故、テロに対しても応用することができます。これを実行すれば、文化の違いに始まり、情報共有の不十分さなども一目瞭然となり、優先順位をつけて問題点の克服を図ることができます。

これについては、パネリストで出ていた米太平洋陸軍司令官のロバート・ブラウン大将から重要なコメントがありました。 「米国側ではレッドチーミングは当たり前のこととして実施しているが、日本人はメンツにこだわるので無理かもしれない」というのです。よくわかってるなぁ。文化の違いを理解するとは、こういうことなのです。正鵠を射たコメントでした。

私は、そうした日米の文化の違いを前提に、日米共同でレッドチーミングを実施することを提案しましたが、それもまた総括に盛り込んでくれました。 かなり混ぜ返すことになったのかもしれませんが、私にとって意味のある2日間でした。これを日本の危機管理の向上に活かしていくことが、これからの仕事となります。(小川和久)

image by: Shutterstock.com

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地方新聞記者、週刊誌記者などを経て、日本初の軍事アナリストとして独立。国家安全保障に関する官邸機能強化会議議員、、内閣官房危機管理研究会主査などを歴任。一流ビジネスマンとして世界を相手に勝とうとすれば、メルマガが扱っている分野は外せない。

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【著者】 小川和久 【月額】 初月無料!月額999円(税込) 【発行周期】 毎週 月・木曜日発行予定

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